普通のコンパクトでは物足りない「ちょっとこだわる人々」に人気のキヤノン「PowerShot S」シリーズ。持ち運びやすい薄型ボディながら、1/1.7型と大きめのセンサーと開放f値の小さな“明るいレンズ”が大きな特長だ。今回は、その最新モデル「PowerShot S120」のレビューをお届けする。

「オトナの部活カメラ」というはっちゃけたキャッチフレーズだが、デザインは至って正当派な「PowerShot S120」

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「オトナの部活カメラ」なるフレーズを量販店のカメラコーナーで見かけた方も多いだろう。「オトナ」は「大人」ではない。「いい年したオトナが」的意味合いでの「オトナ」である。これこそ、PowerShot S120の対象ユーザー(つまり私たち)だ。(良くいえば)少年の心を忘れない紳士淑女たちに向けた、仲間たちとの趣味、レジャーへと積極的に持ち出して、とことん楽しんでほしい、というメーカーからの提案でもある。正しくは「PowerShot S200」「PowerShot G16」もオトナの部活カメラにカテゴライズされるが、そのコンセプトをもっとも明確に体現しているのはこのS120だろう。

この仕様でW100.2×H59.0×D29.0mmのサイズは驚異的。重量は約217g(カード、バッテリー含む)

液晶モニターはタッチ式の3.0型TFTカラー液晶(約92.2万ドット)。画像再生時は、スマホのようなフリック操作やピンチイン、ピンチアウトも可能

極限まで凹凸を抑えたスリムなデザイン。ステレオマイクは上面に設置

角のRがよくわかる。このおかげで握りやすく、ポケットからの出し入れもスムーズ

三脚穴がきちんと光軸上に位置するのは、カメラメーカーとしてのこだわりだろうか

SD/SDHC/SDXCメモリーカードに対応。撮影可能枚数は約230枚(CIPA規格)、エコモード時で約300枚

2009年の「PowerShot S90」を祖とする歴代シリーズの魅力を踏襲しつつブラッシュアップされた本機は、高画質と高機能、そしてコンパクトさを絶妙なバランスまで追求した一台だからだ。というよりむしろ、ちょっとやりすぎだろ! という気さえする素晴らしい仕上がり。レンズの開放値はF1.8(広角側)だわ、映像エンジンは最新の「DIGIC 6」だわ、連写は最高12.1コマ/秒だわ、RAW撮影はできるわ、60pのフルHD動画は撮れるわ、タッチパネル液晶だわ、MFピーキングはあるわ……。スペックの豪華さを挙げ始めれば、まさに枚挙にいとまがない。

何はともあれ、実写をご覧いただきたい。昨今の高級コンデジブームの流れの中では、有効1,210万画像1/1.7型CMOSセンサーや開放f値の小さなレンズもそれほど特別ではないかもしれない。が、それを考えても余りある高画質。パッと見は一眼レフで撮影した写真かと見紛うほどだ。

焦点距離24mm相当 1/400秒 f2.8 ISO125(原寸大画像を見る)

昨今のコンデジ界もうひとつのトレンドである、複数軸対応の手ブレ補正。S120は、ハイブリッドISを搭載し、カメラがy軸を中心に回転することでブレる角度ブレと、上下左右に移動してブレるシフトブレにも対応する。フルサイズ換算で24-120mm相当(光学5倍ズーム)という無理のない焦点距離とも相まって、かなり効果的にブレを軽減してくれるのだ。これについては画像も併せてご覧いただきたい。薄暗い夕刻にも関わらず、かなり効果的に効いている。これは取りも直さず、夜間や室内の部活動でも心強いということだ。

焦点距離120mm相当 1/100秒 f5.7 ISO160(原寸大画像を見る)

焦点距離240mm相当(プログレッシブファインズーム) 1/100秒 f5.7 ISO160(原寸大画像を見る)

我らが「オトナの部活」、少々オトナすぎるダンス部(笑) (原寸大画像を見る)

夜の屋台でオート撮影。絞り値はf2になっており、おかげでISOも250と低め。よって画も美しい(原寸大画像を見る)

観客席からステージをオートで撮る。足回りが優秀なので、意外に撮れてしまうのがすごい(原寸大画像を見る)

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