台湾VIA Technologiesは19日、都内で代理店・顧客向けのセミナーとして「VIAエンベデッド・フォーカス・デー」を開催、新製品を披露した。同社は現在、ARMプラットフォームの製品開発にも力を入れており、会場では初のARMベースのPico-ITXマザーボードとなる「VAB-800」が展示されていた。

「VAB-800」のデモ機。OSはUbuntuで、SDカードから起動していた

VAB-800を内蔵するシステムがこちらの「ARMTiGO A800」となる

古参の自作PCユーザーにとって、VIAはIntel/AMD向けのチップセットベンダーとして、そしてMini-ITXプラットフォームを立ち上げたメーカーとしてお馴染みであったが、近年は、マザーボード上のオーディオチップなどにその名を見かける程度。ちょっと寂しさもあるものの、そんな同社が現在注力しているのは組み込み分野だ。

同社はx86アーキテクチャの省電力CPU「QuadCore」「Nano」「Eden」シリーズを保有。GPUは子会社のS3が開発しており、組み込み向けにx86プラットフォームを提供してきたが、MicrosoftがWindows 8でARMプラットフォームをサポートするなど、ARMの存在感が増しつつある。そのような状況の中、同社が開発したのが冒頭の「VAB-800」である。

VAB-800のフォームファクタは、10×7.2cmのPico-ITX。FreescaleのCortex-A8内蔵SoC「i.MX537」(シングルコア/800MHz)を搭載しており、OSはAndroid 2.3とUbuntu 10.04をサポートする。バックパネルのインタフェースとしては、VGA、Mini-HDMI、USB2.0×2、LANが用意されており、通常のデスクトップ用途でも使えそうだ。

Pico-ITXフォームファクタのARMボード「VAB-800」

VAB-800の裏面。こちらにはマイクロSDのスロットもある

搭載SoCはFreescaleの「i.MX537」

バックパネルのインタフェース

同社の子会社であるWonderMediaもARMベースのSoCを開発しているが、VAB-800でFreescale製を採用したのは「長期供給に対応するため」(同社)だという。ただ、後述する「ARM DS」ではWonderMedia製のSoC「PRIZM WM8950」を搭載し、こちらではAndroid 4.0もサポートしている。

VAB-800の量産はまもなく開始。Pico-ITXのARMボードについては、今後のロードマップも明らかにされており、まずCortex-A9デュアルコアの「i.MX6」を搭載する「VAB-910」を2013年第1四半期に投入。続いて、Cortex-A9デュアルコアの「Elite-1000」を搭載する「VAB-920」を同年第2四半期に投入する予定だ。

このElite-1000というSoCについてだが、これは同社とS3が共同開発。強力なグラフィックスを内蔵し、性能は「NVIDIAのTegra 3、そして"4"(未発表)を意識したものになる」(同)という。

VAB-800を搭載した製品としては、まず産業向けのファンレスシステム「ARMOS-800」を今年11月に投入。続いて、民生用途も視野に入れた小型システム「ARMTiGO A800」を12月に投入する。ちなみにこれらの用途は、同社のx86製品では、それぞれAMOS、ARTiGOというシリーズ名だったもので、名前が似ていてちょっと紛らわしい。

「ARMTiGO A800」。サイズは120(W)×30(H)×125(D)mmと非常にコンパクト

こちらは背面。VAB-800のバックパネルそのままだが、左端には電源入力が

こちらは「ARMOS-800」。サイズは150(W)×46(H)×108(D)mm

周囲はヒートシンクで覆われており、稼働温度は-20℃~+80℃と広い

そしてもう1つ、デジタルサイネージ向けの製品となるのが「ARM DS」である。こちらの製品はVAB-800ではなく、専用設計のマザーボードを採用。前述のようにWonderMedia製のCortex-A9内蔵SoC(800MHz)を搭載しており、H.264等のフルHD動画をストレス無く再生することが可能だという。大きさは25(W)×175(H)×118(D)mm。

「ARM DS」もファンレスのシステム。縦置き/横置きに対応する

グラフィックス出力はDVIのみとなる。そのほかLANやUSBも装備