開発者も、Siriを活用できるようになるか

iOS 9のSiriでは、「昨年9月の写真を見たい」「大学を卒業する頃のヒットチャートを聴かせて」といった要望も実現する。

背後には、Spotlightが自然言語による検索条件の解読を行い、写真アプリやミュージックアプリが複数のインデックスによる検索を行えるようになっていることから、実現されている。

単なる情報検索だけでなく、条件を設定した命令を行うこともできる。WWDC15で示された例は、iPhoneを自動車に接続したときに、クルマの天井のコーヒーを取り忘れないように、というリマインダーの設定だ

これまで、SiriはAppleのみが知識や機能を与えてきた。しかしiOS 9以降、その方針は変更されそうだ。

前述の通り、SiriはSpotlight検索と密接に結びついている。その検索候補には、サードパーティーのアプリの情報を活用したり、アプリのコンテンツに対するディープリンクを設定することができるようになっている。

検索APIの紹介において、WWDC15のスライドでは、Spotlight検索で「Maui」(ハワイの島の名前)を入力すると、旅行予約アプリのKAYAKで、サンフランシスコ(おそらく今自分がいる場所の最寄りの空港)からマウイ島までの飛行機の便を、候補に挙げていた。

Siriと組み合わせて活用が進みそうなのが検索に関するAPI。天気やスポーツの結果の他に、Appleが提供するメールやメッセージ、連絡先、写真、ミュージックの他に、サードパーティーアプリもサポートする

検索APIの使用例。Mauiと入力しただけで、サンフランシスコからマウイ島までの飛行機の便を、旅行予約アプリKAYAKを使って提案してくれている

SiriがSpotlight検索の情報を活用するならば、サードパーティーアプリの中にある情報を、Siriの返答として提供できるようになるはずだ。つまり、開発者のアプリが、Siriに対して、情報提供できるようになることを意味する。

もちろん、実際にSiriから様々なアプリの情報を利用できるようにするには、アプリ開発者側の対応が求められる。しかも、ただアプリがAPIをサポートするだけではなく、どのような質問が投げかけられるか、どのような返答とディープリンクを返せば便利か、といった調整が必要になるだろう。

特に、ユーザーの情報を多く保存しているサービスほど、便利に働くはずだ。筆者があらゆる書類やメモを保存しているアプリ「Evernote」で、「パスポートの更新についてのメモ」や「今日が締め切りのToDo」といった検索から、ノート単体やノートのリストが出てくると便利だろう。

できれば、指示語だらけの命令、「あのとき保存したアレ」みたいなニュアンスで、「これですか?」と提示してくれるとうれしいのだが、さすがにそれは当分実現されないだろう。ただ、Siriが取り組もうとしている未来像もまた、ニュアンスに答えられるようになることかもしれない。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura