中国四川省の省都、成都は人口1,400万人を擁する成長著しい都市だ。中国は現在、沿岸部から内陸へ経済成長が拡大しており、成都も建築ラッシュのまっただ中にある。その成都で今年6月、Dellが最新の工場をオープンした。約30,000平方メートルという巨大なスピースを持ち、年間700万台のデスクトップの生産が可能という施設だ。欧州と米国、そして中国西部市場向けのデスクトップPCの生産拠点として、少しずつ生産スピードをアップさせている。今回、稼働に入って5カ月の成都工場を見学する機会があった。

Dellの中国・成都の生産拠点

Dellは1998年に中国に進出しており、中国福建省の廈門(アモイ)に2カ所の生産拠点を持つ。成都はこれらに次ぐ拠点となり、「Inspiron」「XPS」など全てのデスクトップ製品を扱う。なお、Dellは中国のほか北米2カ所、南米、欧州、マレーシアに生産拠点を持ち、日本市場向けのデスクトップPCは廈門で生産されている。

まずは生産の様子から。工場ではサプライヤーから供給された部品が置かれているエリアから反対側の出荷のエリアに向かって、組み立て→検査と作業が進む。受注情報が入るとトラベラーという仕様書が書き出され、作業員はこれをもとにメモリ、プロセッサなどの必要な部品を集めて大きなプラスティックトレイに入れる。これがアセンブリラインに回され、セル生産方式に基づき一人が一台のマシンを組み立てる。

仕様書に沿って組み立てが行われる

マシンが形をなすと、次に確認作業に入る。ハードウェアのチェックの後にソフトウェアの設定確認、通電などのバーンテスト、キズなどの外観のチェック、最終品質管理を経て梱包エリアに回される。サプライヤーからの部品が置かれている在庫時間は2時間以内、1台を製品にするまでの時間は50分から90分という。完成した製品はコンテナ用に複数台をまとめて梱包・圧縮され、陸路で上海に運ばれ、そこから欧州、米国と船で出荷される。

電圧チェックを行う作業員

作業員は毎週増えているが、現時点では300人、年内に1,000人体制を見込む。現在は2シフト制で勤務しているが、生産台数を増やすにあたって、稼働時間も拡大する予定だ。新しい工場ではあるが、「成都拠点開設にあたって廈門で経験を積んだ作業員が多数、成都での勤務を希望したことから、慣れた作業員が多い」と工場の立ち上げを手がけたDellの担当者は語る。これまでDellで6拠点を手がけた実績を持つベテランだ。確認作業で合格しなかったマシンの台数を毎日集計しており、作業員に毎朝伝え、生産性の改善やエラー削減を奨励しているという。

電源とLANケーブルを入れて動作確認

成都に生産拠点を設けた理由とは?

この担当者はまた、成都を拠点にする重要な背景についても明かす。成都は将来的に欧州と鉄道貨物路線が開通する予定になっており、完成すれば鉄道により欧州に配送できる。「鉄道なら21日間、海路の2分の1に短縮できる」と述べる。この欧州との鉄道路線のほか、中国内の鉄道網の建設も進んでおり、成都は中国第5の鉄道網拠点を目指している。こういったことから、Intel、IBM、Lenovoと各社がこぞって投資しているのだ。Dellが11月6日、7日に開催したパートナーイベントと同じ会場では、自動車のLexusもイベントを開催していた。

もう一つの背景が、経済成長を遂げている中国西部市場だ。これらの地区ではPCの伸びが目覚ましく、今後の需要増が期待されるという。同時に沿岸部は人件費などコスト高になったといわれており、これも無関係ではないだろう。

成都施設のエントランス

施設内には、日常業務にオペレーション用に利用するデータセンター(サーバールーム)もある。最新の施設だけあって、省電力が特徴だ。最適化ソリューションの利用により、電力コストは従来から35%減、PUE(Power Usage Effectiveness)は中国平均の2.2を大きく下回る1.6から1.8を達成しているという。

成都施設では、Dellの技術がしっかり利用されていたのも印象的だ。たとえば、アセンブリや確認作業で作業員が利用する画面はシンクライアントのWYSE、データセンターでは「Compellent」などのDell製品が動く。特に、データセンターではサーバーやストレージはもちろん、これまでCiscoやJuniper Networksを利用していたネットワークでも、同社が買収により獲得した「Forse10」を利用するなど、95%がDell製品であるという。Dellではこれを「Dell on Dell」(Dell技術の上でDellが動く)としている。