ナビゲーター・茂木淳一(左)とタレント・女優の中川翔子(右)
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

DVD『スキージャンプ・ペア』(2002年)などで知られる映像クリエイター・真島理一郎が、12組の優秀なクリエイターを集め、架空のお笑いスポーツ競技の映像大会『東京オンリーピック』を制作した。本作は新宿バルト9にて、8月24日まで上映中。

同映画は、12組の映像クリエイターたちが各々、アニメ、CG、パペット、実写などを用い、架空の競技を1競技5分~15分で仕上げた作品だ。各競技間には、ナビゲーター・茂木淳一とタレント・中川翔子の二人が進行役として登場し、『東京オンリーピック』を盛り上げる。これから各競技をひとつずつ紹介していこう。

開会式

監督は真島理一郎。注目は一見実写のように見える土鳩ダンサーズの動きだ。この映像は、モーションキャプチャーを用いた3DCGアニメーションで制作されている。ほかにも各国代表選手のシュールな登場シーンを見逃さないでほしい。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

女子ヘルマラソン

スピリチュアルを追求するマラソンの新競技。監督は、3DCGを2Dのセル画のように見せる手法で有名な神風動画・水野貴信。神風動画の代表作は、日清食品カップヌードルとのコラボレーションCM作品『FREEDOM』(2006年~)のオープニング、MC-GAKU/桜井和寿(Mr.Children)の楽曲PV『手を出すな』(2006年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

ブランカー

ブランコを利用した靴飛ばしを題材にした新競技。出場選手の飛ばす靴に、CGで炎を加えている映像がユニークだ。監督は、金城武主演の映画『Sweet Rain 死神の精度』(2008年)で長編映画デビューを果たした筧昌也。代表作は、ドラマ『ロス:タイム:ライフ』(2003、2008年)、ドラマ『世にも奇妙な物語~美人缶~』(2005年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

バカ近代四種

50メートル走、チェス、馬術、風呂の4種目で究極のバカを決めるという競技。この作品は、2Dイラストの必要な部分だけを動かすという手法で作られている。司会役として、温水洋一が出演しているところも要注目だ。監督は、細川徹×五月女ケイ子。五月女監督は、テレビや書籍などビジュアル全般を手掛ける脱力劇画家。代表作は、書籍『新しい単位』(2002年)など。細川監督は、コントユニット『男子はだまってなさいよ』(2006年)の主宰も務める脚本家兼演出家。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

名称未発表

谷口崇が監督、脚本、演出、声を一人で担当した作品。競技名と内容は極秘扱いとなっている。ほぼ口元以外動かさないで会話シーンを描くなど、動画を必要最低限しか使用しない映像が特徴。アニメ『森の安藤』(2006年)でNHKデジタルスタジアムのセレクションに入選、数々の賞を受賞している。代表作は、アニメ『森の安藤』、アニメ『サラリーマンマン』(2005年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

男子親離れ

真島監督の『スキージャンプ・ペア』に続く架空スポーツ競技第二弾。世界各国の選手が、円盤投げの要領で、自分の母親を投げ飛ばす競技。母親と息子の楽しげな写真が映し出された後、見るも無残に飛んでいく母親の姿が3DCGアニメーションで描かれる。最後に登場する日本代表ヤシダミノル選手の親離れできないシーンも必見だ。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

ロッカールーム

ボクシング決勝戦前のロッカールームの様子を描いた作品。CGを使わず実写のみで作られている。芸人バナナマンとミュージシャンMAXのNANAが、最後まで真剣に演技し通した、「お笑い」抜きの作品だ。監督は、江口カン(KOO-KI)。CMや短編映画、演劇の演出など幅広いジャンルでエンタテインメント性の高い作品を手がけている。YouTubeで公開されているNike iDのCM『Nike Cosplay(アキバマン)』(2006年)が評判となり、カンヌ国際広告賞などを獲得している。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

ホームアスロン

ホームアスロンは、電球の交換競争や屋根に登る競争など、1軒の家だけで繰り広げられるトライアスロン。児玉徹郎監督は、手書きの背景と3DCGアニメーションで描かれたキャラクターを合成し映像を作り出す。児玉監督の短編アニメーション『RUNNINGMAN』(2007年)で登場するBOSS缶コーヒーロゴのパロディ"DEBU缶コーヒー"が登場するなど、ファンなら思わず笑ってしまうにくい演出になっている。短編アニメーション『MY HOME』(2006年)などで、数々の賞を受賞している。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

