【レポート】

SIGGRAPH 2008 - NEW TECH DEMO展示セクションレポート(後編)

5 バッサリ感とブッスリ感、やられる側で体感しよう

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/ed (slashed) - Gut Feelings when Being Cut and Pierced~バッサリ感とブッスリ感、やられる側で体感しよう

RPG、格闘ゲーム……剣術を使った戦闘シーンを描くゲームは多い。最近ではジョイパッド側に振動ユニットが実装されたことで、自らの攻撃アクションに連動した振動が味わえるため、敵を斬ったときの爽快感はそれなりに味わえるようになってきている。ただし、斬られる側の気持ちというのを再現することは難しい。そうしたインタフェースがこれまでなかったからだ。

電気通信大学、東京工芸大学、NTT科学基礎研究所、科学技術振興機構らの研究グループは、そうした新しい触覚を提示するデバイスとして「/ed」システムを発表した。発音はスラッシュドと読み、洒落でSlash-edのSlashを"/"と表記している。ちなみにSlashedは「斬られる」という意味になる。これは研究テーマとしてはHAPTICS(触覚学)の分野であり、新しい触覚提示のシステムの開発に相当する。

被験者は首と胴体にベルト状の装置を巻き付け、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に表示される映像見ることになる。映像はチャンバラの、こちらに斬りかかってくるようなシーンで綴られており、斬られた瞬間にこちらに音と共に衝撃が伝わることになる。

頭部にはHMDを装着、首と腰回りに着用して体験する「/ed」システム

上からHMD、首ベルト、腰ベルト

腰に巻き付けたベルトは剣の横切りの衝撃に対応しており、斬られたときの衝撃が剣の軌道に沿った形で移動する。このため被験者は斬られたような疑似感覚を得る。

一方、首に巻き付けたベルトは突き刺しの衝撃に対応する。まず首前面に衝撃が走り、続いてすぐに後面に衝撃が走るので、丁度首を串刺しにされたような疑似感覚を得る。

衝撃はトンと軽くはたかれた程度の軽いもので、実際に痛覚を刺激するものではないが、同時にばっさり斬られたときの音も同じ場所からなるので体験としてはリアルな疑似感覚になっている。

なにやらたいそうなシステムのような思えるが、実際のシステムは意外にシンプルで、その割には最大の効果が得られるような仕組みになっている。

なんと、この衝撃生成と効果音の再生は、実はフルレンジのスピーカーユニットから作り出されている。そう、衝撃と効果音は同一のスピーカーユニットから生成されているのだ。

担当者によればこのスピーカーユニットは特別なものではなく、iPod用などのポータブル外部スピーカーなどに採用されているフルレンジスピーカーユニットなのだという。こうした最新の小型フルレンジスピーカーユニットは40Hz~20kHzくらいまでの広帯域再生を、かなり高効率に出力できるようになっているため、1ユニットあたりで200Hz以下の重低音を衝撃生成として利用し、それ以上の周波数帯を効果音再生に用いることが出来るのだそうだ。なお、重低音の衝撃と効果音とは同時に再生している。

ベルトユニットに備え付けられているフルレンジスピーカーユニットは複数個あり、これらを個別に連続駆動して重低音を再生することで衝撃の移動を表現している。この駆動の仕方がミソで、オンオフだけで行わず、衝撃をオーバーラップさせたり、衝撃の減衰と増幅を制御することで、連続的な衝撃の変化を被験者に知覚させている。これは人間の知覚システムにおける、足りない情報を補って自然に感じられるように都合よく感じてしまう「Apparent Motion」と呼ばれる現象を利用している。

「/ed」システムの動作概念

現状では試作システムと言うこともあり、首と腰に巻き付けるベルト状の構造をしているため、二次元的な衝撃しか再現できないが、フルレンジのスピーカーユニットをマトリクスアレイ構造とすることで、自在な軌道の衝撃を作り出すことも可能になるはずだ。

昨今、陰湿ないじめ問題、短絡的な殺人事件の報道が相次ぐが、これは「人の痛みが分からないゲームの影響」と結びつける論調もある。もし、そうした社会現象が、ゲームにおける人を攻撃する爽快感の追求だけの結果なのだとしたら、人の痛み、やられる側の衝撃が味わえるこの「/ed」システムは、ゲームにおけるフォースフィードバック表現の在り方に一石を投じることになるかもしれない(?)

動画
「/ed」システムのシステム解説映像 (WMV形式 8.44MB 4分28秒)

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インデックス

目次
(1) マイクロ波で非接触通信 & 非接触電源
(2) 光を折り曲げて作る高解像平面レンズ
(3) 液体レンズで遮蔽物の向こうを透視
(4) 一人称視点でアリの巣に潜入!
(5) バッサリ感とブッスリ感、やられる側で体感しよう
(6) スピーカーを使った触覚提示システムの変り種
(7) 仮想現実から拡張現実へ

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