LSIロジックのカントリー・マネージャーおよび代表取締役に就任した迫間幸介氏(写真提供:LSIロジック)

米LSIの日本法人であるLSIロジックのカントリー・マネージャーおよび代表取締役に迫間幸介氏が就任した(カントリーマネージャが10月1日付、代表取締役就任が2009年11月1日付)。同氏は1985年にインテル・ジャパンに入社後、1986年にLSIロジックに技術者として移り、以来、同社の技術面と営業双方を23年間にわたり見てきた人物でいわば生え抜きがトップに任命されたこととなる。そんな同氏にLSIロジックの今後について話を聞いた。

これまで、LSIは2006年に自社工場の売却を実施、ファブレスベンダとなり、翌2007年にはAgere Systemsとの合併により従来の社名であるLSI LogicからLSIへと社名を変更、事業の選択と集中により、ストレージとネットワークに注力する半導体ベンダへと生まれ変わった。

Agereとの合併後もストレージ分野およびネットワーク分野の企業を次々と買収するなど、激しい動きを見せてきた同社だが、その激しさからか、LSIロジックもカントリーマネージャーと代表取締役を別々の人間が務めることも多々あった。

こうしたさまざまな動きを見せてきた同社での23年間を迫間氏は「ASICという枠組みはあるが、その中でいろいろやってきたことが、ここまで1つの会社でやってこれた理由なのでは」と語る。事実、1986年に半導体のフィジカルデザインやメソドロジなどの担当として入社直後から米国で行われていたプロジェクトにも参加しており、その後数年間で「結局、のべ3年間くらいは米国に滞在している計算になるが、そのときにできた友人などが現在の本社のVice Presidentなどを務めており、そうした意味では本社との意思疎通ができている」とするほか、1995年にはパン・アジアのデザインセンターマネージャーとして、日本以外、台湾、中国、韓国、シンガポール、オーストラリアといった太平洋地域のASIC開発の統括や2000年ころASIC開発工程削減を狙った「Rapid Chip」を担当するなど、非常に社内で幅広い仕事を行ってきた。

また、「本社からは、技術部に所属していたが、Rapid Chipを担当することから市場を開拓するためのマーケティングなどを含めてやるよう指示を受けていたこともあり、営業としての経験も積むことができた」という。

そうした2足のわらじで得た経験が今の迫間氏を養ったわけだが、単なる技術職のみならず営業も併せてやってきたため、「技術は嘘をつけない。そのためカスタマに対して現実的な話としてのメリット、デメリットを提示できるのは逆に強みとなった」とするほか、「カスタマがマーケティング的な話と技術的な話の双方を聞けるというのは、手間がかからなくて良いため、非常に重宝がられた。こちらとしても、市場についても、技術についても理解していなければ、きっちりとした回答ができず、説得力がでないことを逆手に、カスタマの懐により深く入り、密接な関係を構築できた」と、そこでさまざまなことを学んだと指摘、今回のカントリーマネージャー/代表取締役就任についても「非常に良い経験をさせてもらっている。すごくチャレンジな話ではあるが、LSIロジックの社員として働いている人たちのために、会社が良くなる仕事ができれば」と意気込みを見せる。

前述もしているが、同社が現在注力しているのがストレージとネットワークの2つの市場である。これは、旧LSI LogicとAgereの合併により生み出された戦略であり、その市場向けのASICとASSPに特化した形となり、Rapid Chipなどの余計な部分をそぎ落としたわけだが、この戦略はネットワークの拡大によりストレージ容量の拡大や帯域の増大が進んでおり、効果があったといえる。