ギャラクティカについて「軍とは思えないほどぬるい。でもそのアットホームさが良い」と語った庵野監督

一方の庵野監督は、DVD上映前は終始冷静な表情で、「ギャラクティカはこのイベントに出ることになってから見始めました。(今回の作品については)見て良かったところもありますし、見なくて良かったというところもありました」と斜に構えつつも、注目のキャラクターを尋ねられると「アダマ艦長です。やっぱり船は艦長のものだから。映画は見ている人や、プロデューサー、スタッフ、キャストたちみんなのものなんですけど、船は違う。艦長のものなんです」と持論を熱く展開。またアダマ艦長以外ではスターバックのファンとのことで、反対にブーマーについては「良さがわからない」と自身のこだわりを垣間見せる場面もありました。

DVDの上映終了後は、引き続き2人によるトークイベントが開催。マニアックな会話で観客を魅了しました。

ここからは、そのトークの内容をそのまま(一部ネタバレと思われる部分を編集)お伝えしていきます。

MC「今回の『ペガサスの黙示録』はシーズン3と4の間のお話です。先ほど樋口監督が好きだと仰っていた新キャラクターのケンドラを主演に据えているわけですが、このアプローチについてはいかがでしょう」

庵野「スピンオフ作品だからね、別の視点にしないと(本編と)被るし、脚本を書いているとそうなっちゃうんだと思います」

樋口監督は「ギャラクティカはフォロワーが多いので、『ギャラクティカっぽいね』と言われないように気を付けたい」と苦笑い

MC「某キャラクターの過去が描かれていましたが」

庵野「いらなかったんじゃないかと思います。キャラクターを描くのに過去の回想はいらない」

樋口「不満なのは、過去のギャラクティカの形が今のと同じっていうこと。あんなに昔の話なんだから、もうちょっとプラモの部品がいっぱい貼ってあるようなのでもよかったのに(笑)」

MC「ギャラクティカという作品については?」

庵野「2003年放映って結構前のドラマですよね。それがすごいと思います。この頃のアメリカってこんなの作ってたんだっていう」

MC「9.11との関係は感じますか?」

庵野「それはわからないけど……ギャラクティカは"ひっくり返したドラマ"だと言われていますよね。アメリカがやっていることをサイロンがやっているという」

樋口「宗教に関してすっぽり抜けていますよね。何よりまずアダマ艦長が無神論者だし。アメリカってどこかでキリスト教的なものがあるはずなんだけど、それがない。意図的なものなんでしょうか」

庵野「セットや美術は、わかりやすくていいですよね。ヤマトと同じで、バルブとかあって、メーターはアナログで(笑)」

MC「キャラクターでは比較的ブーマー好きが多いのですが、ネットの一部では綾波レイと比較する声もあります」

庵野「うーん、似ているんですかね……」

樋口「最近僕はバルターが好きですね。生まれ変わったらバルターになりたい。後は副艦長が他人とは思えないです(笑)」

スピンオフ企画が止まらない『GALACTICA』シリーズ
Film (c)2007 Universal Studios. All Rights Reserved.

――ここから会場に集まったお客さんからの質問コーナーへ。

MC「エヴァゲリオンはギャラクティカに影響を与えていると思いますか?」

庵野「うーん……(向こうのスタッフも)多少は見ているかもしれないですよね。でもわからないです。何か影響を受けているシーンがあったような気がしますけど、大量に一気に見たので忘れました(笑)」

MC「主人公が絶望的な状況を乗り越えていく部分や、冒頭でアポロが軍隊に入りたくないというところが共通している?」

庵野「それはぜんぜん関係ないと思いますよ。考えすぎです(笑)」

MC「ローレライの絹見艦長、エヴァンゲリオンのゲンドウ総司令、ギャラクティカのアダマ艦長、この3人でもっとも優秀なリーダーは?」

樋口「それはやっぱりアダマ艦長ですね! ……ほら、今日はギャラクティカのイベントだし(笑)」

おそろいのギャラクティカTシャツとネックレスで作品をアピール

MC「もし2人がギャラクティカの脚本家だったらどんな結末に?」

庵野「脚本家じゃないのでわかりません。こういうのは先読みしないで見たいんですよね。僕だったら……とはならない」

樋口「自分だったらこうするっていうのは、今やっていることに不満があるからだと思うんです。で、不満があったら僕はおそらくここにはきていないので(笑)。先がわからないからこそ、お客さんとして見続けたいなって思います」

MC「本編で気に入ったセリフなどはありますか?」

樋口「うーん……『そう、ここに願う』かな」

庵野「……じゃあそれで(笑)。あと、スターバックが『死んだやつなんか知らない』って言うんですが、それも印象に残っています」

MC「劇場版とTVの違いはありますか?」

庵野「TVシリーズって良いですよね。長い話をちょっとずつやるっていうのにやっぱり憧れます。僕もそういうのがやりたいし、劇場版をやっても長くしちゃうことになるんで」

樋口「映画って始まった瞬間に終わりの種まきを始めているんです。せっかく良いキャラクターを育てても2時間後には『お疲れ!』ってなる。それが寂しいですよね」

――映像のプロとしての視点からギャラクティカシリーズについて熱く語った2人の監督。残念ながらネタバレになるためここに書けなかった内容も多く、最後まで内容の濃密なトークイベントとなりました。

『GALACTICA:スピンオフTV ムービー』【RAZOR/ペガサスの黙示録】は2009年9月25日(金)リリース。