和卓球

卓球と平安時代風な日本の風景や服装とを掛け合わせて作られた競技。なかでもCGで描かれたピンポン玉の動きが変則的でユニークだ。また、同じセリフが高い声で何度も繰り返されるしつこさに思わず笑ってしまう。この作品で用いられている映像手法は、登場人物の顔だけをイラストで描き、実写映像に重ね合わるという新しい形のものだ。監督は、安達亨と板倉俊介、安藤真の三人で構成されたAC部。普段はイラストを動かして動画を作り出す彼らにとっても今回は新しい試みであったという。代表作は、テレビ朝日SmaSTATION『スマアニメ/カッコいい男たち編』(2001年)、アニメ『ユーロボーイズ』(2000年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

男子鉄球玉入れ

映像クリエイター・中野裕之監督の作品。運動会などで行われる玉入れを、オンリーピックの公式競技用にアレンジ。所々に入るスローモーション映像や球が当たったときの効果音が、作品にアクセントをつけている。試合が進むにつれ解説者の説明が選手に対する文句になってしまうところにも注目。中野監督の代表作は、映画『SF サムライ・フィクション』(1998年)、映画『SF ステレオ・フューチャー』(2000年)、『RED SHADOW 赤影』(2001年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

サムライコール

土俵の上で魂を込めて「サムライ」と叫ぶ男たちの競技が、実写映像のみで描かれる。監督は、DVD『スカイフィッシュの捕まえ方』シリーズ(2006~2007年)やTV番組『温厚な上司の怒らせ方』(2007年)など、お笑い作品で知られる古屋雄作(Cruiser)。今までの作品同様、シリアスなドキュメンタリー風の映像で観る人を笑わせる。注目は、監督が一番撮りたかったという日本代表サワムラ選手の競技シーン。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

男子ヒューマニズム

監督、真島理一郎×澤田裕太郎によるピンが『人』、ボールはなんでもありという新競技。関節可動のフィギュアを用いたコマ録り作品である。現役学生である澤田監督は、自称「軟体造形職人」としてクレイ、パペットアニメを手掛けていて、『デジタルクリエイターズコンペティション2006』では優秀賞を獲得している。代表作は、パペットアニメ『じゅうじん』(2006年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

巨大相撲

中尾浩之監督による巨大ロボット相撲対決。実写にアニメーションを掛け合わせたライブメーションという独自の手法で作られている。同監督は、国内外で数々の受賞暦を誇る気鋭のディレクター。2000年には、『カンヌ広告祭』におけるニューディレクターズショーケースで世界の新人監督8人に選出された実績を持つ。代表作は、ショートフィルム、ドラマ『ZERO』(2004年、2008年)、TV番組『スチーム係長』(2005年)など。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

閉会式

最後の作品監督を務めるのは、真島理一郎。まず閉会式に先立ち行われる最終競技は3DCGアニメーションで描かれる「男女ペアマラソン」。注目は女性が男性を引きずりながら走る日本代表の姿。今の日本における男女の力関係を皮肉った映像といえるかもしれない。続いて行われる閉会式では、開会式同様、土鳩ダンサーズの踊り楽しめる。また会場のオーロラビジョンには、「See you 2012?」と表示され、続編の存在を予感させる。
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

また、9月26日発売予定の本作のDVDには、海外のクリエイターによる3競技が新たに追加収録される。この3競技は、映画館の中に設置されたDVDブースで上映され、会場でも楽しめる。

アメリカ代表の作品『ラブ・レース』。監督はアカデミー賞短編アニメーション賞にノミネートされたこともあるビル・プリンプトン
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

イギリス代表の作品『アニマルリフティング』。監督は、世界各国で短編映画の賞を受賞しているリチャード・フェンウィック
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

アルゼンチン代表の作品『早打ち携帯1000文字級』。監督は、初短編アニメーション作品でアヌシー国際アニメーション映画祭特別賞を受賞しているイグナシオ・フェレラス
(C)2008 東京オンリーピック連盟 国際オンリーピック委員会

『東京オンリーピック』には、実写作品やCG作品などの色々な映像作品が登場する。なかでもCG作品では、様々なCG手法が使われていて、観客を飽きさせない。ひとつの作品の中で、これだけ多くの種類の個性的なCG映像が楽しめる映画は少ないだろう。1競技を5分~15分という短い時間に設定したこともあり、従来とは違った映像表現にトライした監督も多く、既成概念に囚われない実験的な作品も楽しめる。世界のトップアスリートが集う北京五輪と同時期に開催されている『東京オンリーピック』で、映像界の日本代表たちの姿を観ていただきたい。

期間限定の架空のお笑いスポーツ競技の映像大会『東京オンリーピック』は8月24日まで、東京・新宿バルト9にて、公開中。