ペットボトルに水と空気を入れて飛距離を競い合う「水ロケット」をご存知だろうか。小学校の理科の実験で、学校の校庭で実際に体験したひともいるかもしれない。あの水ロケットをデジタルで擬似体験できる無料のiPadアプリ『水ロケットシミュレーター』を、このたび宇宙航空研究開発機構(JAXA)の情報・計算工学センターが公開した。

スタート画面

このアプリは、JAXA情報・計算工学センター(JEDI)のシミュレーション技術を筑波宇宙センター特別公開イベント内で体験してもらうために制作されたもの。クリエイティブ集団 TYMOTEのメンバーがアートディレクター/UIデザイナー、3Dデザイナー、3Dデザイナーを務めている。アプリが公開されたのがJAXA設立記念日にあたる10月1日。アプリの制作担当者によると、一時はiTunes App StoreのiPad向け無料アプリの教育カテゴリランキングで3位にまで上昇したという。水ロケットの部品を調節することによってその飛距離が変わるというが、さっそく試してみよう。

まず、「ノーズコーン」と呼ばれる水ロケットの先端の形を選択する。選択肢は「三角」、「台形」、「丸」の3種類。次に、「フィン」と呼ばれるロケットの羽の位置を「低い」、「真ん中」、「高い」から選択する。この位置がロケットの安定性に関わる。次に「水の量」。「100ml」、「500ml」、「1000ml」から選ぶが、これがロケットの飛ぶ力と重さに関わるそうだ。

「ノーズコーン」(左)、「フィン」(中)、「水の量」(右)

そして、ロケットをセットする「角度」を「10度」、「45度」、「80度」から選択。最後に、入れる空気の「気圧」を「3気圧」、「5気圧」、「10気圧」から選ぶ。たくさん入れすぎると破裂するらしい。

「角度」(左)、「気圧」(右)

とりあえず、最初は標準的な設定だと思われる「フィン:真ん中」、「水の量:500ml」、「角度:45度」、「気圧:5気圧」、「ノーズコーン:丸形」で飛ばしてみることに。

発射! ピュー… ザクッ!

飛行結果

結果は、到達距離45.5m。あわせて、飛行時間や最高高度、最高速度も算出され、結果は画像でカメラロールに保存することができる。

一度試してみて、発射する直前のちょっとした実験のワクワク感と、ロケットが飛んでいるときの映像の心地よさが気に入った。部品を調整の仕方によって、どれぐらい飛び方が変わるのか気になったので、いろいろ試してみることに。

他の条件は変えずに、「ノーズコーン」/「フィンの位置」/「水の量」/「角度」/「気圧」のいずれかだけを変えて色々試してみた。画像は「ノーズコーン」の形だけを変えてみた様子。「三角」(左)と「台形」(右)

色々試した結果、どうやら「ノーズコーン」の形は「三角」で、「気圧」は「7気圧」ぐらいが飛距離を稼ぐには良さそうなのだが、果たしてそうなのか。アプリの制作担当者に直接聞いてみた。

「一番遠くまで飛ぶのは、「ノーズコーン:三角」、「フィン:低い」、「水の量:500ml」、「角度:45度」、「気圧:7気圧」の組み合わせです。三角はもっとも空気抵抗が少なく、フィンは低い方が安定します。水はロケットの燃料にあたりますが、多すぎると重くて飛ばず、逆に少ないと推進力が足りません。ちょうどバランスが良いのがこの3つだと500mlです。角度は45度。気圧はロケットの推進力にあたりますが、7気圧がもっとも勢い良く飛びます」とのこと。この組み合わせを自力で見つけるのはとても大変そうだが、実はもっと複雑にもできるそうだ。

「3の5乗=243パターンの有限の結果しか出ない構成になっていますが、シミュレーションの演算は毎回アプリ内で行っています。今回のバージョンには盛り込めなかったのですが、アルゴリズム的には毎回向きや速さの違う風が吹いていたり、それぞれの項目につき3つの選択肢でなく自由な数値を選択するようなこともできるので、次回のアップデートが行える場合はそのような仕掛けを盛り込みたいです」

単純なように見えて、ものすごく作り込まれていると感じたが、このアプリの企画開発でこだわったところについても聞いた。

「シンプルな構成にすることで何度も遊んでもらい、その中で感覚的に学べるような設計にすることを意識しました。また、アプリの中では水ロケットが飛んでいく様子を予測するためのシミュレーションを行っていますが、あえてそれが見えないような形にすることで、直感的に楽しむことができ、デザインや機能に親しみを持ってもらえることをを大事にしました」

10月19日には筑波宇宙センターにて、古川宇宙飛行士の講演や宇宙船の操縦体験などを楽しめる特別公開のイベントが予定されているそう。このアプリで予習した上で、イベントにも参加してみては?