スマホが広く普及したことで、PCとスマホの間でファイルをやり取りしたい機会は増えている。ファイルひとつだけならば、メールに添付して自分宛に送信するという、ケータイ時代から行われている古典的な方法も有効だが、ファイル数が多かったり、またサイズが大きいと厄介だ。
またファイルのやり取りをするのが自分ではなく他人の場合、iOSならAirDrop、AndroidならNearby Shareというスマホの標準ツールが重宝するが、これにしてもiOSとAndroid間では利用できない。オンラインストレージにわざわざアップロードしてURLを共有するのも、ファイル数が少ない場合、やや大げさな印象だ。
こうした場合に使ってみたいのが、ブラウザを使ってファイルを送受信する方法だ。これならば、新たにツールやアプリをインストールしなくとも、ブラウザを搭載するデバイス同士で、OSを気にすることなく、容易にファイルをやり取りできる。容量も無制限(ただしメモリ容量などには影響される)であるほか、サーバ上にファイルが残らないことから、ファイルの流出防止という観点からも優れている。
今回はこうしたブラウザ間でのファイル送受信に特化した技術「WebRTC」を用いたサービスを中心に、5つのファイル転送サービスを紹介する。いずれのサービスも基本的な特徴は同一だが、使い勝手はそれぞれ異なるので、自分が使いやすく感じるサービスを見つけてほしい。
データを複数デバイスへ手軽に送れる「Station307」
「Station307」は、P2Pを利用したシンプルデザインのファイル転送サービス。以降に紹介する他サービスが、デバイス間の経路を作成してからファイルを指定するのに対し、本サービスは最初にファイルを指定してからQRコードまたはURLを発行するという逆の順序になるため、ひとつのファイルを複数のデバイスに配信する用途に使える。ファイルは1つずつ、確認後にダウンロードされる。ターミナルからの操作に対応するのもほかにない特徴。
合言葉の設定でセキュリティ性が高い「WebWormhole」
「WebWormhole」は、WebRTCを利用したファイル転送サービス。QRコードを用いてデバイス間で経路(ワームホール)を作成したのち、ファイルを選択することで転送が実行される。合言葉となるフレーズを指定することで第三者のアクセスを防ぐ機能を備えるが、そのぶん操作はやや煩雑で、ブラウザによる相性も少なからずある。ファイルは1つずつ、確認画面なしで即時転送される。同一ネットワーク上である必要はなく、モバイル回線経由でも利用可能。
複数のファイルをZIP圧縮して送れる「ShareDrop」
「ShareDrop」は、WebRTCを利用したファイル転送サービス。スマホでQRコードを読み取るとブラウザ上にその利用者のアバターが表示されるので、クリックしてファイルを送信する仕組み。他のサービスと違って送受信時に確認画面が表示されるほか、複数ファイルをZIP圧縮して送信する機能も備える。つねに1対1での送信となり、3つ目のデバイスがログインすると、2つ目のデバイスが蹴り出される。同一ネットワーク上以外の、モバイル回線経由でも利用可能。
同じネットワークのデバイスを自動で見つけるSnapdrop
「Snapdrop」は、AirDropライクなファイル転送サービスで、こちらもWebRTCを利用している。UIは前述のShareDropに酷似しているが、同一ネットワーク内のデバイスを自動検出するため、QRコード読み取りが不要なのが利点。その一方、別ネットワーク上での利用には対応せず、外出先での利用には不向き。ファイルはひとつずつの転送で、複数デバイスに順次送信するという使い方もできる。相手にテキストメッセージを送る機能も備えている。
挙動がわかりやすい国産サービス「Real-Time File Transfer」
「Real-Time File Transfer」は、今回紹介するWebRTCベースの転送サービスの中で唯一の日本製サービス。デザインはそっけないが挙動がわかりやすい。QRコードを用いて接続し、ファイルを指定することで転送が実行される。経路はつねに1対1で、相手に強制的に受信させることもできるが、転送完了前に一方がタブを閉じてしまうとその時点で終了となる。複数ファイルであってもひとつずつ転送される仕様。同一ネットワーク上以外の、モバイル回線経由でも利用可能。