電気実験キットの「学研電子ブロック」がiPhoneアプリになって登場した。電子ブロックと言えば「学研」のイメージが強いが、電子ブロック機器製造が1964年に発売したDRシリーズが最初である。1972年に競合製品のマイキットを発売していた学研と提携して「学研電子ブロック」となり、1986年に生産が中止されるまで20年以上に渡って子供たちから親しまれた。中でも1976年に発売された「学研電子ブロックEX-150」は、48のブロックを組み合わせて150種類もの実験を実現した人気商品で、2002年に大人の科学シリーズで復刻版が発売されたほどだ。

左は「学研電子ブロックEX-150復刻版」(1万290円)。右は学研からリリースされた「学研電子ブロック for iPhone」で、450円の期間限定価格で販売中

とにかく電子ブロックはすごかった。抵抗やトランジスタ、コンデンサが組み込まれたブロックを組み替えることにより、ラジオやモールス練習機、うそ発見機なんていうものまで作れてしまう。しかもEX-150の本体には、メーターやダイヤル、ICアンプ、Cds(光によって電気抵抗が変化するパーツ)などが装備されており、広告の写真を見る度にそのカッコ良さに興奮したものだ。しかし、EX-150は当時で1万3,000円という非常に高価なオモチャで、お金持ちの子供しか買うことができない憧れの高級玩具だった。当時、近所の裕福な家庭の子が自慢げに見せてくれたのを覚えている。

2002年に大人の科学シリーズで発売された「電子ブロックEX-150復刻版」の外箱。1976年発売当初は1万3,000円だったので復刻版は3,000円弱安い価格で販売された

EX-150は、6列×8行=計48個のブロックを差し込むことができる。ハンダを使用せずにさまざまな実験ができるというアイデアが子供達の心を捉えて離さなかった

各ブロックには、抵抗、トランジスタ、コンデンサ、コイル、トランス、ダイオード、パイロットランプなどが組み込まれており、組み替えることで何度も使用できる

EX-150復刻版は1万290円と少しだけリーズナブルな価格で販売されたが、「欲しいなあ~」と思いながら買いそびれている読者もいるだろう。復刻版はすでに販売終了となっているが、「学研電子ブロックEX-150 新装版」(1万2,180円)、「学研電子ブロックDELUXEパック210」(1万8,375円)「学研電子ブロックEX-150 復刻版:拡張キット光実験60」(6,195円)は現在でも販売されているので入手は可能だ。しかし、やはり1万円以上の出費になるので、とりあえず雰囲気を楽しむのであれば、450円(期間限定)で購入できる「学研電子ブロック for iPhone」という選択肢もある。

気軽に楽しめる「学研電子ブロック for iPhone」。最初に表示されるのが、縦長の「操作モード」画面(右)。まだ、ブロックが配置されていない状態なのでスイッチ等の操作はできない

iPhone版の画面は、何となくEX-150のイメージに似ているが、電源スイッチとスピーカー、ラジオインジケータ同調ボタンがあるのみで配置できるブロックは24個と少ない。おそらくST-100あたりに近いように思われる。現在用意されているブロックレイアウトは「電球点灯」「LED1個点滅」「LED2個点滅」「ブザー」「トランジスタ検波1石+ICラジオアンプ」「ダイオード検波1石+ICラジオアンプ」の6つのみとなっている。

ブロックを並べるのは横長の「組み立てモード」で行なう。このモードでは、回路の選択(左)回路図の表示(右)ができる

基本的な操作は選択した回路図と同じ回路を作るためにブロックを画面上に配置していくだけだが、実物と大きく異なるのは回路図ごとに使用できるブロックが指定されており、さらにブロックの向きを変えられないことだ。また、自分でオリジナルの回路を作る機能もないので、電気実験アプリというよりも一種のパズルゲームと言ったほうがいいかもしれない。

決められたブロックで回路を組み立てるのは結構難しい。レイアウト表示をオンにすれば簡単だが、単にブロックを並べるだけの作業になってしまい、まったく面白くない。頭をひねりながら苦労してブロックを配置することにこのアプリの楽しさがあると思う。物理的な実験ができる実物の電子ブロックとは違うが、「トランジスタ検波1石+ICラジオアンプ」はインターネットラジオが流れるギミックになっており、チャンネルも変えられるのでそれなりに感動する。

レイアウト表示がオフの状態。回路図を参考に右に表示されたブロックを指でドラッグ&ドロップして並べて行く。実物と違ってブロックに余りが出ることはない

パズル的な要素が強いので正解に至るにはかなりたいへんだが、レイアウト表示をオンにすると面白さがまったくなくなるのでヒントとして利用したほうがいい

LEDが1つ点滅する「LED1個点滅」回路が完成した状態。右下の画面の「モード切り替え」アイコンをタッチすると縦長画面の操作モードに切り替わる

「LED1個点滅」回路の電源スイッチをオンにするとLEDが組み込まれたブロックの1つが点滅する

「トランジスタ検波1石+ICラジオアンプ」回路ではインターネットラジオを聞くことができる

電源をオンにした状態で「組み立てモード」に変更しようとすると電源を切るように促される

現在のバージョンでは「ちょっと遊ぶ」ぐらいの内容だが、追加の回路図などが用意されると面白さは増すと思う。また、ブロックの向きが変更できたり、余分なブロックが使用できるようにれば、さらに本物の雰囲気に近づくのではないだろうか。ただし、iPhoneの画面サイズでは操作に限界があるので、iPadでないと実現できないかもしれない。

対応モデルは、 iPhone、iPod touchおよびiPad互換、OSはiOS 4.1以降、ジャンルは教育、アプリサイズは14.9MB、対応言語は日本語、執筆時のバージョンは1.0。

なお、電子ブロックの開発元である電子ブロック機器製造からは、「バーチャル電子ブロック」というパソコンを使用してオリジナル回路を組むことができる本格的なソフトが9,800円でリリースされている。こちらは本物の電子ブロックをシミュレーションする目的で開発されており、外部インタフェースも別売で用意されているので実際の実験ができる。Windows 95/98/98SEで動作するお試し版も用意されているので興味のある方はダウンロードしてみてはいかがだろうか。