川村ゆきえと乙黒えりが、血みどろのバトルを繰り広げる映画『吸血少女対少女フランケン』。スプラッタホラー、アクション、ラブコメディなど、まったく異なる要素を混ぜ合わせたパワフルな作品を共同監督した友松直之と西村喜廣に話を訊いた。

友松直之(※画像右)
1967年生まれ。学生時代から自主映画を撮り続け、『バラードに抱かれて』(1993)で映画監督デビュー。Vシネマを中心に脚本家、監督として活動。そのグロテスクで激しい恋愛描写などで評価を得る。主な監督作品に『コギャル喰い 大阪テレクラ編』(1997)、『STACY ステイシー』(2001)など。竹内力主演の『ミナミの帝王』シリーズの脚本も多数手掛けている。著書『純愛戦記』(イーストプレス刊)では、映画と恋愛を中心に自身の生き様を赤裸々に描き話題となる
西村喜廣(※画像左)
1967年生まれ。代表を務める「有限会社西村映造」として、ホラー映画から恋愛映画までジャンルを問わず様々な映画、テレビドラマ、CMに、特殊メイク、特殊造形、残酷効果担当として参加。これまでの日本映画では観られないような凄まじいスプラッタ/ゴア描写の作り手として話題となる。『東京残酷警察』(2008)で映画監督デビュー

共同監督という独特のスタイルで、個性的な映画を創る

――『吸血少女対少女フランケン』は、ホラーというか、何というか、とにかく凄い作品なのですが、どのように映画化されていったのでしょうか?

友松直之(以下、友松)「元々、内田春菊さんの原作のファンで、僕がラブコメホラーとして脚本を書いていました。そこに、西村さんが加わる事になって、よりスプラッタ色が強い企画になったんです」

――おふたりは、どのように作業分担されたのでしょうか?

友松「それぞれが別々に全て絵コンテを描いたんです。それで、自分が監督したいシーンを監督するという感じですね。大きく分けると、ラブコメ部分は僕で、アクションシーンやゴアシーンは西村さんが多く担当しています」

――そういう制作進行に、違和感はなかったのですか?

西村喜廣(以下、西村)「そりゃありますよ(笑)。やりたい事はそれぞれありますし」

友松「脚本やコンテで具体的に描かれていない部分で、やはり、それぞれのこだわりが出てきました。その調整作業も現場でするという方法だったので、相手が監督している場面でも、常にお互いが撮影現場にいました」

――作品を観させていただくと、まったく違和感なくて、監督がふたりいるとは思えなかったのですが……。

友松「観る人からしたらそんなもんなんですよ(笑)。人間は多面性あるもんだし、コメディ部分とバトルの部分では、役者にさせる顔も違うし、役者も色々な表情を使い分けて演技しますから。正直、編集で繋げるまでは不安もあったのですが、問題はなかったですね」

――共同監督というスタイルによるパワーアップというか、相乗効果は感じられましたか?

友松「とにかく、ゴアシーンがグレードアップしましたね。西村さんが出してくれる映像のアイデアを脚本にまとめるのが、僕にとって楽しい作業でした。リスカ部とガングロ部は、完全に西村さんのアイデアです」

――どちらも凄い部活でした(※自らの腕を切り落とすほどリストカットに青春を捧げるリスカ部と、黒人を目指すガングロ部が登場する!)。

西村「リスカとガングロは今回どうしてもやりたかったんです。前の監督作品『東京残酷警察』では、社会を馬鹿にしたのですが、今回は高校生を馬鹿にしたかったんです。それで、ゴスロリ、ガングロ、リストカットを大きく取り上げました」

友松「女子高生を馬鹿にしつつも、リスペクトが感じられる描写になってます(笑)」

吸血少女対少女フランケン

高校生の水島樹権(斎藤工)に急接近する美しい転校生・有角もなみ(川村ゆきえ)。そして、もなみに嫉妬し激しい憎悪を抱く富良野けい子(乙黒えり)。けい子が校舎の屋上から転落死したのをきっかけに、学園は血みどろの地獄と化していく

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