スマートフォンを歩きながら使用する「歩きスマホ」が社会問題となっている。マイナビニュース読者の中にも、歩きながらスマートフォンを使った経験のある人は少なくないだろう。メールやチャット、SNSの確認や地図の閲覧など、スマートフォンの便利さに慣れてくると、つい無意識のうちに歩きスマホをしてしまいそうになる。しかし、歩きスマホは視界が極端に狭くなるほか、注意力も散漫になるなど、事故につながりかねない危険な使い方である。NTTドコモでは、そんな歩きスマホの危険性を啓発する取り組みを進めている。

場所や時間に関係なく、いつでも手軽に情報を確認できる便利さがスマートフォンの特長だが、便利だからと言って歩きながらスマートフォンを使用するのは厳禁だ。画面に没頭すればするほど、視界が狭くなり、周囲への注意力も散漫になるため、歩きスマホは事故やトラブルの原因となる。駅のホームから転落したり、階段を踏み外せば大怪我につながる危険性があるほか、他人にぶつかって怪我をさせてしまう可能性もある。実際に、携帯電話やスマートフォンを歩きながら使っていて駅のホームから転落する事故も発生しており、ニュースや新聞などでも歩きスマホが取り上げられるなど社会問題となっている。

現時点では歩きスマホに対する規制はなく、個々のユーザーのマナーの問題でもあるため対策は難しいが、交通機関や行政、携帯電話業界は取り組みを開始しており、7月29日には千代田区の主催で合同意見交換会が実施された。関係各所の協力による今後の取り組みが注目されるところだ。

ドコモがJR新宿駅の駅構内に掲出した「歩きスマホ」啓発のマナー広告

通信各社の中でも、いち早く歩きスマホ対策に乗り出しているのがNTTドコモだ。歩きスマホの危険性を啓発する取り組みとして、すでに2012年2月より新聞、雑誌、ラジオでの啓発広告を展開している。さらに、ドコモは8月5日より、JR新宿駅の駅構内において、歩きスマホの危険性を注意喚起するマナー広告の掲出を開始した。

同マナー広告は、JR新宿駅東口改札外の「新宿ALTA」方面出口付近の階段に掲出されており、階段面に「危険です、歩きスマホ。」と大きく表示。また、階段左右の側面には歩きスマホの危険な様子を描き、同時に「この広告には気づかなくても、みんなの冷たい視線には気づいてほしい。」などのメッセージを表示している。

階段左右の側面にもマナー広告が表示されている

新宿駅は年間の乗降者数が国内でもっとも多い駅であるほか、現在は夏休みシーズンでもあることから、スマートフォンユーザーの多い10代、20代の目にも触れることが予想される。この取り組みを見た人からは、「携帯電話の頃から歩きながら使っている人は見かけたが、スマホになって歩きながら使う人が増えた気がする」「没頭できるゲームが多いのも、歩きスマホが増えている原因ではないか?」「これ(マナー広告)は黄色くて目立つので、実際に歩きスマホをしている人でも気づくかもしれない」といった感想が聞かれた。

なおドコモでは、これまでも運転中や電車内での携帯電話の利用について啓発する取り組みを行ってきた。今回の歩きスマホの啓発活動についても、新聞やラジオでの啓発広告を2012年2月より展開しているという。今回、夏休みを迎え、ますます人通りが多くなる新宿駅に広告を掲出することで、さらに広く注意喚起していく考えだ。ドコモ担当者は「今回、ドコモが率先して、歩きスマホの啓発活動に取り組むかたちとなりましたが、他の事業者と協力して安心・安全に携帯電話を使うための啓発活動を続けていきたい」と話す。

広告展開のほかに、ドコモでは同社が実施する「ケータイ安全教室」内でも歩きスマホの危険性を啓発している。2004年から開始されたケータイ安全教室では、全国の小・中学校や高等学校などに講師を派遣し、携帯電話を使う際のマナーやトラブルへの対処方法を教えている。本年度は2013年6月末時点ですでに約1,700回のケータイ安全教室が実施されており、約32万人が受講。2004年度からの累計では、実施回数は約36,200回、受講人数は約535万人に上るという。

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スマートフォンの普及により、「歩きスマホ」が新たな社会問題となっている。スマートフォンは便利なツールだが、歩きながらの使用は事故につながりかねない危険な行為だ。関係各所も歩きスマホ対策に乗り出しているが、いち早く対策を開始し、今回のドコモの取り組み等は社会的にも意義があると言える。とはいえ、歩きスマホをなくすために最も重要なのは、私たちユーザー1人1人の意識の改善だ。ついついやってしまいがちな歩きスマホだが、歩行時にはスマートフォンを見ずに、周囲に目を向けるよう心がけるなど、スマートフォンの使い方について改めて考えてみてはいかがだろうか?