14日に開幕した「2007 Symposium on VLSI Circuits」において、ルネサス テクノロジはヘテロ型マルチコアSoCに関する発表を行った。デジタルコンシューマやメディカルなど、ハイパフォーマンスが必要な分野向けに開発しているもの。従来のSMPに比べると、45%の消費電力削減が確認できたという。

ハードウェアでの処理は高速だが汎用性がなく、CPUでのソフトウェア処理は汎用性は高いがパフォーマンスが十分ではない。消費電力も大きい。ヘテロ型マルチコアのアーキテクチャはその中間を狙ったアーキテクチャと言え、高い性能と汎用性を実現しつつ、消費電力も抑えることが目的となる。

同社が試作したSoCには、動作クロック1GHzのM32R(32ビットRISC)が8つ、動作クロック500MHzの「Muti-bank Matrix Processor(MBMX)」が2つ搭載される。複雑なプログラムはM32Rが動かし、マルチメディアデータのような大規模計算はMBMXが処理する。このほか、チップ全体の管理のために、500MHzのM32Cも1つ搭載。チップサイズは6.35×6.35mmで、90nm CMOSプロセスで製造された。

MBMXは、シンプルなプロセッシング・エレメント(PE)を768個も搭載する並列プロセッサ。命令メモリは32KB、データメモリは96KB搭載しており、各PEは2bitの演算が可能(桁の多い計算は分けて実行する)。以前発表したMatrix processorはローパワー向けだったが、MBMXは名前の通り4バンク装備となっており、高速な動作を可能とした。処理性能はそれぞれ38GOPSとなる。

そのほか、タスクホッピング機能も実装した。これは各CPUの温度をモニターすることで、負荷の状態を"Hot"、"Average"、"Cool"の3段階に判断、負荷の高いCPUから低いCPUへとタスクを移動させる。

3D計測のアプリケーションで検証を行ったところ、比較用のSMP(16CPU)では消費電力が7.5W、試作のチップではこれが4.1Wと、45%の削減が確認できたという。このまま製品化する予定はないようだが、同社はこれらの技術について、「将来的に様々なアプリケーションで応用できる可能性がある」としている。