DMM.comがリリースした新サービス「DMM 3Dプリント」。ユーザーが作成・アップロードした3Dモデルデータを3Dプリンタで出力することができるこのサービスのための専用プリンティングセンターが国内に開設されている。今回は、東京都・六本木にある「DMM 3Dプリンティングセンター」のプレス内覧会の様子をお届けする。
「DMM 3Dプリンティングセンター」の中に足を踏み入れると、巨大な四角い箱がずらりと並んでいるのがすぐ目に入った。それこそが、同サービスの要である3Dプリンタだ。
「DMM 3Dプリンティングセンター」の中には、大きなプロフェッショナル用の3Dプリンタが計5台設置されている。同センターは東京のほか大阪にも設置されており、そちらでは主に大規模な機器が必要となるチタンなどの金属の出力を行っている |
同施設に設置されているのはすべて米・3Dシステムズの機器で、「ProJet 3500 CPXMax」が1台、「ProJet 3500 HDMax」が2台、「ProJet 660 Pro」が2台。合計5台のプロフェッショナル向け3Dプリンタで、顧客から送られてきた3Dデータを次々と形にしていく。取り扱う出力用の素材は、「石膏フルカラー」、「アクリル樹脂」、「ナイロン(ポリアミド)」、「シルバー」、「チタン」といった計5種類。内覧会では、さまざまな出力見本が展示されていた。
同社によれば、このサービスを開始して以来、ユーザーから想定以上の注文が寄せられているという。注文内容の傾向は、オリジナルのキャラクターのフィギュアや戦車などの模型といった、いわゆる「置物」用途の出力依頼が多いとのこと。
3Dプリントした素材を鋳型に鋳造する「シルバー」、金属部品としての強度をもった造形が可能な「チタン」など、金属を使った製品が生産可能なのは同サービスの大きな特長だ |
「ナイロン(ポリアミド)」や「アクリル樹脂」では、工具やクリップとして使うことができるレベルのものが出力できる |
内覧会に出席した同社の松栄立也代表取締役社長は、特に報道陣に質問されていないにも関わらず、自ら「アダルト(関係の3Dプリントサービス)はやりません!」と明言。動画配信サービスで知られる同社だが、松栄社長の言葉に象徴されるように、「DMM 3Dプリント」は既存の事業とは方向性が異なり、かつ並々ならぬ気合がこめられたものだった。
まず、このサービスで同社が実現しようとしているのは、3Dプリンタによってひとつの市場を作るということ。企画開発から適量生産、そして流通という一連の流れを作り上げ、ものづくりを行うクリエイターを支援するのが目的だ。そのため、出力にかかる費用は極力抑え、海外の3Dプリントサービスを利用する際にネックとなる送料についても「企業努力」で無料とした。
また、このサービスには、同社以外にもふたつの協力企業が関わっている。クリエイターにリーチすることのできる企業として、数々のデジタルアート作品で知られる"ウルトラテクノロジスト集団"「チームラボ」がサービス企画やシステム構築を担当。シェアスペースを展開するnomadが、ものづくり系スタートアップへの投資プログラムやシェアスペースの運用ノウハウをプリンティングセンターの運用・管理に生かしていく。
そして、3Dプリンタでモノを作ることだけがこのサービスの目的ではない。現状、3Dデータの入稿には専門的な知識が必要となるが、3Dデータを一般の人が扱うことを目標として、2013年秋ごろをめどにアプリのAPIを公開。アプリ開発者のマネタイズを含めて、継続的に発展できるような仕組み作りを検討中という。そのほか、ユーザーが出力したモノをグローバルで流通させる経路の作成も視野に入れており、API公開と同じく2013年秋ごろに何らの動きがあるとのこと。例えば、スマートフォンケースを販売したとすると、受注内容ごとに大きさや形状を変えて生産し、機種を問わず好きなデザインのモノを購入することができるということだ。
さらに、まだ検討段階ではあるものの、3Dスキャナによって依頼者の身体をスキャンしてフィギュアとして出力するサービスや、同施設を舞台とした体験イベントなども導入する可能性があるそうだ。これからも着々と進化していく「DMM 3Dプリント」の今後の動きにも注目したい。