公的資金による研究開発プロジェクトに関して「女性であることが採択に不利になる」と感じた女性研究者は16%で、応募しても採択されなかった女性研究者だけではその比率は38%に上るが、男性研究者でそう感じてる人はわずか2%-。公的資金研究開発プロジェクトをめぐるこうした女性研究者の意識や男女間の意識の違いが、科学技術振興機構(JST)ダイバーシティ推進室によるアンケート調査で浮き彫りになった。日本の女性研究者比率は先進国中でも目立って低く、現行の「第5期科学技術基本計画」では研究者新規採用の女性比率を30%に上げる数値目標を掲げている。JSTはさまざまな研究開発プロジェクトへの女性の参画推進策を検討、実施しているが、今回の調査結果はこうした作業に役立ちそうだ。

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    グラフ1 「女性であることが不利」と感じる層を見ると、男性が思う以上に女性は「女性であることが不利」と感じている(提供・グラフ説明/JST)

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    グラフ2 男性が思う以上に女性は「人脈中心に採択されている」と感じている。男女とも男性中心で女性が応募しにくいと感じている(提供・グラフ説明/JST)

JSTのダイバーシティ推進室は「研究開発プロジェクトのダイバーシティを進めるために」と題した研究者意識調査を実施。回答を寄せた男女研究者合わせて約1260人(男性約760人、女性約500人)を対象に分析した。回答者の年代別では40代が約34%、30代が約31%、次いで50代が約24%などだった。所属別では国公立大学が52%と一番多く、次いで私立大学が15%、国立研究機関等が11%など。職制別では教授が21%、准教授が19%、助教が15%、ポスドクが8%などだった。

14の設問のうち、「公的資金による研究開発プロジェクトに関し、女性であることが採択に不利になると感じたことはあるか」との問いに対しては半分以上の58%が「分からない」と答え、「ない」は34%で、「ある」の8%を大きく上回った。しかしこれを男女別でみると、女性研究者の16%が「ある」と答え、女性研究者の中でも「研究開発プロジェクトに応募したが採択されていない人」だけをみると、38%が「ある」と答え、「ない」とした35%を上回った。一方男性研究者では「ある」と答えたのはわずか2%、「ない」は41%で、この設問に関しては男女間の意識にはっきりとした違いがみられた。

「女性は不利」と感じたことがある、と回答した人を対象にその理由を複数回答で聞いたところ、回答数約230のうち、「人脈中心に採択されていると感じるため」を選んだ人が一番多くその比率は29%(女性だけでは32%)だった。次にいずれも21%だった選択肢は「審査委員に男性が多く、女性が適正に評価されないと感じるため」(同22%)と「女性の採択実績が少なく、男性中心のプロジェクトと感じるため」(同21%)。「出産・育児等への対応で十分に研究ができるかについて審査委員が不安視するため」を選んだ人も15%いた。

このほか、「公的資金による研究開発プロジェクトで『女性枠』を設ける」に対する賛否を聞く設問もあった。結果は、反対が43%、賛成が30%で反対の方が多かった。男女別でみると、男性は賛成21%、反対55%と過半数が反対していたが、女性は44%が賛成で、反対の25%を上回った。

今回の調査回答や調査結果に対してはさまざまな研究機関の採択側からは反論、異論もあると思われるが、こうした調査は珍しく「意識の実態」を示す貴重なデータ。詳しい調査結果は14日に東京都千代田区一ツ橋の一橋講堂で開かれるシンポジウム「女性研究者と共に作る未来」(主催・JST、後援・文部科学省、下記「関連リンク」参照)で、JSTの渡辺美代子副理事(ダイバーシティ推進室長、日本学術会議副会長)が「競争的資金に関する意識調査」と題した講演の中で説明する。

女性の活躍推進については男女共同参画基本計画(2015年から第4次)の下に関連施策が進められ、女性研究者についても文部科学省や内閣府などが環境整備などを行っている。しかし、JSTによると、女性研究者比率は17年調査で依然約16%と低水準。オランダの学術出版社エルゼビア社が昨年行った調査によると、学術論文を2011年から5年間に発表した研究者のうち女性が占める割合比較で日本は20%で、調査対象12カ国・地域で最も低かった。

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