プロフォトグラファーや写真館など、写真ビジネス関係者向けのイベント「PHOTONEXT2021」(フォトネクスト2021)が6月15日と16日に神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催されました。プロ向けのイベントですが、例年写真ファン向けの新アイテムがお披露目されることでも知られています。ここでは、そうしたアイテムを紹介しましょう。
前回のPHOTONEXT2020はコロナ禍で開催が中止となり、今回は2年ぶりの開催となります。検温や消毒、換気の実施、セミナーエリアでの距離確保など、さまざまなコロナ対策が行われていました。横浜市と東京都には、主催者から感染症予防対策の資料を提出して、審査・承認されているとのことです。
富士フイルム、写真スタジオに1億画素のGFX100Sをアピール
例年は、大手カメラメーカーがいくつか出展していましたが、今回の出展は富士フイルムのみと寂しい状況でした。しかし、写真の入力から出力まで手掛ける同社らしく、会場でも最大級のブースを構えていました。
カメラでは、ラージフォーマットを採用するGFXシリーズを大きく展開。なかでも、2月に発売された新機種「FUJIFILM GFX100S」を前面に押し出していました。APS-Cセンサーを搭載するXシリーズが機動性に優れる一方、1億画素オーバーとなる本機は集合写真の撮影で1人1人を鮮明に写せることをアピールしています。
ラージフォーマットならではの描写をポートレートで体験してもらうために、GFX100Sの撮影体験コーナーもありました。
Xシリーズのボディとレンズも並んでいました。こちらで人気だったのが、X-Tシリーズの最新モデル「FUJIFILM X-T4」と、4月発売の新レンズ「XF18mmF1.4 R LM WR」です。
ユニークな活用例として、写真撮影後にショートムービーを撮って商材としている写真館の事例も紹介されていました。
富士フイルムのブースでは、自社製の消毒剤「Hydro Ag+」を用意していました。写真フィルムの研究がヒントになり、銀イオンなどを組み合わせた技術を採用しているそうです。手荒れ防止や保湿効果もあるとのこと。
ケンコー・トキナーは、新しいジンバルカメラを展示
多くの製品を展示していたケンコー・トキナーブースですが、まず目を引いたのがZOMAの「MOIN CAMERA」というポケットサイズのジンバルカメラです。
この手の製品は、中国DJIの「Osmo Pocket」や「DJI Pocket 2」が有名ですが、MOIN CAMERAは本体に2.45型とDJI Pocket 2に比べて大きめの表示パネルを内蔵しているのが特徴。スマホでプレビューせずに単体で撮影するなら、大きな画面で確認できるので使い勝手が良さそうです。広角レンズを搭載していて、4K動画の撮影にも対応。近日発売予定で、価格は4万円台前半となっています。
ストロボメーカーGODOXの新製品としては、バー型のLEDライト「Multi-Color TUBE LIGHT」が展示されていました。長さ30cmの「TL30」は色温度に加えて、発光色をフルカラーで可変できるタイプです。三脚と同じネジ穴が空いており、複数のライトをつなげて長くすることも可能。複数のライトを配置すれば、面光源のように使うこともできます。
表示パネルによる分かりやすい状態表示も可能。電源はUSB Type-Cによる充電式となっています。近日発売予定で、価格は1万円台中盤の見込み。なお、60cmの「TL60」も用意されます。
6月に発売されたばかりのストロボ「GODOX AD100Pro」も「発売前から問い合わせが多かった」(スタッフ)という人気アイテムです。出力は100Wsと、クリップオンストロボに比べて格段に大光量というわけではありませんが、付属のアダプターを使えばアンブレラも付けられるほか、スタンドにもそのまま装着できるので、そういった使い方がメインのユーザーはクリップオンストロボよりも使いやすいでしょう。
クリップオンストロボでもほぼカバーできる光量ではありますが、見た目はプロ機そのもの。被写体(クライアント)などの手前で“プロらしい見栄え”になるのもメリットでしょう。価格は4万円前後です。
アナモルフィックレンズや接写チューブなどの新製品も続々
