デジタルカメラは安い買い物ではない。購入した機材を長く大切に使うには、使用後のメンテナンスが必要になってくる。とくに購入後で怖いのはカビの存在だ。レンズにカビが生えると画質に影響してしまう。そしてカビを取り除くにはけっこうな費用がかかるし、完全に除去できない場合もある。大切な機材を長く愛用するには正しい保管方法が必須なのだ。なお、今回の記事作成に当たり、防湿庫メーカーであるトーリ・ハン 取締役社長・原章氏にご協力をいただいた。

カビが生えやすい日本の気候

今回、お話しを伺ったトーリ・ハン 取締役社長 原章氏

Q:普通の状態でカビは生えますか?
A:日本の気候は高温多湿でカビが生えやすい環境なので、金属やガラスのカメラやレンズでもカビの発生原因があれば発生します。カビの一番生えやすい時期は4~10月ごろ。温度が25度以上で、湿度が60%以上という条件がそろうとカビが生えやすくなります。カビが好む条件は水と食べ物がある場所。つまり一番きびしいのが家庭環境なのです。

Q:カビの原因(餌)は何ですか?
A:汚れや手垢などの汚れがカビの原因になります。撮影後にカメラを清掃する習慣を付けることがカビの予防になります。 Q:レンズにカビが生えると画質に影響がありますか?
A:カビの生えたレンズで撮影すると、ソフトフォーカスのような画質の写真になります。

Q:カビが生えているかレンズチェックの仕方は?
A:「気がつかないうちにレンズがカビに犯されていた」というケースはよくある話です。レンズの前玉から、電球など明るいもので照らして透かして見るといいでしょう。線香花火のような模様がでていたらそれがカビです。しかし素人が見てわかる状態は、そうとうひどい状態です。自分で見て自信のない人はメーカーサポートなどに持っていくのが確実です。

Q:レンズのカビを除去するのにどの程度の費用がかかりますか?
A:[編集部にて調査] 下のカビの生えたニッコール 300mm F4.5をニコンのサービスセンターに持ち込んだところ、1万3,440円かかるという見積もりでした。カビの大きさ(範囲や量)によって値段が変わるようです。また今回のレンズはカビが酷すぎるため、クリーニングしてもカビ跡が残る可能性があるとのこと。各メーカーやサポートセンターで費用は違うでしょうが、だいたい1万~3万円程度はみておいたほうがいいでしょう。

Q:どのような環境が保管に適していますか?
A:レンズの保管に適した環境は、温度は関係なく湿度を50%以下に保つことです。トーリ・ハンでは撮影機材は30~40%程度を推奨しています。10~20%のように極端に湿度を下げすぎると、古いカメラの蛇腹部分や、カメラ表皮の革が傷むなど、劣化の原因になります。

Q:除湿器やエアコンのドライを入れた部屋なら大丈夫ですか?
A:温度が20度前後で湿度40%以下ならカビの発生する確率は少ないですが、除湿器やエアコンで湿度を40%に保つことはまず不可能です。なにより、そんな状態で人間が生活しているとノドをやられてしまします。人間の健康には60%程度が良いとされています。

Q:カメラショップや販売前の倉庫は、湿度調節してあると思えませんが大丈夫ですか?
A:メーカーが製品を組み立てたり梱包するのは乾燥した状態のクリーンルームで行なわれ、完全包装で店頭に来ます。梱包された製品にカビ菌は付着していないので新製品は安心です。中古品については、中古ショップの環境や設備で変わってきますが、ちゃんとしたお店は商品のチェックをしているので大丈夫でしょう。一番心配なのは、インターネットなどの個人売買です。中古を購入する場合は信頼できるお店で買ったほうがいいでしょう。

長い間、使用されていなかったニッコール 300mm F4.5

カビの生えたレンズの状態。肉眼で見てもかなり酷い状態だ

カビの生えたレンズで撮影。ピントは合っているのに、ソフトフォーカスがかかったような状態になっている
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