FileMaker GoとBluetoothバーコードリーダーを連携したポイントカードシステム

導入~運用までのスピード、低い導入コストや使いやすさから、個人・企業のユーザ/デベロッパなどに幅広い支持を受けているFileMaker Proシリーズ。その中でも今、特に注目を集めているのがiPad/iPhone向けのデータベースアプリ「FileMaker Go」である。FileMaker Proの実装速度と操作性の良さ、モバイル性の高いiPadを組み合わせることで、開発期間とコストを抑えつつ優れた業務アプリケーションの開発を可能にしている。

同製品は昨年7月にリリースされたばかりのソフトウェアだが、すでに業務システムで採用し、運用を始めている企業がある。芸大・美大向け予備校「御茶の水美術学院」や「御茶の水美術専門学校」、「アートジム」を運営する服部学園がそれだ。同校では、受講料の2%を学生に還元するポイントカードのシステムをFileMaker Proで開発し、FileMaker GoとBluertoothバーコードリーダーを組み合わせて運用している。

そこで本誌は早速、同校でシステムの開発・運用に従事している東森香織氏・浜谷奈央子氏と、開発パートナーのSIHO氏に、開発から運用開始までの取り組みや今後の展望ついて話を聞いた。

FileMaker Goで開発されたお茶の水美術専門学校のポイントシステム

――ポイントカードシステム導入の経緯をお聞かせください

服部学園 理事 情報システム統括の東森香織氏

東森氏: 当校には複数の講座を受講すると、受講料の割引をおこなう制度があります。しかし、この割引額の計算式が非常に複雑であるため、受講者や保護者の方が受講料を多めに振り込んでしまうことが少なくなく、余剰金額を振り込み返さなければならないなどの非効率な作業が発生していました。この問題を回避するために、割引額を受講料から差し引くのではなく、キャンバスや筆、画材などの購入時に利用できるポイントに還元する制度を計画しました。それが今回のアプリケーションになります。

なお、開発パートナーのSIHOさんとの出会いは、まさに偶然でした。もともと割引額を計算するソリューションはFileMakerで私が自作していたのですが、私が長期間入院したことで、肝心な時期にファイルをメンテナンスできない状況になってしまいました。そこで人づてにFileMakerの修正をお願いできる方を探し、そんなときに急遽メンテナンス作業をお願いしたんです。

それがきっかけで、今回のポイントシステムについても相談し、仕様作りから協力していただきました。

――導入にあたり、FileMaker ProやFileMaker Goを選んだきっかけはなんだったんでしょうか

東森氏: もともと、学園内の予備校部門のために規模の小さい業務アプリケーションをFileMakerで自作していました。自分のために作ったものが、いつの間にか部門全体のシステムになっていたという感じですね。学生/受講の管理も、私が開発したFileMakerソリューションでおこなっています。したがって、今回もFileMakerを利用するというのは大前提でした。

浜谷氏: 個人的には、画面設計が比較的容易という点が大きな魅力です。うちには美術やデザインに携わる人が多いため、UIの見栄えを重要視します。シンプルかつ、デザインや見栄えを洗練しないと使ってくれません。FileMakerならこれらの微調整が簡単におこなうことができます。

SIHO氏: 開発期間の都合もありました。もともとタブレットPCで構築を考えていましたが、予定していたデバイスの調達が1ヶ月も遅れることになってしまいました。このままでは運用開始まで間に合わない。限られた時間の中で、業務アプリケーションに初めて触れるユーザが戸惑うことのないユーザインタフェースを、最高のパフォーマンスで実現できるのは、優れたタッチインタフェースを持つiPadと、FileMaker Goの組み合わせしかないと思ったからです。

東森氏: 教育の場でなにか活用できないかと、iPadはすでに何台か用意があったんです。SIHOさんからFileMaker Goでの開発の提案をもらったときに、この話はいけると思いました。

FileMaker Goで運用されているポイントシステム

――このシステムでできるのはどんなことですか

東森氏: 学生が講習を申し込むと、受講料の2%がポイントとして還元されます。1ポイントは1円として換算され、翌年の4月まで利用することが可能です。学生はこのポイントを使用して、学校内の売店で画材を購入することができます。

SIHO氏: FileMaker Goのバーコードリーダーを使うのは、主に学生と、校内にある画材店のスタッフです。学生の方にはあらかじめポイントカードを発行してあり、校舎内に設置したiPadとBluetoothのバーコードリーダーで好きなときに残ポイントを確認できます。店舗のスタッフは会計の際に学生のバーコードを読み取り、消費するポイントを入力します。

――エンドユーザに簡単に使ってもらうために工夫した点があれば教えてください

SIHO氏: レジのスタッフや学生など外部の方に使っていただくことが前提だったので、エンドユーザ向けのUIはとくに改良を重ねました。画面上に配置されているボタン数を最小限にしたうえ、画面数にいたっては、学生向けで2画面、レジスタッフ向けで3画面とシンプルで迷わない構成にしました。

浜谷氏: 店舗のスタッフの中には、業務アプリケーションというものに初めて触れる方もいらっしゃいます。「この中で一番注目してほしいボタンはどれか」、「悩まずに操作するにはどんなインタフェースにすべきか」といった観点から検討し、調整しました。

レジのスタッフが操作する、購買時の消費ポイント入力画面。文字サイズやボタンの配置など、何回も微調整をおこなってきた