「International CES 2013」では、併設イベントとしてPMA@CESも開催されている。2010年はカメラ専門の独立した見本市だったが、今ではCES内の1イベントとなっており、CESは米国におけるカメラ関連イベントでもある。ここでは、主要カメラメーカーの新製品を紹介する。

レンズ固定式ハイエンドカメラのX100SとX20を展示 - 富士フイルム

米Fujifilmは、レンズ固定式の高級デジカメ「FUJIFILM X100S」「FUJIFILM X20」を発表。既存モデル「X100」、「X10」の後継となるモデルで、それぞれ撮像素子と画像処理エンジンを刷新し、さらなる高画質化、高速化を図った。X100SはAPS-Cサイズセンサーを、X20は2/3型センサーを採用する。

「FUJIFILM X100S」

ダイヤル類も健在

本体背面。ハイブリッドビューファインダーは、EVFが236万ドット高精細化した

新センサーとなる「X-Trans CMOS II」は、30%以上の低ノイズ化などで高感度撮影時の画質を改善。もともとX-Trans CMOSは、ローパスフィルターを省き、さらに独自画素の配列を採用したことで、解像力を実現しており、X-Trans CMOS IIでさらなる高画質化を実現。X100Sではフルサイズセンサーに、X20は4/3型センサーに匹敵する、という。

X-Trans CMOS IIにはAF専用の画素をセンサー内に埋め込まれており、これを使った位相差AFが利用可能。これによってAFが、X100Sで0.22秒から0.88秒に、X20で0.16秒から0.06秒に高速化した。

画像処理エンジンの「EXR プロセッサーII」は、デュアルコアプロセッサの採用などにより、従来比2倍以上という動作速度の向上を達成。起動時間は、X100Sが従来比2秒から0.5秒に、連写速度が10コマ/秒・10枚まで(X100)から6コマ/秒・31枚までに、撮影間隔は0.9秒(同じ)から0.5秒に高速化。X20でも同様に高速化が図られており、撮影時、再生時ともに快適に動作するようになっている。

レンズ自体は、「もともと高画質を追求していた」(同社)ため、従来通り変更なく、X100Sは単焦点のフジノン23mm・F2レンズを、X20はフジノン光学4倍ズームレンズを搭載する。

同社が「ローパスフィルタレスに続く高画質化技術」として両モデルに搭載したのが「点像復元技術」だ。英語では「Lens Modulation Optimizer(LMO)」と名付けられており、画質劣化の原因である回折現象によるボケ(点像)を解消させる技術だ。

回折現象

F値ごとの回折による画質の劣化

レンズは、絞りを絞るほど画面全体にピントが合うようになるが、絞りが一定を超えると回折現象により、シャープネスが失われてしまう。これはレンズから入ってくる光が絞りによって遮られ、絞り羽根を回り込む際に起きる物理現象であり、原理的には解消できない。点像復元技術では、この回折現象の情報をレンズごとに分析し、それを解消するアルゴリズムを搭載。撮影後、JPEG変換時にこれを適用することで、回折で劣化した画像を復元する、というものだ。

X20では、ブラックモデルに加えてシルバーモデルも用意

作例を見ると一目で分かるほど効果があり、X100SではF16、X20ではF8の時にもっとも効果が高いという。X100SとX20はレンズ固定式であり、今回のようなLMOが適用しやすいが、今後レンズごとに効果が発揮できるようになれば、レンズ交換式でも同様の効果が得られるようになる、としている。

本体背面

そのほか、新たなMF機能である「デジタルスプリットイメージ」を搭載。MF時に撮像素子の位相差AF用画素で画像表示を行って短冊状の画像を左右に分割。ピントが合うにつれてその左右の画像が一致していくという仕組みで、これによってよりMFがしやすくなるということだ。

ユーザー調査では、クラシカルなボディデザインが好評で、全体のデザイン変更はわずかにとどめ、要望のあった細かな使い勝手の部分を改善。画質向上と高速化などの性能向上を図った製品に仕上がっている。

手のひらに収まるコンパクトデジカメ「PowerShot N」

米Canonは、コンパクトデジタルカメラ「PowerShot」シリーズの新製品として、「PowerShot N」を発表、展示していた。PowerShot Nは、本体サイズが約W78.6×D29.3×H60.2mm、約195gのコンパクトボディのカメラだが、正方形に近いデザインが特徴。

「PowerShot N」

ブラックとホワイトの2色展開

コロッとしたデザインの手にすっぽりと収まるコンパクトボディ。ボタン類は本体両側面に、電源ボタン、モードスイッチ、画像転送ボタン、再生ボタンがあるだけだ。レンズの鏡筒には2つのリングがあり、カメラ側がズームリング、外側がシャッターリングとなっている。ズームリングは回転式ではなく、レバーのように一方に傾けると連続的にズームする。

液晶は90度まで開く

本体を回転させると、液晶も上下反転する

シャッターリングは中心に向けて押し込むことで半押しから全押しが可能で、通常のシャッターボタンのように位置が固定されておらず、どういう握り方をしていてもシャッターが切れるようになっている。

カメラに近い側がズームリング、その外側にシャッターリング

そのほかの動作は、全てタッチパネル搭載の背面モニタに触れて操作する。タッチパネルは静電容量式で、指や対応手袋、対応タッチペンなどで操作できる。反応は良く、爪でも操作できるようだ。タッチパネルの動作も軽快で、マルチタッチに対応しており、再生時には、2本指で触れて指先を開いたり閉じたりすることで画像が拡大縮小するピンチイン・アウト機能も利用できる。

タッチパネルはマルチタッチ対応。無線LAN経由で画像の転送も可能

タッチAF、タッチシャッターにも対応しており、シャッターリングを使わずに、画面をタッチすることで、AFからシャッターを切るという動作も行える。状況に応じて使い分けると良さそうだと感じた。

オプションのケースとストラップ

液晶モニタはチルト式で、上方向に90度まで開くことができ、ウエストレベルでの撮影などで活用できる。可動方向はこれだけだが、本体を回転させると、それに応じて液晶表示も回転する仕組みを搭載。頭上から見下ろすように撮影する場合や、真下に向かって撮影する場合などで便利。本体を回転させても撮影するために、どの位置からでも押せるシャッターリングやタッチシャッターは有効な仕組みだ。

ボディはコンパクトながら、35mm判換算で28~22mmの光学8倍ズームレンズを搭載。さらに無線LANも内蔵しており、撮影画像を無線LAN経由で専用アプリをインストールしたiOSやAndroid端末に転送できる。一部の対応プリンタにも転送できるが、電源オフを除くカメラのリモート操作には非対応だ。

米国での発売は4月。価格は299ドルで、日本での発売も予定しているという。

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