富士通 - CNTとグラファイトによる多層配線

富士通/富士通研究所のブースでは、「カーボンが創り出すナノエレクトロニクスの世界」として、カーボン素材を用いた「配線技術」「実装・放熱技術」「トランジスタの応用技術」「合成技術」についての紹介を行っていた。

中でもCNTによる層間配線技術は、微細化によって生じるCu配線のエレクトロマイグレーションなどのさまざまな問題の解決策になる可能性があり、研究が続けられてきており、2005年には450℃の熱CVDを用いて2μmのビアホールでCNTを成長させることに成功している。

300mmウェハ全面にCNTを成長させたもの

では、現在はというと、2008年にはCVDの温度を365℃まで引き下げることに成功したほか、ビアの大きさも160nmまで小さくすることができたという。

これは、「従来用いていたCoナノ微粒子に鼻薬を加えることで温度の低下を実現した」とのこと。具体的なことを聞いたが、触媒的なものを追加使用するのか、Coナノ微粒子と混ぜ合わせて使用するのか、などについては明らかにされなかった。

この成果については、「温度については問題なくなったが、他の部分に改良の余地がある」とのことで、今後はCNTの高密度化を目指すという。具体的には、160nmのビアで現在100本弱程度のCNTの本数を「300とか500本といった数百本クラスまで引き上げる」ことを目標とするという。数値データとしては、現状が1011-1012/cm2(本)であり、ここから1桁引き上げることを目標とするという。

実際に、ベストケースでは超えられることが確認できており、「そうしたケースから何をどうやったかの解析を行うことで、均一性などを向上させていく」という。

また、これまでは縦の配線の話であったが、横配線についてもカーボンを用いて実現しようという試みが始まっている。

従来の考えでは、ビアの上にコンタクトブロックと呼ぶブロックを置き、その側面にCNTをつけることで、横向きにCNTの成長を図っていた。そのほか、ファンデルワールス力を用いる方法なども検討されてきたが、同社らは「最近、グラフェンを活用する技術を開発した」という。これは、縦のCNTと横のグラフェンを同時に成長させる技術で、「同じカーボン同士のため、プロセスの整合性も良いし、将来必要となる技術と考えている」とのこと。

コンタクトブロックを用いた場合の配線層へのCNT適用のイメージ図

そのグラフェンを横配線に用いる技術はというと、「光電子制御プラズマCVDによるグラフェン配線の形成」という名称で別に紹介されている。

このCVD方式は、基板が吸収した光により発生する光電子を用いてプラズマを起こしてCVDを行うというもの。触媒金属が不要で、LSI配線の層間絶縁膜上に直接CVDを行い成膜できる。プラズマの発生位置に特長があり、「表面局所プラズマ」と呼ばれる小型のプラズマが基板表面(高さ3mm程度)のCVDを行う場所のみに発生する。そのため、通常のCVDで起きるススがチャンバ内壁についてしまい、メンテナンスが面倒、といった手間は軽減できるとのこと。

光電子制御プラズマCVDで生成されたグラフェンのパターン

光電子制御プラズマCVDの概要

ちなみに、同CVDを用いたグラフェンの成長速度は10mm×5mmの基板で毎分1μmを達成したが、3インチウェハでは30分で数10μm程度としている。

グラフェンを3インチウェハの全面に成長させたもの

CNTとグラフェンによる配線技術については、Cu配線以上の信頼性を実現できる可能性が高く、「今後は、そうした信頼性をアピールポイントにできるような証明を行っていきたい」としている。