電動車いす系

続いては、ロボット技術が採り入れられた電動車いすや車いす用ユニットを紹介しよう。まずは、岐阜県情報技術研究所などが開発した、頸椎損傷者用の首の動きだけで進行方向や曲がる方向をコントロールできる電動車いすのためのユニット(画像45)。

また、同車いすにはロボットアームも装備されており、ちょっとした作業を車いすの利用者自らが行えるようになっている(画像46)。

画像45。コントローラはヘッドレストの形になっており、寄りかかった状態で首を左右に倒すと車いすの前輪が左右に切れるという仕組みになっている

画像46。ロボットアームも備えている。ちょっとした物を取ったりするのに人に頼らずに済む

次は、ナブテスコの車いす用階段昇降ユニット「J-MAX」シリーズ(画像47~49)。正しい操作角度がわかる角度センサを備え、2本のL型昇降フット(ロボットアーム)がバランスを確実に取りながら1段ずつ昇り降りしてくれる装置だ。

介助者が手を滑らせるなどして車いすが前のめりになってしまいそうになっても、セーフティーアームがストッパーとなり、またブレーキがかかるためにユニットが落下してしまうような心配はなく、また車いすの搭乗者が放り出されてしまうような危険性もない。1回の充電で300~500段の階段を昇降可能だ。

また、同社ブースでは、スロープの昇り降りや砂利道など、介護者に力が要求される時にアシスト機能が働く電動車いす「アシストホイール」もデモを行っていた。インホイールモータを備えた電動車いすの一種で、上り坂ではアシスト、下り坂ではブレーキをかける仕組みだ。

画像47。車いす用階段昇降ユニット「J-MAX」シリーズ。写真の専用の車いす「J-COMPACT」がセットになっているタイプのほか、J-MAX自体にイスが備えられているタイプもある

画像48。階段を昇り降りする際にがんばるのが、このL型昇降フット。1段ずつ確実に昇り降りする

画像49。J-MAXの下側に伸びている長いアームが、セーフティアーム。これがセンサの役割にもなっていて、危険な状況に陥ると、車輪をロックしたりする

画像50。アシストホイール。今後、老老介護もさらに増えていくと思われ、力のない初老の女性が親の面倒を見るような場合、車いすにパワーアシストがあると非常に楽だ

移動機構にタイヤではなくゴムクローラを採用し、不整地や未舗装路面などで従来とは考えられない快適走行や踏破能力を見せるのが、クエストエンジニアリングの「クロラ」だ(画像51)。結構太めの角材なども軽く乗り越えてしまうほどである。左右独立したサスペンション、トーションバーとガスダンパーなどでそうした走行能力と乗り心地を実現した。

画像51。未舗装路の多い地域の場合、特にこの「クロラ」は走行性能を発揮するはずだが、都市圏の歩道も段差が意外と多く、クロラで走ればかなり快適になるはずだ

そのほか、車いす系ではアローワンの6輪車型(中・後4輪駆動)の超高級車「オメガ・スリー」(画像52)、車いすではないがミツバの「電動アシストハンディカート」(画像53)などもあった。

画像52。アローワンの「オメガ・スリー」。ガスダンパー付きサスペンション、オプションだがリフトキャスター機能やクライマー機能(8cmの段差を乗り越えられる)などがあり、価格は数百万円とミニバンクラスの自動車並み

画像53。ミツバの「電動アシストハンディカート」。周囲の障害物にぶつからないよう、自動的に停止したり、回避する方向に誘導したりする。階段の手前ではブレーキをかけたりという機能も持つ

そのほか

そのほかのロボット系としては、宮崎大学工学部の「表情筋を用いた電動車いす制御システム」(画像54)や、ユニ・チャーム ヒューマンケアの尿吸引ロボ「ヒューマニー」(画像55)、セコムの食事支援ロボット「マイスプーン」(画像56)などもあった。

画像54。宮崎大学の「表情筋を用いた電動車いす制御システム」。首から下を動かせない重度の障害者のためのインタフェースで、顔にこうしたパッチ型のセンサを貼り付けて、それで筋電を計測、電動車いすを制御できる仕組みだ

画像55。ユニ・チャーム ヒューマンケアの尿吸引ロボ「ヒューマニー」。オムツ状のパッド(男女それぞれ別仕様)に尿が排泄されるとセンサがそれを検知し、ロボット本体がポンプを使って瞬時に自動吸引する仕組みだ。夜間のおむつの取り替えは介護者にとっても負担が大きいが、ヒューマニーを利用すれば、本人も介護者もグッスリ眠れるという具合である

画像56。セコムの食事支援ロボット「マイスプーン」。インタフェースは利用者の障害のレベルでさまざまな方法を選ぶことができ、あご先で操作するといったことも可能だ

今回、CEATECとほぼ同時に開催され、両方を見て回っての感想を述べると、活気の点でいえば国際福祉機器点の方が上だった感じだ(もちろん日によって異なるので、見て回った日に限ってということだが)。来年の第39回は2012年9月26日(水)から28日(金)まで、同じく東京ビッグサイトで開催予定だ。