六本木ヒルズでSamsung Electronicsが12月5日から始めた「GALAXY X'MAS CAFE」(画像1)に、今年はアールティが協力し、同社の1m大ロボット「RIC90」をベースにしたコミュニケーションロボット「HUGちゃん」(画像2)が登場した。5日の夜に「MEDIA THANKS DAY」が開催され、HUGちゃんを取材してきたので紹介する。
GALAXY X'MAS CAFEはSamsungがここ3年、毎年六本木ヒルズで開催している恒例のクリスマス期間限定カフェ。NTT DoCoMoが販売しているスマートフォンとタブレットの「GALAXY」シリーズのタッチ&トライコーナーを兼ねた店舗となっている(画像3・4)。12月25日(日)までの開催で、営業時間は11時から23時(タッチ&トライコーナーは12時から22時)。場所は、六本木ヒルズの入口を正面に見て左手(巨大なクモのようなオブジェ「ママン」がある方)のテレビ朝日の方に進んだ途中にある。
画像3。触れられるGALAXYシリーズは5種類。映像は、GALAXY MUSICIANSの5人。GALAXY SIIを宇宙へ打ち上げた「SPACE BALLOON PROJECT」を盛り上げたミュージシャンが今回も楽曲を提供し、オリジナルクリスマスソングを歌っている |
HUGちゃんのベースとなったRIC90は、肩高90cm、頭部をつけると100~120cmほどの身長を持つ大型の人型2足歩行ロボットだ(画像4)。ただし、身長に対して重量は約7kgと軽いのが特徴である。その理由は、RIC90は、100~130cm程度の着ぐるみの中に入れて動かすことをコンセプトとしているからだ。
そのサイズの着ぐるみは、かなり幼少の子どもしか入れないため、実はほぼ存在しない。しかし、大人が入る着ぐるみだとどうしても大きくなってしまうため、幼児によってはおびえてしまう場合もある。そこで、もっと幼児たちでも抱きつけるような安全なロボットを、ということで開発されたのがRIC90というわけだ。実際、アールティのマスコットキャラクターの「ネコ店長」や、Googleのキャラクターのドロイドくんをロボット化した「RIC Android」(画像5)などの中の人ならぬ、中のロボットとして活躍中である。
画像4。左がRIC90。HUGちゃんと比較すると、細かい部分で違うのがわかり、日に日に進歩しているのがわかる。右は、アールティのマスコットキャラクターのネコ店長。この中にもRIC90が入っている |
画像5。RIC Android(2010バージョン)。Android OSで動作する世界初の大型ロボットであり、1m大のドロイドくんロボットとして世界的にも注目された |
そして、今回のHUGちゃんは、そのコンセプトがそのまま活かされたロボットだ。抱きしめることで人とコミュニケーションを取ることを使命としているのである。ただし、ご覧の通りに今回は着ぐるみには入っていない(画像6・7)。RIC90のフレームが剥き出しである。ただし、抱きしめても安全なように、直接人と接する胴部や腕部などは透明なクッション(エアダウン)で覆っており、柔らかく接することができる(画像8・9)。
また、直接人とは触れない部分だが、腰部やヒザ、足首などもアクリル板でカバー(画像10)。関節部分に服や指などを挟み込んでしまったり、フレームの角でケガしたりしないようにしてある(実際には金属パーツの角は丸められているが、念のための処置)。そのほか、手首から先もアクリル板で作られている。
六本木という場所柄、GALAXY X'MAS CAFEというオシャレな店内、そしてHUGちゃん自身がいるステージも非常にオシャレに作られているのだが、フレーム剥き出しなのでかなり無骨なイメージがある。これは、カフェのデザイナーのコンセプトだそうで、あえてフレームを剥き出しにしたそうだ。なお、HUGちゃんのスペックは、身長が約1.2m、体重が約9kg。サーボモータは40個搭載している。
顔は「GALAXY Tab 10.1 LTE」(GALAXY Tab)で、胸部には「GALAXY SII」が装備されている(画像11~14)。GALAXY Tabは表情を制御しているだけでなく、HUGちゃんの全身のコントロールも行っている。HUGちゃんにアールティ製I/Oボード「RT-ADK」および「RT-ADS」(画像15・16)、「RS485Board」が搭載されており、それらを介してGALAXY Tabからの命令が全身のサーボに届くという仕組みだ。
画像15。左側がRT-ADKで、右側がRT-ADS。ADSはAccessory Demo Kitの略称で、ADSはAccessory Demo Shieldの略称 |
画像16。RT-ADKとRT-ADSを接続したところ |
そして、胸のGALAXY SIIは、HUGちゃんに何をしてほしいか3種類のボタンを選んでもらうためのインタフェースと、音声を出力するのに使われている(画像15)。3種類のボタンは「うたう」、「おどる」、「???」だ。「???」が何かはぜひ現場で確認してほしい。それからHUGちゃんの音声を担当しているのが、やくしまるえつこさん。非常に落ち着いた感じでゆったりとしゃべってくれる。
また、GALAXY TabのカメラはHUGちゃんをハグしている人の笑顔を映す仕組みで、特設サイト「GALAXY X'MAS HUGS」でその様子を見ることが可能だ(画像18)。HUGちゃんを周囲から見るアングルのカメラも複数設置されており、HUGちゃんを抱きしめにいくと、そこに映るというわけである。
なお、HUGちゃんは子どもでも抱きつけるよう、ちゃんとステップなどが用意されている。また、HUGちゃんは前述した通りに重量は約9kgだが、転倒した時に備えてスタッフが必ずそばにいるので、幼児にハグさせて上げても大丈夫なようになっている。また、ステップも用意してあるので、身長が届かないけど自分だけでハグしたいという子どもでも大丈夫なよう配慮済みだ。
そのほか、今回はバッテリの差し替えなどはないのだが(画像19)、やはり連続稼働というのはサーボにとって(特に重量のかかる脚部)厳しいので、HUGちゃんは2台体制を取っており(画像20)、2時間交代でステージに立つという。
画像19。今回はバッテリ駆動ではないので、連続2時間稼働。GALAXYはバッテリ駆動なので、こちらも交換の必要がある |
画像20。HUGちゃんの2号機。どちらが1号機でどちらが2号機かまでは確認できず。MEDIA THANKS DAYの途中でも交代していた |
なお、HUGちゃんを開発したアールティの代表取締役の中川友紀子氏によれば、GALAXY Tabに搭載されている1.5GHzのデュアルコアCPUの処理速度が非常に速く、ロボットの動作の創出に優れているという(画像21)。さらに、インターネット環境における動画中継など大容量の帯域幅を取るシステムでも、マルチメディア性に優れているGALAXYは楽々こなしてくれるとした。
ロボットの知能化を進めるためにはバックグラウンドとしてクラウドが必要で、そのためにも大容量の帯域幅で通信できるシステムは非常に大事だともコメント。中川氏は、「クラウド・ロボティクス」というアメリカで生まれたコンセプトを日本で実践しようとしており、HUGちゃんもそのステップの1つといえそうだ(なお、今回の特設サイトのGALAXY X'MAS HUGSなどWeb部分は、アールティとは別の企業が担当している)。
それでは、最後に女性スタッフ(今回のスタッフは、SPACE BALLOON PROJECTのスタッフと同一で、そのため青いツナギを着用している)に見せていただいた、HUGちゃんとハグの仕方のお手本を連写(画像22~24)。25日までGALAXY X'MAS CAFEでHUGちゃんががんばっているので、近くに寄った時は、女性スタッフのハグの仕方をお手本にぜひ皆さんでHUGしてみよう。