既報の通り、明治大学は10月31日、マンガとサブカルチャーの専門図書館「米沢嘉博記念図書館」を開館した。さらに同大学では2014年度を完成目標に、大規模なマンガ・アニメ・ゲームの複合アーカイブ施設『東京国際マンガ図書館』(仮称)を設立するとしている。

同施設は、マンガ・アニメ・ゲームの図書・雑誌・同人誌をはじめ、それらに関連する分野の資料を収集・保存し、展示・閲覧ならびに学術・文化的運用を目的としたもので、複数の個人コレクションや200万冊を超える同人誌などを保有するコミックマーケット準備会の協力を得て、間違いなく世界最大規模のマンガ・アーカイブとなる。同施設の概要と設立の経緯について、同施設の構想を提唱し、計画を推進する明治大学国際日本学部の森川嘉一郎准教授に伺った。

2014年までにオープンする東京国際マンガ図書館(仮称)のイメージパース

同施設のアーカイブに保管され、閲覧できるのは、現在「米沢嘉博記念図書館」に収められている14万冊(4,487箱)を超える故・米沢嘉博氏のコレクション、米沢氏と同じくコミケを支えた故・岩田次夫氏のコレクション(403箱)など。さらに、本計画のスーパーバイザーでもある内記稔夫氏のコレクション約20万冊を所蔵する現代マンガ図書館、30年以上継続されてきたコミックマーケットですべての参加サークルから回収された同人誌の見本誌約200万冊(約12,000箱)を保有しているコミックマーケット準備会が協力を表明しており、これらに関しても閲覧できる事になりそうだ。

閲覧室(左)とアーカイブ(右)のイメージ

米沢コレクションの一部。マンガ史において貴重な資料が含まれている

現在も明治大学内の作業場で分類整理作業が継続して進められている

ミュージアムとしての機能もあり、「おたく:人格=空間=都市」展(2004年のヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館)に出展された、「おたくの個室」の再現模型や約1万体のフィギュアなど同展がまるごと再現される予定だ。また、同大学では一般来館者がマンガ・アニメ・ゲームの文化を史的に俯瞰できるようにする常設展示のために、2007年よりマンガ・アニメ・ゲーム関連の資料を収集してきた。これはスタジオやメーカーが散逸させてしまった実物資料を、古物商や競売より取得してきたもの。とりわけ宮崎駿氏直筆の52点をはじめとしたアニメ原画・レイアウト類(一部を『スタジオジブリ・レイアウト展』に貸出中)は展示の目玉になるだろう。また、私費を投じてアーケードゲームを収集、公開している有志団体「アーケードゲーム博物館計画」も協力を表明しており、こちらも大変楽しみな展示が期待できる。

2004年にイタリアのヴェネチアで開催されたヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館「おたく:人格=空間=都 市」展のポスター(左)とミュージアムの展示イメージ(右)

同施設の予定地は、御茶の水にある明治大学駿河台キャンパス内の猿楽町地区内で、明治大学付属中学・高校の旧校舎などがある。お茶の水・駿河台は趣都・秋葉原や本の街・神保町に隣接しており、まさに格好の地。施設には図書館施設をはじめ、ミュージアム、シアター、研究室などが入る。同校舎は御茶の水駅側と神保町側の段差に立っており、森川氏は「200スペース規模の同人誌即売会を開くことができるイベントホールも設けたいです」としている。コミケ以外にも同人誌関連のイベントはさまざまに行われており、ライブラリーにこうしたコミュニケーションの場を持つ事は画期的と言えるだろう。

施設は秋葉原の隣駅・御茶の水から徒歩数分の場所。予定地内にある明大付属中高の脇にある男坂(右)

施設内にはシアター(左)やイベントホール(右)も設けられる

今回、明治大学が公表したプレスリリースでは明治大学付属中学・高校の旧校舎をリノベーションした外観イメージが提示されている。この点について計画を推進する同学国際日本学部の森川嘉一郎准教授にたずねたところ、「今回提示したものはあくまでイメージです。旧校舎をリノベーションするか、新築にするかは検討中です。これは、まず中身があって、それに器を与える、という方向で進めているからです」としている。国立メディア芸術総合センターは、ハコものはダメ、国営のマンガ喫茶か、と鳩山政権に否定され、内容について語る機会を得ないままとなってしまったが、こちらのまずは中身を重視したいとする姿勢が印象的と言える。

施設の外観イメージ。屋外イベントも行われる?