「女子」として、あえてものづくりに関わりたい

みなさんは、ものづくり系女子「CAD48+」というユニットをご存知だろうか? 「CAD48+」とは、クリエイティブに関わる仕事をしていたり、クリエイティブに関心のある女性たちによって結成されたユニットである。

「クリエイティブ」、「女性」という自分たちの立ち位置を、「ものづくり」、「女子」というより噛み砕いたキーワードとして提示しつつ、ユニークな活動をしているという、ものづくり系女子「CAD48+」。ものづくり系女子「CAD48+」の発案者であり、リーダでもある神田沙織さんに話を聞いた。

ものづくり系女子 神田沙織

1985年生まれ、大分県出身。アナログとデジタルの融合で世界を変えるケイズデザインラボプロジェクトマネージャー。3Dスキャナ、触感デバイスFreeForm、3Dプリンタなど、3Dエンジニアリングツールのコーディネートの他、現代アーティストの制作支援などを手掛ける。
「カワイイものも、かっこいい技術でつくられていること」を世の中に知らせるべく、「ものづくり系女子」活動を開始。様々なジャンルのクリエイティブに関わる女性たちが在籍するものづくり系女子ユニット「CAD48+(仮)」リーダーとして活動中。夢は工場を建てること。


――神田さんは、「ものづくり系女子」と名乗って活動を開始されていますが、どのような少女時代を過ごしてきたのでしょうか。

神田沙織(以下、神田)「もともと、地元の九州で父が精密板金の会社を経営しているですが、その関係で小さな頃から、家庭でも工業系というか、『どこどこに工場を建てた』とか『こんな工作機械を工場に導入した』というような話を聞きながら育ってきたんです。 そんな環境でしたので、自然と子供の頃から、ものづくりが身近な存在でした。例えば、小学校の文房具で30センチ定規ってあるじゃないですか。私や家族にとっては、あれは300ミリ(mm)定規なんです。センチメートル(cm)って私の中では、通常使う単位じゃないんですよ(笑)。なんでも、ミリメートルで考えてしまう。あとは、会社図面の裏紙がお絵かき帳だったりもしました。だから、就職先を選ぶときにも、『いつかは家族と一緒にものづくり出来たら』という思いがあって、オンライン3Dプリントサービスの会社を選びました」

――すると、ずっと理工系だったのですか。

神田「それが違うんです。大学は文系で女子大でした。女子大卒というのも、私のアイデンティティのひとつで、『女子』として、あえてものづくりに関わりたいという思いもありました。会社では、同期入社47人の中で、女子15人でした。製造業としては女の子が多かったと思います」

――やはり、理工系の方が多い職場だったのでしょうか。

神田「そうですね。ただ、会社で扱っている3Dプリンタという技術自体が新し過ぎて、『大学でずっと3Dプリンタの研究をしてました』という人材はいなかったですね。皆、入社してから勉強していったという感じです」

――希望通りの「ものづくり」の職場では、どのような苦労があったのでしょうか。

神田「苦労はありました。3Dプリンタで出力する造形物はどれも商品開発中の試作品(モックアップ)なんです。試作品制作という限られた業界では、とにかくスピードが命です。家電製品や自動車は何年かに1度モデルチェンジがあります。新製品もそうなのですが、ひとつの製品のために、200くらいの捨てられた試作品や設計図面があります。それを途切れることなく、作り続けるという感じで、365日24時間対応で3Dプリンタを動かしていました。その流れについていくのは大変でした」

――その大変なお仕事の中で、どのような達成感や歓びがありましたか。

神田「この世界に1個しか存在しないもの作って見れるというのが、凄い喜びでした」

――変わった試作品のエピソードなどあったら教えてください。

神田「容器の試作ですかね。容器の形そのもののデザインもあれば、勘合部(はめ込む部分)の試作というのもあるのです。そういう部分の工夫された試作を見ると感動しますね。あとは、ネジの試作というのもあります。ネジと言っても、様々な形やサイズ、はめ込みかたがあるのですが、それの試作品をひたすら出力してるときもありました」

――勘合部やネジの試作などは、アウトプットとしてもかなりマニアックで、その仕事の魅力や楽しさもも伝わりにくいですよね。

神田「そうですね。もちろんそういう部分で一般の方とのギャップは感じるのですが、その面白さを伝えるとみなさんわかってくれるんです」