カシオ計算機は5月13日、2021年3月期の決算発表会をライブ配信。2020年3月期に続き新型コロナウイルスによる影響を受けたものの、楽器事業は依然として好調を維持。加えて、時計、教育関数、電子辞書事業などが順調に復調とのこと。2022年3月期業績見通しについても言及し、アシックスとの協業「Runmetrix」の展望にも触れた。

  • コロナ禍における在宅時間の増加にともない、自宅で楽しめる趣味として楽器の需要が旺盛。写真は電子キーボード『Casiotone CT-S1

第4四半期にはっきりと復調の兆し

2021年3月期のカシオの連結決算概況は、通期実績では売上高2,274億円(前年比81%)、経常利益163億円(前年比57%)など前年同期には及ばなかったものの、第4四半期実績では売上高610億円(前年比100%)、経常利益47億円(前年比130%)と、直近で復調路線となっている。セグメント内訳を見ると、うち543億円をコンシューマ関連が占めており、前年比も103%。これはシステム関連の売上高53億円(前年比72%)に比べて復調が早い。

  • 第4四半期では、数字は軒並み前年同時期以上に戻している

  • コンシューマの割合が多い上に回復が顕著

第4四半期について事業別の前年比では、時計が104%、教育関数が95%、電子辞書が81%、楽器が135%となっている。コロナ禍の影響が続く中、巣ごもり需要とスリム&スマートな製品展開が追い風となった楽器、そしてG-SHOCKが人気の時計事業がけん引した。

時計においては、海外で自社ECを充実させるための投資や、中国における旧正月以降のECイベントへの投資、海外(アジア新興国地域)でのオンライン発表会の実施などの効果があったという。なお、時計事業の2021年3月期通期実績は1,313億円。

  • 2020年4月はコロナの影響が非常に大きく、比較の参考にならない。むしろ前々年比を参照

時計事業好調の理由としてカシオは、フルメタル『GMW-B5000』シリーズが中国や日本を中心に依然好調なこと。欧州では八角形ケースの『GA-2100』が若者を中心に好調なこと、欧米を中心にワークアウトに最適なG-SQUAD『GBD-H1000』が好評なこと、中国を中心にG-SHOCK WOMEN『GMA-S120MF』が好評、女性ファンが拡大中であることを挙げた。

  • 第4四半期の増収率は前年を上回った

  • 右側に並んだモデル(特にG-SHOCK)が売り上げをけん引した

  • 各エリアとも、自社ECの整備によって販売数が伸びた。実店舗での販売は減少

好材料続々、来期に明るい見通し

2022年3月期計画(連結)としては、通期実績で売上高2,650億円(前年比117%)、経常利益245億円(前年比150%)を目指す。これについて、カシオ計算機 執行役員 広報・IR担当 田村誠治氏は次のように語った。

  • 2022年3月期は、通期で売上高2,650億円(前年比117%)を目指す

  • カシオ計算機 執行役員 広報・IR担当 田村誠治氏

田村氏「想定以上にコロナ影響が継続していることなどを考慮し、計画を見直した部分があるものの、3月にスタートした事業が好調な滑り出しであること。そしてイメージング事業では大手企業との開発受託(エンドポイント小型顔認証ユニット開発受託)が決まったことなど、色々と良い芽が出てきています。そういう意味では、これからの一年はまさに勝負の年という位置付け。積極的な投資枠の増額も行っています」

さらに田村氏は以下のように続けた。

田村氏「この数年間取り組んできた収益体質の改善・構造改革により、ビフォーコロナの水準を十分に狙えます。また前期は、全社最適化の視点でもう一段レベルアップした構造改革に取り組み、外部コンサルタントの知見も活用しながら専門組織を立ち上げ、全社DXの推進による生産改革、営業改革を実施しました。これらの効果が今期から複数年にわたって期待できます」

  • コロナ禍においては10%、アフターコロナでは15%の利益率を確保するという

田村氏の言葉にあった「3月にスタートした事業」とは、アシックスとの協業として運営するランニングの分析&パーソナルコーチングサービス「Runmetrix」を指すと思われる。これを含む新規事業については、2年後の黒字化、かつ以後3年間の創出キャッシュで投下資金を回収するという目標を設定しているとのことだ。

  • 「Runmetrix」は好評。10月には「Walkmetrix」が始動予定だ

キャッシュフローについては、コロナ禍にあっても約250億円の潤沢なフリーキャッシュフローを維持できているという。株主への還元については、業績連動かつ安定配当を重視し、今期は据え置き45円配当とする(期末配当は定時株主総会で決議予定)とのこと。これは、コロナ禍のような有事に備えて手元資金を確保しておくため。ただし、市場の状況に応じて、自社株買いも機動的に検討するとした。

  • 当初はまず安定配当を重視。潤沢なキャッシュフローで有事にも備える

最後に質疑応答の時間があったので、Wear OSを搭載したG-SHOCKスマートウオッチ、話題のG-SQUAD Pro「GSW-H1000」と機能的に重なる部分が多いPRO TREK Smartの後継機は登場するのか聞いてみたところ、田村氏「現時点では、後継機の予定はありません」とのことだった。