NTTドコモが横浜市と協力して、横浜都心部でコミュニティサイクル事業「baybike(ベイバイク)」を開始する。同事業は、ドコモの通信システムを活用することで、街のいたるところに小規模の駐輪場を設置できるようにするというもの。提供開始は4月1日から。本稿で、事業の概要などを詳しく紹介していこう。
「baybike」で提供するサービスとは?
baybikeは実施主体である横浜市 都市整備局都市交通課と、運営主体であるドコモが協力して行うもの。ドコモでは「コミュニティサイクルの施設整備・運営」「利用促進のための広報」「商業・観光施設・公共交通等との連携」などを担当する。運営期間は平成26年4月1日から平成31年3月31日の予定で、最大10年間までの延長も視野に入れる。横浜都心部には自転車台数400台を配置、貸出・返却拠点(サイクルポート)を34カ所設置。自転車台数は利用状況を見ながら、将来的には1000台規模にまで増やしていくという。また、平成26年度中に「次世代コミュニティサイクルシステム」を導入。これは電動アシスト機能と通信システムが融合した自転車になる予定だ。
ちなみにbaybikeの本格的な事業開始に先立ち、横浜市では平成23年度からの3年間、「横浜都心部コミュニティサイクル社会実験」を実施している。この結果、自転車台数は100台から300台に増加、登録者数は約19,000人に増加したほか、利用回数は114回/ 日(平成23年度)から約400回/ 日(平成25年度)への増加が見込めたという。
ドコモの協力で コミュニティサイクル事業はどう変わる?
baybikeに大手通信事業者のドコモが協力すると、何が変わるのか。最も大きなメリットは、自転車に通信システム(3Gモジュール、近距離センサー、GPS)を搭載できることにある。
まず、自転車単体で運営できるようになるため、駐輪場には大掛かりな機械式専用ポートが必要なくなる。駐輪スペースはコンパクトになり、設置・再配置が容易になる。すると管理者にとっては導入コストの削減が期待でき、利用者にとっても駐輪場の増加による利便性の向上が期待できる。ちなみに、街中のどのサイクルポート(貸出・返却拠点)でも自転車の貸し出し・返却が行えるシステムとなっている。
遠隔から自転車を監視できることが、盗難防止の役目も果たす。位置情報の履歴を分析すれば、利用者の多い地域に重点的に駐輪場を増やしていくことも可能になるだろう。また自転車と管理システムが3Gで通信できるので、利用者は自転車の予約・解錠・施錠を、手持ちの携帯電話/ スマートフォンから行えるようになる。
利用料金について解説!!
料金プランには月額1500円の「月額会員」と、100円/ 回の「1回利用」の2コースが用意されている。どちらのコースも、1回の利用が30分を超過すると30分ごとに100円が加算される仕組みだ。利用に際しては会員登録が必要で、クレジットカードで支払う。
baybikeの提供エリアは、ヨコハマポートサイド地区、みなとみらい中央地区、みなとみらい21新港地区、馬車道地区、元町地区など。横浜都心部をほぼ網羅しているので、例えば横浜駅やJR桜木町駅から、赤レンガパーク、山下公園、横浜中華街などの人気スポットへ遊びに行く際などに利用できる。横浜で生活している人にとっては、通勤・通学の足としても利用できるだろう。
なおドコモでは横浜市以外にも、すでに江東区や仙台市といった自治体と協力してコミュニティサイクル事業を展開している。対応エリアは今後も順次、日本全国へと拡大していく方針だ。したがって東京の都心部でも、ドコモのコミュニティサイクルが利用できる日が来るかも知れない。
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本稿では、ドコモが横浜市と協力して展開するコミュニティサイクル事業baybikeについて紹介した。省エネ意識の浸透や環境汚染問題への関心、また健康ブームなどにより、自転車の需要は都内でも年々高まりつつある。また、東京都知事に就任した舛添要一氏は、今年2月の就任会見で”自転車道”の整備について触れ、欧州の先進国のように歩道・自転車道・自動車道の3車線を併設したい考えを示している。これは6年後の東京オリンピック開催を見据えた、首都圏の大規模改修に絡めての発言である。
筆者が個人的に自転車道の必要性を感じたのは、東日本大震災の発生時だ。あの日、都内を走るすべての電車は止まり、車道はバスやタクシー、自家用車で大渋滞となった。昔から指摘されていた「東京の交通網は災害に弱い」という懸念が、現実のものとなってしまった。こうした事情を踏まえると、自転車道の設置は(オリンピックの開催を待たずとも)早急に実現すべき課題と言える。
今後、ますます需要が高まることが予想される自転車の利用。観光目的だけでなく、通勤・通学の足としても便利に利用できるドコモのコミュニティサイクルの展開に注目していきたい。