2018年も残すところあとわずか。スマートフォン業界でも、この2018年は大きなトピックが相次いで登場しました。本企画では、2018年に巻き起こったスマホ業界の大きなトピックを、Q&A形式で紹介。携帯電話に関連した幅広い分野で活躍するフリーライターの佐野正弘氏が、概要や背景をわかりやすく解説していきます。

それでは、2018年のスマートフォン業界を振り返っていきましょう。今回はスマートフォン本体にまつわるトピックを紹介する「端末編」です。


トピック1:今年出たiPhone、どうしてこんなに高いの?

2018年9月12日(米国時間)にアップルのスペシャルイベントで発表されたiPhone XSとiPhone XS Max、そしてiPhone XR。いまだ注目度の高いiPhoneですが、アップルの日本版サイトやキャリアで価格を見て、驚いた人も多かったのではないでしょうか。

毎年大きな注目を集める、アップルのスマートフォン「iPhone」の新機種。2018年に発売されたiPhone新機種は、いずれも2017年に投入された新機軸の「iPhon X」の系譜を継いだ「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」の3機種でした。しかしその価格は、最も安いiPhone XRでも8万円以上、iPhone XSやiPhone XS Maxに至っては全てのモデルが10万円を超えるなど、端末価格の高さに驚いた人も多いかと思います。

  • iPhone XS(右)とiPhone XS Max(左)

    Apple表参道に並ぶiPhone XS(右)とiPhone XS Max(左)

3機種はいずれも最新のCPUを搭載しており、iPhone XS/XS Maxは大画面の有機ELディスプレイや高い性能のデュアルカメラを備えるなど、価格相応の非常に高い性能や機能を備えているのは確かです。しかしながらなぜ新機種が全て高額なのかというと、そこにはアップルの戦略転換が大きく影響しています。

というのもアップルは、iPhoneの販売を新興国にも広めて販売台数を増やす戦略から、先進国や富裕層に向けた高額・高付加価値モデルに力を入れ、利益を高める方針に切り替えたようなのです。アップルが2018年11月に発表した決算で、iPhoneの販売台数を非開示にしたことが、そのことを象徴しているといえます。

そうしたことから今後、iPhoneの価格が安くなることはあまり期待できないでしょう。分離プランの導入の影響もあり、最新のiPhoneを買いたいという人にとって、今後はお財布に厳しい時代が来ることになりそうです。

トピック2:iPhone SEはなぜ発表されなかったの?

2016年3月に登場したiPhone SEは、小型サイズのかわいらしさと、お手頃な価格でファンの多い人気モデル。9月のスペシャルイベントで後継機の発表を望む声もありましたが、結局この2018年も新モデルは投入されず、オンラインの「Apple Store」からも姿が消えてしまいました。

4インチディスプレイを搭載し片手で画面の隅々まで操作できるコンパクトなサイズ感ながら、iPhone 6sと同等の性能を備える高い性能で人気となった「iPhone SE」。ですが発売から既に2年が経過し、古くなってしまった感は否めません。

  • 4型液晶の小さいサイズが魅力のiPhone SE。今はリアル店舗の「Apple Store」をはじめとしたApple製品取扱店やMVNOで販売している

それゆえ今年、iPhone SEの後継機が登場するのでは……? という憶測報道が多くなされたのですが、結果として発表されたのは、いずれも6インチ前後の大画面を備えたモデルのみ。コンパクトなiPhone SEは発売されず、落胆した人も多かったようです。

その理由は、やはりアップルの戦略転換にあります。多くの人が「iPhoneのコンパクトモデル」と思っているiPhone SEですが、実はアップルにとって、iPhone SEは旧機種の「iPhone 5S」のボディを活用することで開発・製造に係るコストを抑え、新興国での販売拡大を狙った低価格モデルという位置付けだったのです。

しかしながら新興国の人にとってはiPhone SEでも価格が高く、より価格が安くて性能が高い中国メーカーにシェアを奪われてしまいました。アップルが高価格のモデルだけを販売する戦略に切り替えたのにはそうした背景があるわけで、このことを考えれば今後、iPhone SEの後継となるコンパクトモデルが出る可能性は限りなく低いと言わざるをえません。