【インタビュー】
『ニコニコ大会議 2009~2010 ニコニコ動画(9) 全国ツアー in 大阪』で発表された、ニコニコ動画による新たな挑戦・ニコニコミュージカル。その切り札としてドワンゴに入社した片岡義朗氏は、過去に様々な漫画・アニメ起源のミュージカルを手がけたヒットメーカーであり、あの『ミュージカル テニスの王子様』のプロデューサーを務めたことでも知られる人物だ。「新しいものを作りたい」と意気込む片岡氏に、ニコニコミュージカルの詳細と演劇業界の現状などについて深く語ってもらった。
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ニコニコミュージカルのプロデュースを務める片岡義朗氏。前職を辞して、ミュージカルのためにドワンゴへ移籍した |
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──さっそくですが、ミュージカルの具体的な内容について教えてください
片岡 実はまだ具体的な内容については決まっていないことが多くて、発表できる段階ではないんですよ。ただ方向性としては固まってきていて、ストーリーや音楽や出演者などについてはかなりニコニコ動画のユーザーを意識したものを考えています。とはいえニコニコユーザーしか楽しめないのかというとそんなことはありませんし、逆にニコニコユーザーにとっても「これは新しいな」と感じてもらえるものを出していきたいと思っています。一本ではなくて、三本くらい同時に発表したいですね。ニコニコオリジナルのもの、原作付きのもの、あるいは僕がこれまで作ってきたのに近いものもあるかもしれません。
──ニコニコ動画でミュージカルの生中継をすることに、どんな可能性を感じていますか
片岡 僕はこの試みが演劇の歴史を変えることになるんじゃないかと思っています。その理由は二つあって、一つは"場所を問わずに楽しめる"ということ。これまでの演劇って、そのときその場に見えたお客様だけが楽しむものという絶対的な前提があったんですよ。劇場の中で時間と空間を共有することが、生である舞台の面白さだったわけです。それが今回はニコニコ動画で生中継することで、ユーザーが素直な感想を書き込むことができて、さらにそれを見た劇場側が反応することもできますよね。その双方向性に、ネットインフラとしてのニコニコ動画の強みがあると思っています。
──コメントを通して、ユーザーが劇場内との一体感を得られるということですね
片岡 ニコニコ動画ユーザーは面白くないと思ったら「面白くない」と書き込みますよね。逆に面白いと感じたら「8」を並べることで拍手を表現したりもする。そういった率直な意見が出てくるのが面白いなと思うんです。普通の演劇ではお客様は拍手したりタメ息や笑い声を上げたりするくらいまでの反応しかできませんからね。もちろん主催側としても否定的な評価は受けたくはないですから、そうならないように必死でがんばるつもりです。
──"演劇の歴史を変える"と仰ったもう一つの理由は?
片岡 チケットの値段ですね。そもそも演劇とは、劇場に入っていただいたお客様に支払っていただくお金の範囲でしか作れないという、ハイリスクローリターンなビジネスなんです。たとえば、僕がずっとやってきたミュージカル『テニスの王子様』(以下、テニミュ)は原作が少年誌ということもありますので、少年のお小遣いの範囲内で見られるようにという考えで、ものすごく努力してチケット代を下げて、それでも5,600円もするんです。この値段では女子中学生は自分だけの判断ではほとんど来ることができない。アンケートを見ると、中学生以下のお客様はほとんどいないんです。
──確かに映画などに比べると気軽に行ける値段ではないですね
片岡 映画は演劇に比べるとチケット代が安いですが、それはヒットすると興行が伸びるし、上映回数を増やしたりもできる、いわば青天井ビジネスだからです。でも演劇ではそれができない。欧米だとロングランシステムというのがあって、ヒットすると10年20年と続く演劇もあるのですが、日本の現在の仕組みではその方式をとれる劇団はごくわずかなんです。
──それがニコニコ動画のおかげで変わる、と
片岡 そうです。まだビジネス的な検証をしていないから確定ではないのですが、僕は今回のミュージカルのチケット料金は2,000円台でやりたいなと考えていて、それなら中学生も自分のお小遣いで見に来られるんじゃないかと思うんです。そうすると劇場のキャパシティは変わらないのでチケットでの売上げは落ちてしまいますが、その差分をネットユーザーが負担してくれればビジネスとして成立するわけです。もちろん、これはまだ机上の空論なので支払ってもらえるかどうかはわからない。でもそこに挑戦してみようと思うんです。
──ネットで見る場合の価格は?
片岡 500円かもしれないし、200円、あるいは1,000円かもしれない。そのあたりはまだ決まっていません。ただ何らかの料金を負担してもらえれば、舞台公演も映画同様に青天井ビジネスになる可能性がありますよね。
──ネットだと遠隔地の人でも生で楽しめますね
片岡 たとえばテニミュはかなりがんばって地方公演を行っているのですが、それでもまだ行けていない場所はありますし、全部の要望には応えきれないんです。チケット代の5,600円も高いけど交通費はもっと高い、という声も届いています。それがニコニコミュージカルなら、場所を問わずに安く楽しんでいただくことができるようになる。もちろん厳密には同じ空間を共有しているわけではないのですが、少なくとも自分の拍手が好きな俳優さんに届くというのは大きいですよね。たとえば出演者の家族がコメントでエールを送って、それを本人が見たら嬉しいだろうし、そこから親子のコミュニケーションやファンとの交流につながっていくと思うんです。これが、ドワンゴがミュージカルに挑戦する基本的な考え方ですね。
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