楽天は4月4日、同社の子会社のKobo Inc.と合同で、電子ブック事業に関する事業戦略説明会を開催した。国内の出版各社を招待して開催された今回の説明会。会場には、楽天の掲げる理念に熱心に耳を傾ける姿が多く見られた。

出版各社の代表とフォトセッションにのぞむ楽天の三木谷社長(舞台中央)

登壇した楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は冒頭、昨年リリースした楽天の電子書籍端末「kobo Touch」について「デバイスをより身近なものにする、という目標はほぼ達成できたのではないか」と評価した。また「楽天ブックスも開始当初は1日の売り上げが50万円程度だった。しかし、現在では1日1億円規模になっている」とし、電子ブック事業としても順調に成長していることをアピールした。

登壇する楽天の三木谷社長(写真左)。拡大を続ける電子書籍市場について「一旦、変化が起きるとすごいスピードで進んでいく」と表現した

電子書籍の可能性について、三木谷氏は「世界では、電子書籍の普及の波が日本より速いスピードで進んでいる。アメリカでは5年以内に1兆円規模の市場に成長すると予測されている」と紹介。その上で、「楽天の強さは、グローバルなネットワークがあること。それをもとに、日本固有のマーケットを展開していける」と説明した。

また、自身の実体験を紹介した上で「電子書籍はユーザーの読書意欲を高め、書籍市場全体の活性化に貢献できる」とし、電子書籍の隆盛は紙媒体の書籍市場にも好影響を及ぼすとの見方を示した。実際、子どもの読書量に関する調査では、電子書籍を利用した人の21%が「読書量が増えた」と回答しているという。

電子書籍はユーザーの読書意欲を高めるとの調査結果が出ているという(写真左)

アメリカにおいて電子書籍市場が急拡大した要因については、デバイスの普及・コンテンツの普及・アプリの普及があったと分析する。それを踏まえ、楽天でも今後、電子書籍事業への更なる投資を続けていく考えだ。三木谷氏は「楽天では今後、米国水準まで市場を拡大させる」と意気込んだ。

楽天では「日本の電子書籍市場を、米国水準まで牽引する」としている

デバイスについては「革新的なデバイスを継続的に出し、ラインナップを揃える」とする。カラー版kobo端末のリリースも控えているようだ。またコンテンツ数に関しては「数を揃えることも重要だが、事業を展開していく中で分かってきたことは、売れ筋のトップシェアタイトルを揃えることの大切さ。今後は、ベストセラー・タイトルの80%を電子書籍化していきたい」と話した。ちなみに楽天koboが取り扱う日本語コンテンツのタイトル数は、2013年3月末時点で12万8000点だという。

コンテンツはタイトル数、売り上げともに順調に成長している(写真左)。AndroidおよびiOS端末向けアプリの開発も進めていく(写真右)

デバイスについては、今後ラインナップの充実が図られる。会場には既発売の「Kobo Mini」や、未発売の「Kobo Arc」などが展示されていた

楽天ではコンテンツの市場規模を10倍にすべく、これからも数々の施策を行っていくとしている。約2万冊の優良コンテンツを楽天で負担して電子化する、著者および権利保持者への理解・許諾を得るための働きかけを推進するなど、自社で努力する部分も多いという。三木谷社長は最後に、出版関係者に向けて「電子書籍市場の活性化へ、なお一層のご協力をお願いします」と呼び掛けていた。

出版各社と連携して、電子書籍市場の更なる活性化を目指していく

囲み取材で、電子ブック事業についての手応えを聞かれた三木谷社長は「アメリカにおいてはAmazonさんに差を開けられたが、それ以外の国では予想以上に成功している。デバイスの開発に関しても、パートナー戦略に関してもうまくいっている」との所感を述べた。アメリカ市場においても、今後最新端末を発売するなどしてAmazonにキャッチアップしていきたい考えだという。日本国内における現状については、出版社側の反応の良さに言及。「この1年でコンセンサスがとれてきた」と語った。