近年のデジタルカメラは撮像素子と画像処理エンジンの性能が上がり、夜景をきれいに撮影できるようになった。コンパクトカメラには三脚を使わずに手持ちで夜景を撮れる機能がいち早く搭載され、カメラの使い方さえ覚えれば誰にでも夜景が撮れる。EOS Mにも同様の機能が備わっており、大きな撮像素子を活かしたよりきれいな夜景撮影が可能だ。

手持ちで夜景を撮るには「シーンインテリジェントオート」か「手持ち夜景」

EOS Mで三脚を使わずに夜景を撮影するには、「シーンインテリジェントオート」か「手持ち夜景」という撮影モードを使用する。

シーンインテリジェントオートは、撮影状況に応じて適切なモードが自動的に選択されるが、シーンモードの「手持ち夜景」とは機能や撮影方法が異なる。シーンインテリジェントオートはISO6400までを使い、1回のシャッターで撮影を行う。特殊な処理は行わないため、撮影後の待ち時間はほとんどなく、次の撮影が可能だ。ただ、非常に暗い場所だとシャッター速度が1秒程度まで落ちるため、手ぶれ補正機構を使っても、まずブレる。

「シーンインテリジェントオート」で撮影。このモードだとISO6400までの感度が使われる。ISO6400、1/13秒、F5.6(原寸大画像を見る)

「手持ち夜景」で撮影。連続して4回撮影して画像を合成する。ISO800、1/20、F5.6(原寸大画像を見る)

手持ち夜景モードはISO12800までのISO感度を使用し、4回連続してシャッターを切ったあとに合成処理を行い、1枚の画像として出力。そのため、撮影後に合成処理で数秒間はカメラの操作ができなくなってしまう。連続して撮影したいときはシーンインテリジェントオートを使い、ブレてしまう場合は手持ち夜景を使うとよいだろう。どちらがきれいに撮影できるか気になったので、いろいろな状況で試してみたが、手ぶれなどの失敗がなければ仕上がりはどちらもほぼ同じであった。

フラッシュを使ったときの撮影方法も両者で異なる。手持ち夜景モードは、いわゆる「夜景+人物」と思えばよい。若干のスローシャッターで夜景をきれいに写しつつ、フラッシュ発光で人物も明るく撮影するので、人物と夜景を同時に撮るときには積極的に利用したい。

シーンインテリジェントオートの場合は、シャッター速度を1/60秒程度にあげ、手前の被写体に適正な露出を行うので、背景は暗くなる。フラッシュを併用して夜景を撮影する場合は手持ち夜景のモードで撮影したほうがよい。

「応用撮影ゾーン」を使えばより高画質に撮影できる

シーンインテリジェントオートで撮影するには、カメラ上部の「モードダイヤル」を緑色のマークに合わせる。そのほかの撮影モードで撮影するには、ダイヤルを中央のカメラマークに合わせたあと、画面左上のモードアイコンをタッチして設定

モードダイヤルの「応用撮影ゾーン」には、「プログラムAE」「絞り優先AE」「シャッター速度優先AE」「マニュアル露出」という撮影モードがある。これらの撮影モードと三脚を組み合わせれば、より高画質な夜景撮影が行える。

先述のシーンインテリジェントオートや手持ち夜景モードの場合、ISO感度を上げているため、ノイズが増えて画質が落ちてしまう。ISO感度を自由に設定できる応用撮影ゾーンの撮影モードを使うことで、ノイズによる画質劣化を防げるというわけだ。

ISO感度をISO100程度に設定し、あとは応用撮影ゾーンの中から好きな撮影モードで撮影する。初めて使う場合はプログラムAEモードがよいだろう。露出は自動的に調整されるが、自分のイメージと異なる雰囲気に写ることもあるので、そういうときは好みの明るさになるよう露出補正をしよう。

カメラのモードダイヤルを中央のカメラマークにしてあれば、応用撮影ゾーンで撮影できる。画面左上の「モードアイコン」をタッチするとこの画面が表示されるので、カメラ背面の「電子ダイヤル」を左右に押して目的の撮影モードを設定。応用撮影ゾーンのほかに手持ち夜景などの「かんたん撮影ゾーン」も設定できる

ただ、シャッター速度が1秒を超える撮影になるため、三脚が必須。三脚がないときは、カメラ本体を安定して置ける場所を探してセルフタイマーで撮影するとよいが、それでもブレやすいので、同じシーンを何コマか撮影しておくとよい。

シーンインテリジェントオートで撮影。ISO6400なので拡大(写真右)するとノイズで画質が落ちているのが分かる。ISO6400、1/30秒、F3.5(原寸大画像「写真左」を見る)

絞り優先AEで撮影。ISO100にすることで拡大(写真右)してもノイズは気にならない。ISO100、6秒、F5.6(原寸大画像「写真左」を見る)

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