MacとiPhone・iPad向けのアプリストアが別々に用意されている点は、ユーザーにとっては分かりやすい側面もある。また、Mac、iPhone双方のアプリの価格を低く抑える効果もある。加えてアプリストアが融合しないことは、優秀な小規模開発者の有料アプリを育てる側面も少なからず理由としては存在していた。

例えば、UlyssesやiA Writerといった、筆者が愛用しているシンプルなMarkdownエディタは、MacとiPad/iPhone向けにそれぞれにアプリをリリースしている。いずれも、iCloudで同期することができ、Macで書いていた原稿をiPadに引き継ぐ、といったHandoff機能も利用できる。これらのアプリの存在が、筆者のiPad Proへの移行を助けてくれた。

Mac版(上)/iOS版のUlysses

こうした優秀な有料アプリは、Mac向け・iPad/iPhone向けのそれぞれに課金して提供している。Ulyssesの場合、Mac向けで44.99ドル、iPad/iPhone向けで24.99ドルを支払うことになる。両方とも購入すれば、およそ70ドル、8,000円ほどの出費になる。

もちろん、Mac向け、iPad/iPhone向けのそれぞれに開発リソースはかかるし、その手間は別のアプリを開発する前提でとららえた方が良い。しかしアプリのコンセプトや機能については共通化して考えることができ(むしろそれをユーザーは期待している)、ゼロから新たなアプリを考え出すよりもはるかに効率的に開発を行えるだろう。

仕事に使う生産性のアプリは、おそらくMacにもiPadにも揃えて環境を構築するはずだ。その際、各プラットホームそれぞれから、開発者は収益を上げられるのだ。

1つのアプリをプラットホーム別に開発し、1人のユーザーからそれぞれの収益を上げられるなら、アプリが当たれば、非常に効率的に収益を伸ばせる。こうしたビジネスモデルは、優秀な開発者のアプリを成長させ、持続性を高め、結果としてユーザーのメリットをもたらしている。