10周年を迎えたWindows XP。今でも根強いシェアを持つ同OSが、我々のコンピューターの上で動作する日々はいつまで続くのだろうか。今週のレポートはWindows XPの存在を改めて見直すと同時に、Microsoftの研究機関であるMicrosoft Researchや本社で開発中の新技術を伝える「Next at Microsoft」に掲載された情報から、Microsoftの描く未来をのぞいてみよう。
10周年を迎えるWindows XP
今回は近未来の話ではなく、昔話から始めたい。約10年前となる2001年10月25日、Windows XPが世界的に発売された。それまで分割されていたビジネス向けOSとコンシューマー向けOSを統合することで、開発工程や販売チャンネルの最適化を実現している。Windows XPは発売元であるMicrosoftはもちろん、コンピューターを趣味や仕事に使ってきた人々にも有益な存在だったのはご承知のとおりだ。
当初は安定性に欠けた部分もあり、前バージョンであるWindows 2000を使い続けるユーザーも少なくなったが、内部的なパフォーマンスの向上や、外部的にはエントリーユーザーにアピールしやすいデザインの採用なども相まって、Service Pack 1登場以降はユーザー数も格段に増えていった(図01)。
その後、新技術を多数搭載する予定だったBlackcomb(ブラッコム:開発コード名)の開発遅延に伴い、中継ぎとして登場するはずだったLonghorn(ロングホーン:開発コード名)も、基幹技術の開発断念により、一部機能を取り除いたWindows Vistaに至っている。しかし、このOSはブラッシュアップされたとはいい難い完成度で、マーケティング的にも失敗してしまった。
ただ、Windows Vistaに助け船を出す訳ではないが、基礎設計に関しては良くできたOSであり、現にその設計はWindows 7に受け継がれている。完成度に関しても、その後リリースされたService Pack 1で改善され、コア部分に限れば、Windows Vista Service Pack 2は現在のWindows 7 Service Pack 1と大差がない。
さて、Windows XPは2001年12月。Windows Vistaは2006年11月、Windows 7は2009年9月とリリースタイミングに大きな開きがある。ちなみにWindows 2000は文字どおり2000年2月、Windows 98は1998年7月と、比較的早いサイクルで新OSがリリースされてきた。だが、前述のような理由でWindows XP-Vista間は約五年、Vista-7は約三年。Windows Vistaが不振だったため、ユーザー視点から見れば、Windows 7は約八年ぶりの新OSに位置してしまう。
これが、Windows XPが"長すぎた春"をおう歌した一因である。だが、そのWindows XPのサポート(メインストリームサポートフェーズ)は2009年4月に終了し、セキュリティ関連以外の修正プログラムは提供終了となる延長サポートフェーズは2014年4月8日終了予定。残り二年半程度だ(図02)。
図02 2007年にはWindows XP Home Editionのサポート期間延長を発表している。なお、同Professionalはビジネス向けとなるため、当初から2014年に設定されていたMicrosoftのプレスリリースより) |
確かに"道具"としてコンピューターを使うのであれば、自分のニーズを見対している環境に不満を覚える必要はない。Windows XPを使い続けても良いだろう。しかし、コンピューター/IT業界における10年は非常に長い。Windows XP Service Pack 1でサポートしたUSB 2.0だが、現時点でMicrosoftはWindows XP向けのは対応しない予定である。USB 3.0はWDF(Windows Driver Foundation)モデルで提供されるため、WDFをサポートできないWindows XPでUSB 3.0がサポートされる可能性は皆無だ。
このように、新しいデバイスや新技術をWindows XPで使うのは難しく、単純に転送スピードを向上させるだけで、コンピューターを交えた生活スタイルが一変するのは、わざわざ述べるまでもないだろう。もちろん、Windows XPユーザーに対して「Windows 7は良い。入れ替えるべきだ」と強弁するつもりはない。だが、パフォーマンスに代表される各所が向上することで、自身のコンピューター生活が改善することを知りつつWindows XPを使い続けるのは、機会損失に等しいのではないだろうか。