第34回 TOP500が発表

ポートランドで開催されたのSC09で第34回のTOP500が発表された。トップはオークリッジ国立研究所の増強されたJaguarシステムが獲ったが、それよりも関係者全員が驚きと述べたのが中国の天河一号が全体で5位、アジアではトップとなったことである。

天河一号のアジアNo.1の表彰状と表彰を受けるWong氏(中央)

天河一号は、「Xeon E5540(Nehalem)」と「E5450(Harpertown)」をCPUとして使用し、それにAMDの「HD4870X2 GPU」を接続し、全体では7万1,680コア、ピーク性能1.206PFLOPSのシステムである。このヘテロジニアスシステムで563.1TFLOPSのLINPACK性能を達成し、堂々の5位に入った。輸入のウナギやシジミをしばらく日本の水で飼育すれば国産になる伝でいけば、CPUやGPUは米国製であるが、立派な中国産のスーパーコンピュータである。なお、このシステムは天津超級計算センターに設置されている。

今回のTOP500の首位は、前回、僅差でRoadrunnerに敗れたオークリッジ国立研究所のJaguarシステムが獲得した。この受賞は、オークリッジ研究所にとってもメーカーであるCrayにとっても初めてのTOP500首位の獲得であり、表彰された関係者の表情が非常に晴れ晴れとしていたのが印象的であった。

続いて、2位に後退したRoadrunnerシステムが表彰されたが、受賞の弁では、JaguarのNo.1受賞を称えてから、近いうちにすべてのシステムは(Roadrunnerのような)ヘテロな複合システムになると述べていた。そして、3位のKrakenは、Jaguarと全く同じメンバーが壇上に上がって表彰された。

TOP500 首位の表彰状と受賞したCrayのUngaro社長(左から2人目)とオークリッジ研のZacharia氏

このJaguarシステムはCrayの「XT-5システム」で、計算ノード数は前回と同じであるが、CPUを4コアのOpteron(Shanghai)から6コアのOpteron(Istanbul)に交換、クロックも2.6GHzに引き上げてピーク性能では2.33PFLOPSに向上している。このシステムで、LINPACKで1.759PFLOPSを達成して、今回2位に後退したRoadrunnerの1.042PFLOPSに大差をつけた。なお、Roadrunnerは、前回は1.1PFLOPSを若干超えていたのであるが、一部を別の用途に回したとのことで、前々回のスコアに戻っている。前回は180計算ノード単位のCUを1個増設して辛うじてJaguarの追撃をかわしたのであるが、どうもこれはTOP500対策の一時的な増設で、それを本来の用途に返還してしまったのではないかと思われる。

そして、同じオークリッジ研究所に設置されているテネシー大学のCray XT-5マシンであるKrakenも4コアから6コアOpteronにアップグレードされ、LINPACK 831.7TFLOPSで3位に躍進した。

4位は、前回の3位から一歩後退したドイツのFZJのJUGENE(IBMのBlueGene/Pシステム)で825.5TFLOPSである。そして、5位は中国の天河一号、6位はNASAのPleiadesシステムである。PleiadesはSGIの「Altix ICE 8200EXシステム」で、2.93GHzクロックのNehalem EPプロセサを使用する5万6,320コアのシステムである。ピーク性能は673.3TFLOPSで、LINPACKで554.3TFLOPSを達成している。

そして7位はかつてトップであったローレンスリバモア研究所のBlueGene/Lシステム、8位はアルゴンヌ国立研究所のBlueGene/Pシステム、9位はテキサス大学のRangerシステムである。また、10位は今回初登場のサンディア国立研究所のRed Skyシステムで、Sun Microsystemsのx6275ブレードを使い、ピーク487.7TFLOPS、LINPACK 423.9TFLOPSを達成している。

TOP10以降で目立つのは、LINPACKで350.1TFLOPSを達成し12位になったMoscow State大学のLomonosovシステムで、CPUはXeon 5570(Nehalem)を使ったロシアのT-Platforms製のスパコンである。そして14位に韓国のKISTIのTachyonIIシステムがランクされている。このシステムは274.8TFLOPSのSunのConstellationシステムである。

そして、18位が、今回、中近東トップとして表彰されたKing Abdullah University of Science and Technolgoy(KAUST)のShaheenシステムである。このシステムは190.9TFLOPSのBlueGene/Pシステムである。19位は上海超級計算センターに設置された曙光製のMagic Cubeで、21位にスイス、22位にカナダ、26位にインド、28位にフランスのシステムがランクされ、やっと31位に我が国の海洋開発研究機構(JAMSTEC)の地球シミュレータ後継マシンが登場する。

なお、今回から、前述の中近東とアフリカの第1位の表彰が加わり、アフリカの第1位として南アフリカのSunブレードベースで311位、25.64TFLOPSのシステムが表彰された。TOP500としては小規模なシステムであるが、これを契機に同国の科学技術やひいては産業を発展させるという気概に満ちた受賞の弁であった。

また、主催者のアメリカ人は、南アメリカは北アメリカと地続きで一部と思っていたのか、南アメリカ第1位の表彰状は用意されていなかったのであるが、急遽、ブラジルの76位、64.63TFLOPSのSunブレードシステムの関係者が呼ばれて登壇するというハプニングがあった。次回からは南米第1位の表彰も行われることになるそうである。