8月31日と9月1日の2日間にわたり、海洋研究開発機構(JAMSTEC)横須賀本部にて、水中ロボットによる競技会「'13水中ロボットコンペティション in JAMSTEC」(以下、水中ロボコン)が開催された(画像1)。初日はプレゼンテーションなどが行われ、2日目に実際の競技が横須賀本部内にある潜水訓練ダイビングプールにて開催された。競技の模様をお届けする。

また共催組織の1つであるNPO法人日本水中ロボネットの理事長で、九州工業大学 特任教授兼社会ロボット具現化センター センター長や海上技術安全研究所 水中工学センター長なども兼任する日本の水中ロボットの第一人者である浦環氏にも簡単ながらインタビューを行うことができ(画像2)、さらにJAMSTECの一部の施設や分解整備中の大深度小型無人探査機「ABISMO(アビスモ:Automatic Bottom Inspection and Sampling Mobile)」(画像3)の見学も行うことができた。こちらは、今回の記事とは別にお送りさせていただく予定だ。

画像1(左):競技会場のJAMSTEC横須賀本部の潜水訓練ダイビングプール。画像2(中):日本の水中ロボット研究の第一人者・浦環教授。画像3(右):分解整備中の大深度小型無人探査機ABISMO

さて水中ロボコンだが、JAMSTECで開催されるようになったのは2010年からで、2011年は震災のために中止(東北地方太平洋沖地震が発生した直後の3月12日と13日が予定されていた)となったが、今年で3回を数える。それまでは日本水中ロボネット(2013年1月3日以前は「水中ロボコン推進会議」として活動)の主催(正確には、会場を提供している組織などとの共催で行っている)で東京辰巳国際水泳場で2007年と2008年に行われており、また2006年から神戸大学深江キャンパスや神戸市立ポートアイランドスポーツセンターで「水中ロボットフェスティバル」も開催されてきた(このほか、Techno-Ocean水中ロボット競技会なども開催されている)。

水中ロボコンの目的は、「自作の水中ロボットによる競技会やプレゼンテーションを通じて参加者の交流の輪を広げると共に、工学的知識・技術を駆使して現実的な課題に挑む機会を提供すること」がまず1つ。そして、「アウトリーチ活動の一環として、子どもたちや社会に向けて水中ロボット研究の楽しさと重要性をアピールすること」としている。

今や宇宙や福島第一原子力発電所の建屋内など、さまざまな極限環境にロボットが進出しているわけだが、そうした場所に負けず劣らず、ある点ではそれら以上にロボットにとって難しい環境なのが水中だ。電気で動く機械にとって、いうまでもなく水は大敵であり、気密性にちょっとでも問題があれば、電子回路などがショートしてしまう可能性が非常に高い。また水中ロボットは、水槽やバスタブでも気密のチェックぐらいはできるだろうが、実際に移動させたり潜水させたりとなると小学校のプールぐらいの広さはほしいところで、そうなるとなかなか環境がないのが難しいところである(なかなか市民プールなどをロボットのために借りるのは難しいことが多い)。

よって、水中ロボットを学生たちや一般社会人たちが作ってコンペティションに参加するというのは、数あるロボコンの中でも大変な部類に入るといえよう(どのロボコンも簡単ということはないが)。それにも関わらず、今年は高校生チームが複数参加しており、またワークショップ的な形で、水中ロボコン実行委員会が提供した水中ロボット用パーツを組み立て・調整する形で参加できる高校競技部門(画像4)にも4チームが参加した。今回はこれまでに比べて若い力の目立つ大会となったようである。

画像4(左):高校競技部門の様子。画像5(右):高校競技部門で使われた、組み立て型の水中ロボット