ちょっと時間が経ってしまったが、4月19日にAMDは記者説明会を行い、同社のFireProシリーズについての紹介を行なった(Photo001)。

Photo001:説明を行なったEd Caracappa氏(Director, Global Sales&Business Development, Professional Graphics)

説明会の内容に触れる前に、前提としてFireProシリーズという製品ラインについて簡単に紹介したい。もともとAMDはRadeonシリーズとFireProシリーズ、2つのグラフィック製品のラインナップを持っている。これは別にAMDだけでなく、NVIDIAも同様で、GeForceとQuadroという2つの製品ラインナップを保有している。

このうちFireProやQuadroは、Professional Graphicsという分類で括られるのが一般的であり、ついでにいうとこのProfessional Graphicsのマーケットでは未だにMatroxも製品を提供しており、シェアもそれなりに存在する。

では通常のコンシューマ向け(Radeon/GeForce)とProfessional Graphicsでは何が違うか? であるが、GPUのコアそのものは全く同一である。ただしProfessional Graphicsは業務用に向けて

  • 多画面(最大で1枚あたり16画面程度までサポート)
  • 高解像度(8K4K解像度以上のサポート)
  • 高精細(医療用途などに向けて、10~16bitカラー出力)

といった、通常のPC向けとは明らかに異なるニーズに対応した出力を要求されることもあるため、ボード上のGPUの周辺回路はこうしたニーズに対応したものになっていることも珍しくない。

また、一見するとそうした特殊な用途向けでないボードもあるが、こちらはOpenGLのフルサポートとか特定のエンコーダ/レンダラに対応したドライバサポートなどが追加されていることもある。

OpenGLのサポートそのものは、通常のRadeon/GeForce向けドライバでも行なわれているが、これは「とりあえず動く」というレベルで、すべてのOpenGLのFunctionをサポートしているわけでもないし、最適化はほとんど施されていない。

一方Professional Graphicsの場合は、OpenGLのほぼすべてのFunctionをサポートしており、最適化もかなり高いレベルで施されている上、様々なアプリケーション(CAD系ソフトとか映像作成ソフトなど)上で正しく描画が行われる事を、こうしたアプリケーションのベンダーと共同で最適化あるいは検証を行なうといった事までおこなっている。

FireProの場合、こちらのページで具体的に動作保障が行なわれているアプリケーションを確認できる。端的にいえば、PC用のグラフィックの場合、ある1ピクセルの表現が間違っていたとして、それが問題になる事はまず無いのだが、ビジネス用ではその1ピクセルが大問題になりえるからだ。

当然の事ながら、こうした検証やドライバの最適化には相応のコスト(人手と手間)が掛かるため、通常Professional用のドライバはDesktop/Notebook用のグラフィックカードでは利用できないようになっている。

Professional GraphicsはPC向けと比べるとそれなりに高価なのは、この専用ドライバの開発/メンテナンス費を盛り込んでいる部分もあるからで、それを安価なPC向けで動かされてしまうとコストの回収が難しい、という現実的な理由もある。

もちろん、こうしたProfessional Graphicsのマーケットではそれなりに高くてもニーズがあれば売れるから、利幅を稼ぎやすいという面も勿論あるのだが、単にそれだけの理由でPC向けでドライバが動かないようにしている訳ではない事は理解しておくべきだろう。

FireProシリーズの活用例を紹介

ということで前書きが長くなったが、AMDがこのProfessional Graphics向けに投入しているのがFireProシリーズである(Photo002)。

Photo002:GPUのコアそのものは変わらないので、APUでも当然FireProは用意される

NVIDIAの場合、Professional Graphics(Quadro)とGPGPU(Tesla)は別ブランドとされているが、AMDはどちらもFireProで統一された(かつてはFireStreamとFireGLといった別ブランドだった)形になる。

このFireProシリーズのハイエンドにあたるのが、昨年11月に発表されたS10000である(Photo003)。

Photo003:Tahiti×2の構成だが、シェーダを無効化するなどして消費電力を下げたモデル。かつてはNew Zealandのコード名で知られたものである

FireProを使った例としてフェラーリのF1シミュレータ、Reality Deck、シャープの8K LCDなどが紹介された(Photo004)。

Photo004:F1シミュレータとシャープの8Kディスプレイはは説明の必要が無いだろう。Reality Deckはニューヨーク州のStony Brook UniversityがNSF(National Science Foundation)の援助を受けて作ったもので、40ft×30ft×11ftの部屋全体に、308のLCDスクリーンを詰め込み、合計で12.5億ピクセルの表示を可能にするというもの。このスクリーンは85のコンピュータノードで管理されるが、ここにFireProが採用された

また先ほどアプリケーションへの最適化という話をしたが、その一例がこちらである(Photo005)。

Photo005:これはほんの一例というか、分野別に主要なアプリケーション例を一つ挙げた、という程度である

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