既報の通り、ASUSは米ラスベガスで開催中のCES 2017に合わせて、GoogleのARプラットフォーム「Tango」と、VRプラットフォーム「Daydream」に対応したスマートフォン「ZenFone AR」と、デュアルカメラを搭載した「ZenFone Zoom」を発表した。

ASUS 会長のジョニー・シー氏

製品発表会には、ASUS 会長のジョニー・シー氏が登場し、おなじみの軽妙な語り口で、両デバイスの機能をアピールした。

世界初のTango/Daydream対応スマホ「ZenFone AR」

ZenFone ARを披露するシー氏

「ZenFone AR」はTango/Daydreamという2つの技術に対応したスマートフォン。Tangoは、GoogleのAR(Augmented Reality:拡張現実)向け技術で、現実世界の空間、人/モノの動きをデバイス内に取り込んで利用する。レノボが2016年11月に国内で発売した6.4型ファブレット「Phab2 Pro」にも搭載されている。

Tangoを利用したアプリケーションの一例。リビングなど部屋の映像を取り込んで背景とし、椅子やテーブルといった家具のオブジェクトを表示させることで、部屋に合うかどうか、サイズ感などを確認できる

家具の通販アプリや、ものの長さを測るユーリティアプリなどがすでに提供されている

一方のDaydreamもGoogleが進めるVR(Virtual Reality)プラットフォームで、ゴーグル型ヘッドセットに装着してVRが利用できる。こちらはGoogleの「Pixel」やモトローラの「Moto Z」などが対応を表明している。シー氏によるとTangoとDaydreamの両対応スマートフォンは、「ZenFone AR」が世界初になるという。

VRヘッドセットでよくある2つの画面が表示される

スマートフォンをゴーグル型ヘッドセットに装着し、VRコンテンツを体験できる。写真内のヘッドセットはGoogleが提供するDaydream Viewで、付属のコントローラで操作する

YouTubeをはじめとする動画配信やニュース系、ゲーム系などのアプリで対応が予定されている

まず、Tangoを実現するにあたり、「モーション・トラッキング」「深度認識」「エリアラーニング」といった周囲の環境をマッピングするセンサーやカメラを備える必要がある。ASUSではこれについて「TriCam System」と呼ぶ3つのカメラを実装する。ソニー製イメージセンサー「IMX318」による2,300万画素のアウトカメラに加えて、モーション・トラッキング用カメラや深度認識を行う赤外線カメラを搭載する。

Tangoを実現する要素。「モーション・トラッキング」「深度認識」「エリアラーニング」

「TriCam System」と呼ぶ3つのカメラで実現する

実機の背面。メインのカメラに加えて、モーション・トラッキング用カメラや深度認識を行う赤外線カメラを搭載

ディスプレイサイズは5.7型。高い没入感を実現するために有機ELを採用する。プロセッサはQualcommのSnapdragon 821を搭載。ASUSのイベントの前日に、Qualcommが次期SoCである「Snapdragon 835」を発表し、VRやARなど「没入型体験」を向上させるとアピールしたが、「ZenFone AR」では採用されていない。ただし、ZenFone ARのSnapdragon 821は、QualcommやGoogle協力の下、Tango向けに最適化されたものだという。GPUにはAdreno 530を統合する。

5.7型サイズの有機ELディスプレイを採用。サイドのベゼルはかなり細い。解像度は2,560×1,440ドットのWQHD。コーニングのGorilla Glass4により保護する

背面は革のような質感

シー氏で文字が隠れてしまっているが、Snapdragon 821の下に"for Tango"と続く。また、最大8GBの大容量メモリや蒸気による冷却システムについても紹介されている

ARやVRといった高いパフォーマンスが必要とされる用途の場合、発熱への対策が必要となる。ZenFone ARでは、蒸気による冷却システムを採用し、チップを冷却する。また、メモリは最大8GB、ストレージは最大256GBで、ASUS製スマートフォンでも最大クラスの容量だ。展示用のデモ機のメモリは6GBとなっていた。会場のスタッフに聞いてみると、メモリやストレージの違う複数ラインナップを用意する予定とのことだった。

展示用デモ機のメモリは6GB。6GB/8GBの複数モデルを用意するようだ

発表会には、Googleのジョニー・リー氏が登場し、Tango対応アプリのデモを披露。画面上のマネキンにGAPのウェアを着せ、フィッティングをチェックできる様子や、AR向けゲームを紹介した。

ジョニー・リー氏

GAPが提供予定のアプリで画面上のマネキンにGAPのウェアを着せ、フィッティングをチェックできる

「ZenFone AR」は、2016年第2四半期の発売を予定。価格は明かされなかった。

ASUSの発表会では、最後にシー氏が価格を高らかに宣言するのが恒例なのだが、今回は発売時期を述べただけ

デュアルカメラや最大12倍のズーム対応の「ZenFone 3 Zoom」

ZenFone 3 Zoomを披露するシー氏

「ZenFone 3 Zoom」は、背面に1,200万画素のメインカメラと望遠カメラを搭載した5.5型スマートフォン。焦点距離は、メインカメラが35mmフィルム換算で25㎜、望遠カメラが56㎜で、メインカメラから望遠カメラに切り替えることで、2.3倍まで拡大できるほか、最大で12倍までのデジタルズームにも対応する。さらに、今後のソフトウェアアップデートで、背景をボカした写真が撮影できる「ポートレートモード」を追加するという。

ZenFone 3 Zoomは5.5型の有機ELディスプレイを搭載

背面に広角のメインカメラと望遠カメラを搭載する

搭載カメラのまとめ。イン側にも1.300万画素のカメラを備える。メインカメラとインカメラはソニー製センサーを採用

レンズの切り替えはシャッターボタンに近いところの「1x」「2.3x」をタップする。iPhone 7 Plusと同じ仕組みだ

デジタルズームは最大12倍まで

背景をボカした写真が撮影できるポートレートモードも今後提供する

ISOの調節やノイズリダクションを行うことで、より鮮明な写真が撮影できる「SuperPixel」技術に加え、3種類のフォーカス技術(レーザーAF/像面位相差AF/コンティニュアスAF)を合わせた「TriTech AF」をデュアルピクセルセンサーで強化した「TriTech+AF」を搭載。暗所でもより速いフォーカスを実現するという。このほか、カメラ機能として、マニュアルモードやRAW形式をサポートする。

ISOの調節やノイズリダクションを行うことで、より鮮明な写真が撮影できるという「SuperPixel」

「TriTech AF」を強化した「TriTech+AF」を搭載

このほか、特筆すべきは5,000mAhの大容量バッテリーを搭載する点。カタログ値では、待受時間は最大42日、最大通話時間は3Gで48時間、Wi-Fiでのブラウジングは最大25時間。また、最大6.4時間まで、4K解像度の動画撮影も可能だという。大容量バッテリーを搭載する一方で、本体の厚さを7.9㎜、重量を170gに抑えている点も注目だ。

5,000mAhの大容量バッテリーを搭載

一方で厚みを7.9㎜に抑えている

プロセッサはQualcommのSnapdragon 625、メモリは最大4GB、ストレージは最大128GB。4G/3GのDSDSに対応する。発売時期は2017年の2月を予定。価格はこちらも非公開。

発売時期は2017年の2月