30秒以内に着脱が可能なアシストスーツ「AWN-02」

そうした中で今回披露されたAWN-02は、物流現場などにおける重量物の上げ下ろしや左右への移動といった動作が大半を占める荷役作業において、腰の負担軽減を目的として開発されたアシストスーツだ。研究用のPLL-01から上体(体幹)の曲げ伸ばしを補助する機能のみを取り出したもので、上体の動きを位置センサで検出し、同サイトに合わせて腰部に2つあるサーボモータを駆動させることで、荷役作業時の腰への負担を軽減するというものだ。ちなみにモータ内のギアは樹脂製だという。

アシストスーツといっても種類はいくつかあるが、AWN-02はリュックサックのように背負って装着する(30秒以内に着脱が可能)という、アシストスーツの中では最もシンプルな構造で結果として軽量なタイプである。太ももと上体を支えて、結果として腰部をサポートするというわけである。またフレームの構成はパイプ形状を使うことで、デザインと機能の両立を目指しているという。

アシスト力は15kgf(腰ではなく両脚へのアシスト力)。ただし腕のアシストはないし、脚も太もも部分にアシストがあるのみなので、単純に持ち上げたい物が15kgも軽く持ち上げられるというわけではない。腰にかかる負担が軽くなるものなので、イメージとしては両膝に手を突いてよっこいしょと上体を起こすような感じで、自分の上半身の重さが15kg軽くなっているという具合だ。

バッテリの駆動時間は、1時間に125回の持ち上げ作業を行ったとして約3時間。お昼の休憩時と、午後は3時頃に2回の交換という感じだ。現在の重量はバッテリを除いて7kg強ということだが、製品化した際は7kg以下を目標としている。7~8kgというとかなり重そうで、脚にも負担がかかりそうな感じだが、重心位置やバランスなどを工夫しているため、自分で装着してみた際は背負っている感はもちろんあるものの、とても7kgもあるとは感じなかった。

またサイズに関してはこのプロトタイプはSとLの2種類があり、使い分けることでおおよそ150~180cmの身長に対応(筆者は182cmだが、肩幅の関係で上部のベルトが1カ所だけ留められなかったが、装着はできた)。サイズはハーネスの長さが変わる形で、製品版はMサイズも検討しているという。極力ほかのパーツは共用とすることで、コストダウンを実現するとしている。

AWN-02のモードとしては、かがんだ上体から物を持ち上げる際に身体を起こす時の(上体が引き上げられる)「アシストモード」、歩行を自然に行える「歩行モード」、そして中腰の姿勢を維持できる(上体が保持される)「ラチェットモード」の3種類があり、すべて装着者の姿勢や動作でソフトウェアが自動的に判断し、シームレスにモードが移行する仕組みだ。AWN-02は、重い物を軽く持てるようになるという効果ももちろんあるわけだが、それよりも中腰での荷役作業で腰を痛めないようにするという狙いの方が目的として大きいという。

筆者も実際に装着させてもらい、飲料水の2リットルペットボトル6本入りのケース(12kg強)を持ち上げてみた(画像11・12)。先程もいったように、腕部がアシストされているわけではないので、腕の力は必要だが、上体を起こす時に自分の上半身の体重+12kg強からおおよそ15kg分引かれているという具合で、その分楽になっている感じだった。

なので、持ち上げて運ぶ作業よりも、中腰姿勢の維持したままの長時間の作業を行う際に、上体が上につり上げられるよう感じるので、腰を長時間曲げたままでいる辛さが軽減される形だ。もちろん、実際の荷役作業に従事して何時間も続ければ、さすがに疲れては来ると思うが、同じ時間なら疲れ方が少ないし、同じぐらい疲れるまでにはより長い時間作業できるというわけである。

画像11(左)・画像12(右):15kgfのアシストがあるのだから、12kgは軽々持ち上げられるかというと、決して腕のアシストがあるわけではないので、使う腕力自体は変わらない。腰にかかる負担が減るのである。

ちなみにAWN-02は現在、実証実験も行われており、辰巳商會(大阪市)における倉庫業務での様子も紹介された(画像13)。正直な話、体力仕事のため、動きづらくなることや夏場などは暑くなるということもあるため、最初は装着が嫌がられるそうだが、1度体験すると、特に腰を痛めている人は非常にありがたがっているという。実際に1日つけて作業すると、腰への負担が全然違うそうである。なおこの9月からは、福井県内の農家と連携した農業用途での実証実験も開始する計画だ。