【レポート】

「京」コンピュータが京速を達成 - Top500の首位堅持に期待

2011年11月2日に理化学研究所(理研)と富士通は記者会見を行い、「京」スパコンがLINPACKで10.51PFlopsの性能を達成したと発表した。京は億、兆の上の単位であり、10.51PFlopsは1.051京Flopsで、「京」コンピュータは名実ともに京速を達成したことになる。

理研と富士通が10.51PFlops達成を発表。左から、理研の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部 プロジェクトリーダー兼副本部長の渡邊氏、理研の同本部 副本部長および計算科学機構 機構長の平尾氏、富士通の副社長の佐相氏、富士通の次世代テクニカルコンピューティング開発本部 本部長の追永氏

「京」コンピュータは今年6月のTop500で1位になったが、この時は、まだ納入の途中で、672筐体で68,544CPUでの測定でLINPACK8.162PFlopsを達成していた。その後も、東日本大震災で納入がストップした時もあったが、毎週8~16筐体、多い時には32筐体が納入され、8月30日に864筐体全部が揃った。

864筐体フルシステムとなった「京」コンピュータ(写真は理化学研究所提供)

10月7日~8日にかけて、この88,128CPUのフルシステムでのLINPACKの測定を行い、10.51PFlopsを達成し、Top500に結果を提出した。これは世界初の10PFlops超えの結果と思われる。11月12日からシアトルで開催されるスパコン関係の学会であるSC11で次回のTop500が発表されるが、米国の20PFlops計画は2012年になると見られ、未知のダークホースが出てこなければ「京」がトップを維持するとみられる。

この10.51PFlopsはピーク性能である11.28PFlopsの93.2%にあたり、6月の時の93.0%より、わずかであるがピーク比率は向上している。LIPACKの性能は、解く問題のサイズが大きい方が演算あたりのメモリアクセス回数が減るので、高い性能を出しやすい。問題サイズはシステムのメモリ量で制限されるのであるが、CPU数が増加した分システム全体のメモリ容量が増え、6月の時点より約10%大きな11,870,208次元の連立一次方程式を解くようにしたことがピーク比率改善の主因であるという。

問題サイズの増大による計算量の増加と、CPU数の増加の結果、このLINPACKプログラムの実行には29時間28分かかり、6月の測定の28時間0分より約5%長い時間が掛っている。また、消費電力は13MWとのことであり、6月の測定時の9.9MWからほぼCPU数に比例して増加している。

ハードウェアは揃ったのであるが、ソフトウェアは新規で過去に例のない大規模なものであり、大規模ハードウェアで動かしてみるとある程度の不具合が出てくることは避けられない。このため、現在は、システム全体を2PFlops程度の区画に分割して、それぞれの2PFlopsシステムを使ってOS、ファイルシステム、ジョブ管理、コンパイラなどのシステムソフトの開発を継続している。

そして、2012年2月から6月にかけてフルシステムでこれらのシステムソフトウェアを動かす総合評価を行い、6月末には計算機システムとして完成という予定である。

もちろん、「京」コンピュータはハードウェアを作ってTop500で1位を取ることが目的では無く、

  1. 予測する生命科学・医療および創薬基盤
  2. 新物質・エネルギー創成
  3. 防災・減災に資する地球変動予測
  4. 次世代ものづくり
  5. 物質と宇宙の起源と構造

という戦略5分野でのアプリケーションの開発と実行、そして、その結果を我々の生活の改善や人類の知識の獲得につなげることが重要である。

このため、ハードウェアの納入やシステムソフトウェアの開発と並行して、2011年4月からグランドチャレンジ(従来のスパコンでは能力不足で解けない大規模問題)や戦略5分野の一部のユーザには2PFlops規模のシステムを提供して、試験利用を開始しているという。

今回のSC11では、「京」コンピュータを使って10万原子規模のシリコンナノワイヤの電子構造を解析した論文が発表される予定である。従来の解析では原子数が少なく短いワイヤしか解くことが出来ず、電気伝導などを詳しく解析できなかったが、10万原子の長いワイヤの解析で現象の理解が進むと期待されているという。また、この論文の概要によれば、55,296CPUを使い3.08PFlopsという結果を得ているという。これはピーク性能の43.63%であり、実アプリケーションとしては非常に良い効率を実現している。

この論文では締切時期の関係で、測定はフルシステムの2/3程度の規模のシステムで行われているが、SC11での発表時にはフルシステムでの測定結果が示されると考えられる。そうすると実アプリケーションで4PFlopsを超える結果となるので、Gordon Bell賞の最有力候補である。

そして、「京」コンピュータは、2012年11月から共用を開始する。ハードウェアやシステムソフトウェアの開発と並行して、既にアプリケーションの開発も進んでおり、共用が開始されればいろいろな成果が出てくることが期待される。「京」の利用は、研究成果を公表する計算については無料で、そして、有料となるが結果は非公開とする私企業の利用も認める方向であるという。

関連キーワード


人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事