米Freescaleの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは12日、東京都内において同社のプライベートショー「Freescale Technology Forum Japan 2007」(FTF Japan 2007)を開催した。本講では、午前中に行われたジェネラルセッションの中から「加速する産業界の進化に求められるソリューション」と題した講演を中心にレポートする。

自動車市場の爆発的な伸びに対応するフリースケール

午前中に行われたジェネラルセッションは、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン(以下、フリースケール)の代表取締役社長である高橋恒雄氏自らが演題に上がり、フリースケールが手がけるさまざまな分野のソリューションを、それぞれの担当者とともに紹介するというものだった。

写真1 演壇で講演するフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長の高橋恒雄氏

高橋氏は、まずフリースケールを取り巻く状況を説明。PCや携帯電話が急速に普及し、進化を続けていることを示した。それが良くわかる指標として高橋氏は携帯電話の
加入者数×通信速度×メモリ容量
を端末価格で割った値が、ここ10年で1,000万倍という途方もない増加を見せたことを示した。

そして今後注目すべき最重要の市場として、自動車市場を挙げた。

写真2 自動車市場の伸びと変化 - 中国を始めとする新興市場が急激に伸びると同時に、急速な低価格化が進む一方で、環境に配慮した製品が求められているという

高橋氏は、中国を始めとする新興市場が急激に伸びる一方で、環境に配慮した自動車が求められるなど自動車に急激な変化が起きている、と背景を説明し、その変化に対応するソリューションを提供することが重要とした。

写真3 「変化する市場に対応するソリューションを提供していく」(高橋氏)

そして同社のオートモーティブグループジェネラルマネージャーである林 章氏が、実物のエンジン(排気量は1リッター)を伴って登場。同社のオートモーティブ製品のデモを行った。

写真4 実物のエンジンを伴って登場した同社のオートモーティブグループジェネラルマネージャーである林 章氏

まず、同社の「eSwitch」を使用したエンジン始動を実演。eSwitchは1チップ当たり最大60Aの突入電流に耐える半導体リレーである。自動車に利用されている機械式リレーをeSwitchに置き換えることで、配線を効率的に作り替えることができ、結果としてワイヤハーネスの総重量を約30%削減でき、軽量化により燃費の向上や二酸化炭素排出の削減が可能になるという。

写真5 eSwitchを使用したセルスタータ始動時の突入電流。会場に持ち込まれたエンジンは4個のeSwitchを使用、192Aという大電流に対応できる

写真6 実際にセルモータを回して実演。左側に見えているのがeSwitchを載せた基板。右側が電流

続いて行われたデモは、エンジンのタイミング制御専用プロセッサ「eTPU」だ。エンジン制御ユニット(ECU:Engine Control Unit)の負担は増え続けている。eTPUはエンジンの燃料噴射タイミングや点火タイミングを制御する専用の32ビットプロセッサで、メインCPUと組み合わせて使うコプロセッサのようなものである。このeTPUを利用することにより、メインCPUがタイミング制御の処理から開放され、より重要な制御にリソースを回すことができるようになるという。また、タイミング専用ということで非常に精度の高い制御が可能で、同程度の他社のプロセッサよりも高性能とのこと。

写真7 エンジン模型を使ってeTPUのデモを披露

写真8 eTPUはエンジン制御のうち、タイミング制御を専門に行うコプロセッサ

写真9 eSwitchおよびeTPUにより、年間8万トンもの二酸化炭素排出量が削減できるという