コーレルは、傘下の米Parallelsより、Mac上でWindowsなどを動作させる仮想マシン(VM)環境「Parallels Desktop 15 for Mac」を販売開始することを発表した。今秋登場予定の最新OS「macOS Catalina」(10.15)にも対応しており、これまで動かなかったゲームやCAD/CAMも動作するなど、性能や互換性がさらに向上している。

  • 22日都内で発表会が開催された

Parallels Desktopは2006年にIntel CPUを採用したMac向けに最初のバージョンが登場して以来、Mac用の仮想マシンとしてトップシェアを占めてきた製品だ。現在は500万以上のユーザーがParallels Desktopを利用しているという。

最新のバージョン15では、これまでグラフィックAPIとしてOpenGLを使ってきたものが、Appleの「Metal」を採用。これによりグラフィック性能が向上し、仮想環境上のWindowsでDirect X 11が動作するようになった(これまではDirectX 9/10まで)。

これによりDirect X 11対応のゲームが動作するようになり、これまでサポート外だったCAD/CAMアプリにも対応するようになる。さらに、仮想マシンがサポートするBluetoothのバージョンが4.0になっており、Xbox用ワイヤレスコントローラを接続し、Windows 10の「Xbox Play Anywhere」機能を使い、Xbox用ゲームを実機さながらに遊ぶこともできる。

Windows 10用の「Age of Empire」をMacBook Pro(2019)上でプレイ。ウィンドウモードだが動作は実機のPCと見分けがつかないレベルで、非常にスムーズに動作している

Xbox Play AnywhereでXbox用ゲーム「The Turing Test」をプレイ中。AOEと比べると、フレームレートが低いように感じられる

なお、Metal対応によってパフォーマンスが向上したと言えど、実際の表示性能はMac自体が搭載するGPUの性能に依存する。このため、例えばMacBook Air(2015年モデル)で最新のFPSがサクサク動くといったことは起きない。

また、今秋リリース予定の最新macOS「Catalina」に対応。現時点でも公開ベータ版のCatalinaがParallels上の仮想マシンで動作する「ゲストOS」として動作するが、Catalina正式版がリリースされた後には、Parallels自体を動作させる「ホストOS」としてもサポートする(Paralells Desktop 15 Update 1で対応予定)。

CatalinaをホストOSとした場合、同じく今秋リリースされるiPadOS 13を搭載したiPadをサブディスプレイとして利用する「Sidecar」機能にも対応。iPadに仮想マシンを表示したり、Apple Pencilで傾きやTouchサーフェスのダブルタップ機能なども利用できる。Windowsでタブレットモードにした場合はiPadをWindowsタブレットのように利用することも可能だ。

  • iPad上でタブレットモードに設定したWindows 10にApple Pencilで入力するParallelsのカート・シュマッカー氏。古参のMacユーザーならVirtual PCの開発担当者だったのはご存知かと思う

さらにCatalina以降では、Parallelsアカウントのサインインに「Sign in with Apple」(Apple IDでサインインする機能)が利用できるようになる。サービスが増えるたびに複雑化する認証機能をシンプル化できるようになるため、歓迎できる(ゲストOSのサインインには利用できない)。

この他、Microsoft Officeの起動速度が最大80%高速化するほか、macOSのデスクトップから直接仮想マシン上のWindowsのメールソフトにファイルを添付してメールを作成したり、MacでキャプチャしたスクリーンショットをWindowsの画像編集アプリで編集できるなど、MacとWindows間の統合が進んでいる。

Parallels Desktop 15 for Macは、永続ライセンスとサブスクリプションライセンス(1年)に分かれており、通常店舗用パッケージと、Apple直営店専用パッケージが用意されるほか、Parallelsオンラインストアからのダウンロード販売も行われる(Business EditionはParallelsオンラインストアで入手できる)。なお、本バージョンからバージョンアップは過去のどのバージョンからでも利用できるようになった(従来は2つ前のバージョンまで)。

  • Appple直営店用パッケージはひと回り小さな箱になっている。ちなみに毎年バージョンアップするつもりであれば、サブスクリプション版が断然お得だ

Parallels Desktop 15 for Mac(永続ライセンス版)
店頭パッケージ・通常版 9,818円(税込)
店頭パッケージ・生協版 5,891円(税込)
店頭パッケージ・乗り換えアップグレード版(2,000本限定) 7,560円(税込)
旧バージョンからのアップグレード版* 5,204円(税込)
※「*」はParallelsオンラインストアのみの販売
Parallels Desktop 15 for Mac(サブスクリプション版)
Apple直営店専用パッケージ・通常版 8,345円(税込)
Apple直営店専用パッケージ・Student Edition 4,968円(税込)
Parallels Desktop 15 for Mac Pro Edition(サブスクリプション版)
店頭パッケージ・1年版(新規・更新ライセンス) 9,818円(税込)
Apple直営店専用パッケージ・1年版(新規・更新ライセンス) 9,818円(税込)
旧バージョンからのアップグレード版* 5,204円(税込)
※「*」はParallelsオンラインストアのみの販売

また、発表会ではユーティリティ集である「Parallels Toolbox」の最新バージョン3.5.0も紹介された。Mac版は30種類以上、Windows版も20種類以上のユーティリティが収録されている。Parallels Desktopの永続ライセンスユーザーには3カ月分のライセンスが提供されるほか、サブスクリプション版ユーザーには1年分のライセンス(2,299円相当)が含まれる。

  • 新機能の一つ、クリップボードの履歴機能。過去にコピーした内容を最大1カ月保持して再利用できる