2023年2月4日、日比谷国際ビルコンファレンススクエアにて、対戦型オンライントレーディングカードゲーム『Shadowverse』の大学生向けeスポーツリーグ「Shadowverse University League(シャドウバース大学生リーグ)」の年間王者を決める「Shadowverse University League 22-23 GRAND FINALS」が開催されました。

  • 「Shadowverse University League 22-23 GRAND FINALS」は有観客のオフライン大会として、日比谷国際ビルコンファレンススクエアにて行われました

「シャドウバース大学生リーグ」は、同じサークルのメンバー5~10名のチームが参加するeスポーツリーグです。今年度のリーグに参加したのは延べ113チーム。なお、今年度からはインカレ制度が採用され、他大学からも2名までチームに参加できるようになりました。

リーグは1st Seasonと2nd Seasonの2シーズン制で行われ、それぞれのシーズンで好成績を残した2チームずつがGRAND FINALSに進出します。GRAND FINALSは、5対5のチーム戦で行われ、チームメイト全員が勝利しなければならない変則的なBO9形式を採用。勝ち抜けルールのため、メンバーの総合力がチームの強さとなるレギュレーションです。

GRAND FINALSに進出したのは以下のチームです。

千葉工業大学 CIT_sv(1st Season優勝)
北海道大学 北大シャドバサークル(2nd Season 準優勝)
東京都市大学 Toriela(2nd Season 優勝)
京都大学 京都大学シャドバサークル(1st Season 3位)

準決勝第1試合は、千葉工業大学vs.北海道大学。北海道大学の4連勝で一気にリーチをかけるも、そこから千葉工業大学が4連勝でフルセットまでもつれ込みます。最後は北海道大学が勝ちきり、決勝戦へ進出しました。

準決勝第2試合は、東京都市大学vs.京都大学。昨年の覇者である京都大学が勝ち星を先行します。東京都市大学が追いすがるものの、追いつけず、5-3で京都大学が決勝戦へとコマを進めました。

  • 千葉工業大学を下し、決勝に進出した北海道大学

  • 東京都市大学を破り、決勝にコマを進めた京都大学

決勝戦は北海道大学vs.京都大学。奇しくも昨年と同じカードです。京都大学にとっては連覇がかかった1戦。北海道大学はリベンジを果たす機会を得ました。

試合は京都大学が勝ち星を先行し、4-2で優勝にリーチ。しかし、試合のルール上、京都大学は最後に残されたえるし選手が連戦を強いられ、北海道大学としては対策しやすい状態になりました。

この優位性をもって、北海道大学はここから2連勝。ついに4-4のイーブンまで持ち込みます。しかし、追い上げもここまで。最後はえるし選手が踏ん張り、京都大学が連覇を果たしました。

  • ネクロマンサーミラーでの対戦となった最終ラウンド。えるし選手がAncer選手を破り、京都大学に優勝をもたらしました

  • 優勝の喜びを分かち合う京都大学

  • 優勝賞金100万円とトロフィー、副賞のノートPCを掲げる京都大学

  • 実況の友田一貴氏(写真右)、解説の海老原悠氏(写真中央)、ゲストのたばた選手(写真左)と、実況解説陣はプロシーンでお馴染みの面々が担当

さて、「シャドウバース大学生リーグ」といえば、参加チームが大学生というだけではなく、大会運営にも大学生が参加していることも特徴の1つ。配信技術関連や進行MC、実況解説は専業のプロの手を借りているものの、大会企画や大会運営などは「シャドウバース大学生リーグ学生実行委員会」が担います。

大学生リーグ自体は2019年からの開催で、大学生が運営に携わるようになったのが翌年の「Shadowverse University League 20-21 2nd Season」から。当時は広報部門のみで、Cygamesとの協業で進めていましたが、少しずつ大学生の担当を増やし、ゆくゆくは大学生のみで運営できる大会を目指しているとのことでした。

2年経過した今では、大会運営の多くが学生。着実に大学生による運営に切り替わっています。そこで、現在、学生実行委員会に参加する千葉工業大学4年の渡邊陸央さんと法政大学3年の真木拓海さんに、現在の業務内容や委員会に参加して得た経験などについて、話を聞いてきました。

――まずは自己紹介をお願いします。

渡邊陸央さん(以下、渡邊):千葉工業大学4年の渡邊です。現在、学生実行委員会のリーダーを務めていて、実行委員会の前身の「大学生リーグ広報部」を含めると3年ほど運営の業務に携わっています。『Shadowverse』についてはリリース当初からプレイしており、7年目ですね。

真木拓海さん(以下、真木):法政大学3年の真木拓海です。学生実行委員会に参加したのは2022年5月あたりだったと思います。『Shadowverse』はリリース当初からやっています。

