Googleは5月21日、東日本大震災復興支援の新プロジェクト「イノベーション東北」を発表した。同プロジェクトは、被災者がビジネスを再開したり、新たに立ち上げる際に、Googleがビジネス支援を行うもの。

ビジネス支援では、東北地方とサポーターのマッチングを行う「クラウドマッチング」を提供し、あわせてGoogleの「Google Apps for Business」を対象者に1年間無償提供することも発表した。

記者発表会の冒頭に、同社 代表取締役 有馬 誠氏が登場。

有馬 誠氏

「(今年の)3月7日にGoogle災害情報を提供したが、Googleとしてまだまだやらなくてはいけないことがある」とし、これまでの自治体との防災協定や「未来へのキオク」と題した震災の爪痕をデジタルアーカイブする取り組みから一歩進んでいくことを説明した。

「震災から3年が経ち、次世代にどう繋げていくのか。現地でニーズを聞いて今回、新たなサービスを提供することになった」と有馬氏。キーポイントは、東北での復興にあたってのビジネス支援だという。

続いて、同社 執行役員の藤井 宏一郎氏が、イノベーション東北の概要を説明した。これまで同社の取り組みは防災協定ををベースとした情報提供とデジタルアーカイブの二本柱で被災地支援を行ってきたが、「これらの支援活動を通して、被災者との対話を行ってきた中で、震災後3年目に入り大きくなってきた声が『地域再建、経済復興のニーズ』だ」(藤井氏)という。

「事業拡大にネットを利用できないか?」「全国に散らばった従業員を呼び戻し、事業を再開するためにネットを利用できないか?」「新サービス開発したが認知度向上にネットを利用できないか?」という具体的なビジネス支援を求める声が大きく増え、Googleとして被災者の声に応えたものが「イノベーション東北」プロジェクトだ。

プロジェクトの詳細を、同プロジェクトのチームメンバーであるGoogle シニア マーケティング マネージャー 根来 香里氏が説明した。イノベーション東北は、一言で言うと「支援とニーズのクラウドマッチング」と根来氏。「これまでの取り組みを通じて、被災地の中にも異なるニーズがあることが分かった」とし、地域別のニーズ、ビジネスの形態の違いなどに合わせたインターネットのサービスの導入、支援やマッチングを行う。

イノベーション東北 Webサイト

今まで東北に関わり合いがなかった人でも、ネットを通して東北の支援が行えるとし、自分のスキルやインターネットに対する洞察を生かし、プロジェクトでビジネス支援をしてもらいたいという。例えば、釜石で新しく製品を展開しようと考えている企業がある場合、徳島の人がサイトを作成し、コンサルティングをボランティアで行うといった内容を想定している。

クラウドマッチングでは、コーディネーターがサポーターと現地のビジネスを始める企業などをマッチングする。コーディネーターは同サイトで募集しており、地域に根ざした活動ができるかなどを判断して任命する。現時点のコーディネーターは、岩手県釜石市、大槌町、大船渡市、宮城県南三陸町の5人で、今後も継続的に募集を行っていくという。

サポータについても、同サイトを通じて募集を行う。自分のスキルセットを生かせる場として、全国から参加を募り、既にNPO法人の理事長、SEやWebデザイナーなどが参加している。「インターネットを通してのビジネス発展に知見を持つ方に、東北におけるビジネスの変化を起こして欲しい」と根来氏は語った。

また、Googleではビジネスの足掛かりとして、「Google Apps for Business」を1年間無償提供する。申込期間は、5月21日~8月31日。対象団体は、岩手、宮城、福島の3県に本拠地を持つ1000人以下の企業、組織、公共団体、認定NPO団体。導入にあたっては、同社パートナーであるサテライトオフィス、エム・エス・アイ、電算システム、クルーシャルワークス、ソフトバンクテレコム、日本事務器の6社が導入サポートを行うほか、被災地各地でワークショップなどを開催するという。

ワークショップは、6月1日に岩手県釜石市、6月2日に大船渡市など、東北各地で定期的に行っていく。また、現地のコーディネーターを通して集まった意見などを参考に、ワークショップの提供形態は随時変更していくとしている。また、「Google AdWords」など、その他のビジネスニーズについても要望があれば検討するという。

イノベーション東北のビジネス支援活動は、同サイトだけではなく、Google+、FacebookやTwitterを通して情報を提供し、復興支援活動に興味のある人と取り組みを進めていきたいとしている。