常磐写真用品のブースでは、三脚で知られるSIRUIのミラーレスカメラ用アナモルフィックレンズが展示されていました。アナモルフィックレンズは、16:9のセンサーに映画でよく使われる2.4:1などのワイド画面を圧縮して記録できるレンズです。16:9の画面の上下を切ってワイド画面を実現するよりも高画質になるほか、水平に青い筋が入るのが特徴となっています。
35mmと50mmが発売済みですが、6月末に「24mm F2.8 1.33X Anamorphic Lens」が発売になります。価格は147,400円。対応マウントはソニーE、キヤノンEF-M、マイクロフォーサーズ、フジフイルムX、ニコンZとなっています。なお、2021年夏以降には「75mm F2.8 1.33X Anamorphic Lens」が発売されるとのことです。
続いて、同社がこのほど取り扱いを始めたVILTROXの製品もありました。エクステンションチューブ「DG-EOS R」は、カメラとレンズの間に装着して接写を可能にするアクセサリーです。EOS R用ですが、純正ではまだ登場してないアイテムとあって注目です。電子接点付きでAFも可能となっています。価格は6,000円前後です。
VILTROXではマウントアダプターも多数ラインナップしています。近ごろは、一眼レフカメラ用のレンズをミラーレスカメラに装着するアダプターがよく売れているとのことでした。
高演色タイプのリングライトがテレワークで人気
SAEDAのブースでは、Phottixの新型リングライト「Nuada Ring 10 LED Light Go Kit」(9,980円)が展示されていました。リモート会議などの普及で利用シーンが増えているリングライトですが、本機は演色評価数96+という演色性の高さが売りになっています。演色性が高いほど色が自然に映るため、オンライン会議に加えて、メイクやネイルの動画撮影を行う女性に喜ばれているとのこと。
面白いのが、リング部分が半分に折れて反対側も照らせる点。オフィスなどで対面でオンライン会議に参加する場合などを想定したものだそうです。加えて、持ち運ぶときに小さくなるメリットもあります。色温度は可変式で、電源はUSB給電。スタンドやスマホホルダーも付属しています。
かわうそ商店のフィルムカメラや写真フィルムに熱視線
おもにオンラインで写真フィルムやフィルムカメラの販売などをしているかわうそ商店が出展していました。
2021年に発売して売れ筋だというのが、AGFA PHOTOブランドのフィルムカメラ。35mmフィルムを使用するタイプです。フォーカスや露出が固定なだけに、使い方は簡単。フィルムカメラの入門にも使いやすそうです。スタッフによると、日本だけでなく世界的なヒット商品になっているとのことです。
多くの写真フィルムも展示していました。最近扱い始めたアイテムの一例として、ロシア製の「Silberra COLOR160」を紹介してもらいました。ISO100の35mmカラーネガフィルムで、36枚撮りです(他の仕様もあり)。スタッフによると、国産フィルムとはまた違った発色で、彩度が低いのが特徴だそうです。
ほかにも、普段なかなか目にする機会のないフィルムがたくさん並んでいました。昨今は、フィルムカメラが特に若い人たちの間でブームと言われていますが、こうしたフィルムの違いを味わうのもまた面白そうです。
リアルイベントの重要性を再確認した
カメラ・写真業界に身を置く筆者としては、春の展示会「CP+」が2年連続でオンライン開催になるなどし、リアルイベントの取材は久しぶりとなりました。PHOTONEXT2021もコロナ禍の中での開催ということで、人出はさほど多くないのでは? と思いながら取材に来てみましたが、会場は思っていたよりも賑わっていました。
実際に機材を見たり手に取ったりしながらその場でスタッフと話ができるのは、やはりリアルイベントならではの醍醐味。実際、多くの来場者が熱心に商談するする姿を見ることができました。フォトグラファーなどによるセミナーも行われましたが、こちらは立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。
この1年ほどで、イベントのオンライン化もある程度定着した感もありますが、主催者のプロメディアは「オンラインでの取り組みもしてきたが、なかなか商談まで至らず成立が難しい。出展者側も、わざわざお金を払ってオンラインで参加することにためらいがあるようだ。今後はリアルイベントに注力していく」と話します。
遠方からでも参加が容易といったオンラインイベントのメリットもたくさんありますが、こうしたリアルイベントの存在意義を改めて感じた次第です。