前編、中編、後編の3回に分け、紹介する映像制作の中心となる編集ソフト「Premiere Pro」。中編では、強化された「After Effects CS4」とのリンク機能など、ビデオ制作のワークフローが進化している面についてレポートしていく。

プロに必要な制作手法とアプリケーションの連携

本格的なプロの制作現場では、複数のスペシャリストが協力してひとつの制作を行うことが求められる。そのために業界で共通した効率的なワークフローが存在している。一般的なのは、撮影した素材や別途発注したCG素材をコピーしたオフライン素材を用いて仮編集を行い、編集結果をポストプロダクションにEDLデータとして持ち込み、まずビデオのみの編集、そして音声の編集(MA)を経て、クリーンマスター(白パケ)を作成する。その後配信する地域や時期に合わせた文字情報(スーパー)を載せて最終的なマスターテープ(完パケ)を作成し、これを必要数コピーして各所に配るというものだ。

図1 一般的なビデオ制作の流れ

撮影後の素材は制作会社で行うオフライン編集(仮編集)とポストプロダクションで行うオンライン編集(本編集)によって仕上げられていく

図1は以上のワークフローを示しているが、Adobe製品を使うと、Premiere Proを中核として、図2のようにプロの行っている編集システムのミニチュアを、1台のPC内に築くことができる。ひとつのアプリケーションが全ての機能を持つと便利にも思えるが、実際にそうなると機能が多すぎて使いづらいし、巨大すぎるアプリケーションでは開発の手間も増大してしまう。そのため多くのビデオ制作パッケージが、専門性を持つ複数のアプリケーションを同梱する仕様になっている。

図2 Adobe CS4 Production Premiumによる作業の流れ

「Adobe CS4 Production Premium」では、ポストプロダクションが行うべき業務を、1台のPC内で行うことができる

そこで問題となるのが、各アプリケーション間でのデータの移動だ。従来は読み込み(インポート)するデータに互換性があれば良しとされてきた。例えば、オープニングに派手なタイトルを載せたいときは、静止画加工ソフトの「Photoshop」で作成したPSDデータが、「Premiere Pro」で読み込めればいいという具合。趣味で行う映像編集であれば、これでなんら不便はないだろう。しかし業務となると事情が違ってくる。クライアントから依頼されて仕事を行うと、「直し」が何度も入るためだ。画像の位置をほんの少し移動するためにいちいちPhotoshop上でデータを保存し、それを毎度Premiere Proで読み込んで、タイムラインの所定の位置に貼り付けたり、効果を加えて調整していたのでは効率が悪くなる。

リアルタイムで修正を反映できる「Dynamic Link機能」

この問題を解決するのが「Dynamic Link機能」だ。Dynamic Link機能を使うと、関連する各アプリケーションをプラグインソフトのように起動でき、編集中のデータをファイル化することなく表示・修正できるのである。現時点では「CS4」に含まれるアプリケーション全てが対応しているわけではないが、Premiere Proを中核に考えると、静止画加工のPhotoshop、動画加工の「After Effects」、音声編集の「Soundbooth」、ディスク制作(オーサリング作業用)の「Encore」でこの機能が使えることになっている。じつは、このDynamic Link機能は「CS3」からも存在していたのだが、CS4になってからは、各アプリケーションへの対応強化がなされているのである。