【レビュー】
コンピューターというハードウェアを活用するために欠かせないのが、OS(Operating System:オペレーティングシステム)の存在です。我々が何げなく使っているWindows OSやMac OS XだけがOSではありません。世界には栄枯盛衰のごとく消えていったOSや、冒険心をふんだんに持ちながらひのき舞台に上ることなく忘れられてしまったOSが数多く存在します。「世界のOSたち」では、今でもその存在を確認できる世界各国のOSを不定期に紹介していきましょう。10回目となる今回はIBMの「OS/2」を紹介します。
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| 上記は最新の5回分です。それ以前の記事をご覧になる場合は、一覧ページをご参照ください。 | ||||
OSの話を始める前に、IBMの歴史を振り返ってみましょう。1911年にパンチカードを用いたデータ処理機器の開発会社として設立された同社ですが、現在の社名に変更したのは1924年の話。本稿を執筆している2012年は日本アイ・ビー・エム創立75周年に当たるということで、特設ページ「その歴史を振り返るWebページ」が設けられていますが、こちらでは1925年をスタートラインにしています(図01)。
メインフレームなど企業向けコンピューターでシェア(占有率)を延ばしていた同社がパーソナルコンピューター市場に進出したのは、1981年に登場した「IBM PC 5150」が最初。その頃のパーソナルコンピューター向けOSはMS/IBM-DOSのバージョン 1.0がリリースされた頃で、CP/MやROM上のBASICが活用されていた時代でした。その後IBMはアーキテクチャを刷新したコンピューター「IBM PS/2」シリーズを1987年に発売することになります。IBM PC 5150向けOSとしてMicrosoftにIBM-DOSを開発させたように、IBM PS/2向けのOSを用意しようと試みた同社が発表したのが「OS/2」でした。
なお、OS/2の正式名称は「IBM Operating System/2」であり、IBMとしてはMS/IBM-DOSに続く次世代OSという意味で名付けたのでしょう。ただし、冗長になりますので本稿ではOS/2で表記を統一します。ご了承ください。
さて、OS-2の開発体制はMS/IBM-DOSと同じくMicrosoftとIBMの共同開発で始まりましたが、この組み合わせがOS/2の将来を不幸せなものに導きました。
両社が開発を始めたのは契約が結ばれた1985年8月頃。当初は「CP/DOS」という開発コード名が付けられたOS/2は、IBM PS/2向けのOSとして設計されていました。しかし、IBM PS/2とOS/2の発表は1987年4月に行われましたが、肝心のOS/2の開発は遅れ、結局発売されたのは同年12月と、コンピューターの発売には間に合いませんでした。
当初はMS-DOSとの互換性をうたっていたOS/2ですが、バージョン1.xはIntel 80286上で動作していたことからコンベンショナルメモリを圧迫する原因となってしまい、快適なDOS環境とは言い難いものでした。もちろんOS/2の設計自体はプリエンプティブマルチタスクやプロテクトモード時の仮想メモリーなど当時としては先進的な機能を数多く備えていましたが、エンドユーザーの目には単なる"新しいDOS"と映っていたのでしょう。
この見方が変化するのが、前述のバージョン1.1以降です。1989年初期にリリースされた OS/2 1.1 EE(Extended Edition)では、データベースマネージャーやコミュニケーションマネージャーを搭載しましたが、同社製メインフレームと連動することを目的としていたため、大きな変化には数えられません。なお、通常の構成をSE(Standard Edition)と呼ぶようになったのは、このバージョン1.1からです。
OSとして進化したのはコード名「Sloop」の名で開発され、1989年11月に登場したOS/2 1.2。当時のファイルシステムはMS-DOSと同じくFAT(FAT12)が用いられていましたが、同バージョンからはHPFS(High Performance File System)を実装しました。HPFSはFAT12が持つ欠点を踏まえ、ファイル名の長さを255バイトまで拡大し、ボリュームサイズの拡充やファイル属性という概念の追加など、数多くの改善点を持つファイルシステムです。その信頼性の高さから、FAT12の後継版となるFAT16が主流だった時代も企業を中心に使われていました。
同バージョンでは、汎用プログラミング言語であるREXX(レックス)を備えており、機能的に乏しかったMS/IBM-DOSのバッチファイルを一新する存在として期待を集めています。バージョン1.xは最終的に1.31までリリースされましたが、OS/2が将来のメインストリームOSとして見なされていたのはこのバージョン1.xまで。既にMicrosoftとIBMの間には大きな隙間ができ、OS/2を左右する大きなうねりが押し寄せていました(図02)。
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