リコーは、高級デジタルカメラ「GR デジタル(DIGITAL)II」の発表会を横浜美術館で開催した。今回の発表会は報道関係者以外にも、普段からGRを愛用しているプロカメラマンやユーザが多数参加。発表会は「GR meeting」と名付けられ、GRデジタルIIの発表だけでなく、トークショーなども行なわれた。

「GRデジタル」は幸せなカメラ

「GRデジタルII」の発表では、はじめに株式会社リコー パーソナルマルチメディアカンパニープレジデントの湯浅一弘氏から、開発経緯と「Candid Photo」文化を支援する活動の紹介が行われた。Candid Photo(キャンディド・フォト)はスナップ写真の意味。

「2005年に発売されたGRデジタルは、"A3以上の印刷に耐えうる高画質""堅牢性と携帯性""信頼性と確実性""使いやすい操作性"という4つの要件を満たすカメラを目指して開発してきました。ワイドレンズ、マクロ、レスポンスや操作性など、ユーザの撮影領域の拡大に力を入れ、商品サイクルが半年というデジタルカメラにおいて、GRデジタルは2年もの間、コンスタントに販売を続けることができたのは、非常にありがたいと思っています」と語り、「この2年間は、GRブログを通じてユーザとコミュニケーションを図り、ユーザのニーズをなるべく反映させてきました。フォームアップによる機能拡張や、カスタマイズサービスによる細かなサポートを行なうことで、愛着を持って使っていただけるようなカメラに近づけたのではないのかと思っています。ユーザに愛されたGRデジタルは幸せなカメラだと思います」と、GRデジタルを愛用するユーザに向けて感謝の意を伝えた。

GRデジタルIIについては、「GRデジタルを"正統進化"させました。奇をてらった変化球ではなく、まっとうな直球勝負で行こうと、構想段階からGRデジタルと同じコンセプトで開発しました」。携帯性、高画質、スタイリング、拡張性は変えずに、"あくまでもGRはGRである"ということを徹底的に追及したという。

「Candid Photo」文化を支援するための活動としては、11月3~4日に横浜美術館で、「GR DIGITAL」と「Caplio GX100」で撮影した100人の作品を展示する「photoGRaph100」を開催する。あわせて使い方などを紹介したワークショップも行なうという。このイベントで展示された100人の作品は、シー・エム・エスとの共同制作により、 写真集「GR SNAPS」として発刊されるという。

そのほかの活動として、昨年に引き続きGRデジタルで撮影した作品を一般公募するカレンダーコンテストを開催。入賞作品で2008年度のカレンダーを作成するという。そのほかの写真コンクールも積極的に開催し、今まで以上に「Candid Photo」文化を盛り上げる活動を進めていくとアピールした。

パーソナルマルチメディアカンパニープレジデントの湯浅一弘氏

GR1から引き継がれている携帯性、高画質、堅牢性は、GRシリーズの特長

長く愛用してもらえるプロの道具として、GRデジタルのコンセプトは変えないと開発段階から決まっていた

GRデジタルのフォームアップは今回の第5弾で最終バージョンになる

GRデジタルの販売2周年を記念して、横浜美術館で写真展が開催される

恒例のカレンダーコンテストも開催。応募期間は11月11日まで

GRレンズの性能を最大限引き出す進化

GRデジタルIIの詳細については、パーソナルマルチメディアカンパニーICS事業部設計室 室長の北郷隆氏が説明に立った。GRデジタルの進化として、プロカメラマンやハイアマチュア層に向け、高画質に力を入れたという。CCDを1/1.8型813万画素から1/1.75型約1,001万画素に拡大し、新画像処理エンジン「GRエンジンII」を採用した。また、要望の多かった"対ノイズ性の向上""RAW連続撮影と書込の高速化""低消費電力の実現"を可能にしたという。絵作りの方向性はGRデジタルから変更はなく、自然な仕上がりを目指している。レンズは、引き続きGRレンズを採用。「エンジン関係を向上させ、自信を持って提供しているGRレンズの性能を最大限引き出していくことが、GRデジタルの進化だと考えます」と語った。

ノイズについては、GRデジタルIIでのISO400の画質性能が、GRデジタルのISO100とほぼ同等だという。約2段分のノイズリダクションが成功したことで、ユーザの要望にかなり応えることができたのではないか、と自信を見せた。また、RAWでの書き込み時間は最短約3.8秒に短縮し、RAW撮影中も2枚までの連続撮影が可能になった。

低消費電力化については、新画像エンジンや大型液晶モニターの採用などで消費電力が増えるところだが、細かい制御を行なうことで、撮影可能枚数を充電池で250枚から370枚へ、単4アルカリ電池で35枚から45枚に増やすことに成功したという。バッテリーはGRデジタルと同じDB-60を採用する。

