調査会社のIDCが公開した最新の市場分析レポート「Global Memory Shortage Crisis」によると、DRAMを中心とするメモリーチップの不足が「一時的な需給のミスマッチ」を超えた形で顕在化し、その影響が2027年まで及ぶ可能性がある。メモリー価格の上昇や部材調達難から、悲観的なシナリオではPCやスマートフォンの価格が最大8%上昇するとの見通しを示した。
PC市場では、Windows 10のサポート終了に伴う買い替え需要が依然として強い。これに加え、業界各社は、比較的多くのメモリーを必要とするAI PCの販売を強化している。こうした状況下でメモリー不足が重なることについて、IDCは「まさに最悪のタイミング」と表現している。
出荷規模の大きい大手メーカーは部材調達において相対的に強い交渉力を持つものの、それでもLenovo、Dell、HP、Acer、ASUSなどが、2026年後半にかけて15~20%規模の価格改定や契約条件の見直しを検討する可能性があるという。ローカルブランドやホワイトボックスPC、自作市場はより深刻な影響を受けやすく、品薄局面では大手へのシェア集中が進む可能性を指摘している。
IDCは現時点で従来の公式予測(前年比2.4%減)を維持しながら、メモリー不足が長期化した場合の2026年の下振れシナリオを示した。影響が比較的軽微な場合でも市場は前年比4.9%縮小し、悲観的なシナリオでは縮小幅が8.9%に拡大する可能性があるという。シナリオの深刻度は現在の供給制約がどの程度続くかに左右される。
こうした下振れシナリオでは、PCの平均販売価格が上昇する可能性も高い。中程度の影響にとどまる場合でも4~6%、悲観的なシナリオでは6~8%の上昇が見込まれるとしている。
スマートフォン市場も例外ではない。メモリーは端末の部材コストに占める比率が大きく、中価格帯モデルでは15~20%、ハイエンドでも10~15%程度を占める。メモリー価格が上がれば、端末価格の引き上げか、メモリー容量の抑制、その両方が迫られる。
スマートフォン市場は、中程度の下振れシナリオで前年比2.9%の縮小、悲観的なシナリオで最大5.2%の縮小となる可能性があるという。平均販売価格は、中程度のシナリオで3〜5%、悲観的なシナリオでは6〜8%上昇する可能性を予測している。
メモリー不足の影響はメーカーごとに異なる。TCL、Transsion、Realme、Xiaomi、Lenovo、Oppo、Vivo、Honor、Huaweiなど、低価格帯市場への依存度が高いメーカーほど影響を受けやすく、「最終的にはエンドユーザーへの価格転嫁を余儀なくされる可能性が高い」と分析する。一方、AppleやSamsungといったハイエンド市場のメーカーは、長期供給契約などによりリスクが一定程度ヘッジされるとみられる。それでも、2026年に投入される新製品では、メモリー容量の増強が見送られる可能性が高いと指摘している。