  • 学生実行委員会の渡邊陸央さん(写真左)と真木拓海さん(写真右)

――学生実行委員会に参加した経緯を教えてください。

渡邊:元々eスポーツに興味があり、選手として大学生リーグにも参加していました。そこで広報部の募集を知ったのがきっかけです。やりたいことがあったら何でもやってみようと思うタイプなので、「運営に携わってみたい」と募集しました。

真木:私はほかのメンバーから「一緒にやらない?」と誘われたのがきっかけです。

――学生実行委員会ではどんな仕事をしているのでしょうか。

渡邊:私は学生実行委員会の委員長として、主にタスクを取りまとめる役割を担いました。学生実行委員会のタスクは、メンバー登録、デッキ登録リマインド、問い合わせ業務対応、試合進行、ジャッジ、Twitter運用など、多岐にわたります。また、今年度からはTwitterキャンペーンや『Shadowverse』の公式YouTube番組「マヂカルシャドウバース」への企画提供、サークル長交流会の企画運営、GRAND FINALSアフターパーティーの企画運営、応援グッズの企画、作成といった新しい取り組みも実行委員会で行いました。

真木:GRAND FINALSの制作リーダーを担当しました。業務としては、進行管理、告知企画の立案などですね。社会人チームに混ざって企画会議に参加することもありました。

――現在、大学生リーグは、学生実行委員会が運営に入っているとはいえ、Cygamesをはじめ、さまざまなプロフェッショナルが運営に携わっています。一緒にやっていて、プロのすごさを感じたことはありますか。

渡邊:初年度は、まだノウハウもなく、大学生がそのままイベント運営に入ってきた感じでした。良い面としては自由な発想が多かったと思います。それに対して、プロの方が俯瞰してみてくれていて、実現性がなかったり、実現してもやるメリットが少なかったりと、学生では気がつかない点を指摘していただけたました。

3年間やっているうちに、プロの方の言うことがよく理解できるようになりました。自由な発想が出なくなったデメリットもありますが、企画に現実味が出てきていると思います。

真木:学園祭の実行委員も好きでやっているんですけど、大学生リーグの学生実行委員会をやっていると、学園祭の実行委員がアマチュアに見えてしまいますね。大学生リーグはやはりプロが関わっているのでいろいろな知見があり、そういうことを学園祭の実行委員にフィードバックできればと思っています。

具体的にいうと、責任の重さが違いますね。自分のタスクを遂行できなければ企画そのものが実現しない可能性もあります。そういう意識を持つようになりました。

  • 学生実行委員会STAFFのロゴが誇らしいスタッフジャンパー

  • 影ながら選手を支える学生実行委員会のSTAFF

――大学生のうちからeスポーツのイベントスタッフとして関わってきましたが、将来的にはeスポーツに関わる仕事を目標もしくは視野に入れているのでしょうか。また、希望する場合、学生実行委員会の活動がどのように活かされると感じていますか。

渡邊:eスポーツ業界に入りたいというか、入ります! 内定が決まりました。学生実行委員会に入って、さまざまな経験ができたことも大きいんですが、運営として活動することで、さまざまな人とつながったことが大きな財産になりました。

真木:私は大学3年生なので、これから就職活動に入るわけですが、eスポーツ関連の企業に入りたいと思っています。学生実行委員会に入って気づいたのは、『Shadowverse』が好きで、それをプレイしたいと思う以上に、『Shadowverse』のコンテンツ自体を応援したい気持ちがあること。選手をサポートしたい、『Shadowverse』を盛り上げたいと思えるのは、企業側の視点に立てているからかなと感じます。そういう視点を就職で活かせればといいですね。配信や大会の運営方面を考えています。

――ありがとうございました。

  • 学生実行委員会のメンバーで記念撮影

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2年ぶりに大学生リーグの運営の学生に話を聞いて、かなり学生中心のリーグ戦への舵取りが進んでいると感じました。今後は、技術スタッフや実況解説まで学生で担うようになるかもしれません。

ただし、今回のインタビューで渡邊さんが話ていたように、学生が業界関係者とつながりを作るいい機会であることも確かです。タイトルホルダーであるCygamesは、学生中心になったとしても大会に関わっていくと思いますが、配信や大会運営、実況解説には、オブザーバーとして、何人か残ってほしいとも感じました。

もちろん、大会運営はコミュニティでも経験できますが、大学4年間の活動は「代替わり」などもあるため、短い期間で現場スタッフから運営責任者まで経験できる可能性があります。将来のeスポーツ業界を支える人材がマルチな経験をする場として、今後の活動に期待しています。