質疑応答では、さらに大きな撮像素子や高解像度実現への可能性も質問されたが、「画素数についてはその機種に最適な物を選定しています。また、センサーの大きさはボディの大きさに関係します。GRデジタルは携帯性や使いやすさも重要な要素であり、スタイルやデザインがひとつでも欠けたものはGRデジタルと呼びたくないと考えていますので、今後、違った形で検討する可能性はありますが、GRデジタルでの搭載は考えていません」(湯浅氏)とのこと。

「ユーザからのデザイン面での要望はなかったのか?」という質問については、「内部で変更するという意見もありましたが、"正統進化"のために大きな変更はしないで、デザインや操作性は踏襲し、価値観を育てていくという結論になりました」(北郷氏)。

パーソナルマルチメディアカンパニーICS事業部設計室 室長の北郷隆氏

高画質を追究し、ノイズも減少させた新画像処理エンジン「GRエンジンII」

        

電子水準器、被写界深度表示など操作性を高める新機能も搭載

アスペクト比1:1(RAW対応)や従来の白黒に加え、個性的なモノクローム表現も追加された

RAWモードでの画像書き込み時間は3.8秒、撮影間隔は0.68秒を実現

GRデジタルと同じバッテリーを採用し、撮影可能枚数を大幅に向上させた

持つことで日々を楽しく過ごせるカメラ

スペシャルゲストとして、GRデジタルIIのカタログ用写真を撮影した写真家の望月宏信氏と銀塩カメラGR1を愛用している現代美術作家の奈良美智氏が登場し、GRデジタルIIについてトークショーを行なった。

望月氏は、「今回の撮影では、GRデジタルIIは"Candid Photo"が製品のコンセプトなので、すべてJPEGで撮影しました。リコーさんからは広告写真のように作り込むのではなく、スナップショットのように撮影してほしいとのことでした。普通カタログ撮影は準備を万端に整えてから臨むことが多いのですが、今回の撮影はカメラだけを持って、楽しみながら撮影できましたね。基本的に後処理は行わず、モノクロ写真や1:1アスペクト比などカメラの機能をそのまま使いました。このカメラは触っていて楽しいですね」と印象を語った。

GRデジタルIIのカタログ用写真を撮影した写真家の望月宏信氏

銀塩カメラGR1を愛用している現代美術作家 奈良美智氏

そして、2007年1月にヘリコプターの転落事故に遭ったことを明かし、墜落していくときに「生きていた証として、何か残せるものはあるのか?」と考えたという。そのときに「僕には写真がある。今まで仕事やプライベートを含め、感動を切り取ってきた記録がある」と気付いて安心でき、冷静に海中のヘリコプターから脱出できたと語った。

「写真とは、技術やスペックは関係なく、気軽に撮り続けることが重要だと思う。写真は楽しいコミュニケーションツールであり、記録であり、人生の足跡を残していける重要なものだと思います。コンパクトカメラでGRほど、しっかり写してくれるものはないんじゃないのかな。仕事で一眼レフは使うけど、普段持ち歩いて生活に切り離せないのはGRデジタルだと思っている」と述べ、GRデジタルを「持つことで日々を楽しく過ごせるカメラ」と表現した。

また奈良氏は、「僕は、デジタルカメラを使うのは今回いただいたGRデジタルが初めてです。僕にとって写真とは、旅のように人との関わり合いを持てるツールで、趣味で撮り続けてきました。出会った人や起こった出来事を絵日記のように思い出させてくれるのが魅力ですね」と、GR1やLomo(トイカメラ)などの銀塩カメラで撮りためた写真をスライドショーで流しながら写真の魅力について語った。

「GRデジタルを初めて触ったとき、昔使っていたGR1にデザインなどが似ていて懐かしいという印象を受けました。使ってみると同じ感覚で撮影できまた」と語り、GRデジタルで撮影した滋賀県・信楽のアトリエ風景と富士川SAのスナップショットを披露した。「GRデジタルはすごく良いカメラで、いただけたことはすごく嬉しかった。できればGR IIもいただければ嬉しいです(笑)」とアピールも忘れず、会場の笑いを誘っていた。

写真集「GR SNAPS」を共同制作したテラウチマサト氏はビデオレターで登場

「photoGRaph100」に参加したミュージシャンの坂崎幸之助氏

GR DIGITAL II。外観デザインはGR DIGITALとほぼ同じ

スロット部。メディアはSDメモリーカード

左は新しいミニファインダー「GV-2」、右は従来からの「GV-1」

GV-2を取り付けたGRデジタルII

新搭載の電子水準器のインジケータが中央に表示されている。赤は警告

縦位置にすると水準器も縦位置で表示。水平になるとインジケータが緑になる

撮影メニュー画面。フォントなど若干の変更はあるものの操作系の変更はない

会場ロビーには「photoGRaph 100」の作品と作者のコメントが展示されていた