アップルのスマートフォン新製品「iPhone 5s」「iPhone 5c」が9月20日に発売開始されてから、ちょうど1カ月が過ぎた。今なおNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社間では激しい販売競争が繰り広げられている。気になる売れ行きだが、最新の調査ではソフトバンク版のiPhone 5s/ 5cが販売シェア一位を獲得しているという。本稿ではその詳細を紹介するとともに、理由についても分析していきたい。

iPhone 5s(左)とiPhone 5c

ソフトバンク版のiPhoneが好調

全国の家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」が、発売開始から1カ月間(2013年9月20日から10月20日まで)の「iPhone 5s/ 5cの販売シェア状況」を公表した。それによると、シェア1位はソフトバンクモバイルで40.0%、同2位はNTTドコモで33.9%、シェア3位はKDDI(au)で26.1%という結果だった。

ソフトバンク版が売れている理由は?

ソフトバンク版のiPhone 5s/ 5cの販売シェアが好調な理由のひとつには、「既存の利用者を流出させなかったこと」が挙げられるだろう。なぜならiPhone 5s/ 5c購入者にはiPhone 4s/ 4などの旧型iPhoneの利用者が多く含まれる。iPhoneユーザーの数で他キャリアを上回るソフトバンクが既存の利用者を流出させなければ、iPhone 5s/ 5cのシェア争いでも優位に立てるというわけだ。

ソフトバンクでは新型iPhoneの発売にあわせてiPhone 5s/5cへの機種変更を支援する「かいかえ割」を用意した。これはパケット定額料を4,410円/月で1年間(学生なら2年間)利用できるというキャンペーンだ。さらにiPhone 4s/ 4ユーザーには「残債無料キャンペーン」を展開、残りの本体代金を免除する施策を打っている。加えて、MNP利用者を呼び込む施策として、「のりかえ学割」「バンバンのりかえ割」「iPhone 5c購入サポート」など数多くのキャンペーンを提供。利用者の条件に応じて様々な特典が得られるようにし、MNPの転入超過を実現した。NTTドコモ、KDDI(au)もiPhone発売に際していくつものキャンペーンを打ち出しているが、現状ではシェア動向を左右させるほどの強いインパクトは発揮できていないようだ。

iPhone 5s/ 5cの発売前には、割引キャンペーンとともにネットワークの優劣もキャリアの差別化要素として注目されていた。KDDI(au)は「800MHz帯のプラチナバンドでLTE通信を利用できる」ことを強みとして訴求している一方、ソフトバンクはこれまでの2.1GHz帯にイー・モバイルの1.7GHz帯を加えた「ダブルLTE」をそれぞれ2倍(75Mbps)に高速化した「倍速ダブルLTE」を整備。これにより前評判ではKDDI(au)のネットワークが圧勝だと言われていた中、各社の速度調査でソフトバンクが健闘し、シェアに好影響を与えた可能性も高そうだ。また、来春からはプラチナバンドのLTEを開始する事をアピール。消費者に今後の更なるネットワーク強化を訴えている。

今回、NTTドコモでは一時的にiPhone 5s/ 5cの在庫がなくなるなどの問題が生じた。一方、ソフトバンクとKDDI(au)ではiPhone 5の在庫を投入するなどして対処し、ユーザーの流出を防止した。この件も、微小ではあるが販売台数に影響を及ぼしたと言えるのではないだろうか。気になるのが現在の在庫状況だが、ソフトバンクの公式ホームページでは予約者の入荷目処が確認できるようになっている。原稿執筆現在、2013年10月21日に予約するとiPhone 5s シルバーは約14日、iPhone 5s スペースグレイは約14日、iPhone 5s ゴールドは約28日で入荷する予定だという

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発売当初は熱心なコアユーザーを中心に売り上げが伸びていたiPhone 5s/ 5c。発売開始から1カ月が経ち、購入層も変化しつつある。今後はいかに幅広いユーザーに対してサービスの特長をアピールしていけるか、各キャリアの販売戦略が問われることになるだろう。シェア争いの行方を興味深く注目していきたい。

(執筆:大石はるか)