ドラッグ操作によるマップ移動やスムーズな拡大・縮小など、通常のスマートフォン向けアプリよりはるかに使いやすいと評判のiPhone版Google Map。疑似GPS機能とピン指定機能の搭載によりこれまで不満だった点がほぼ解消され、地図ツールとしては申し分ないものとなった。これまではGPS機能がないために現在位置を特定することが難しく、また正確な住所や目標となるランドマークがない限り、周辺の情報検索や目的地までのルート検索を行う手段がなかった。Jobs氏のキーノートでも登場したGoogleとSkyhookの携帯/無線LANアンテナ探索技術を用いることで疑似GPS機能を再現し、自ら地図上にピンを打ち込むことで住所情報なしにルート検索が行えるなど、より完成品に近付いたといえるだろう。

今回一番改良されたGoogle Map。画面下のメニューが大きく変更されていることがわかる。左下のスコープ状のボタンを押すと現在位置を検索し、地図上におおまかな位置をスコープで表示する。いろいろ歩き回ってみたが、驚くほど正確だ

だが無線LANホットスポットが検出できない状態だと、同じ場所でもこれだけスコープのサイズが大きくなり誤差が広がる。郊外などではこれが一般的なサイズだろう

実際にGoogle Mapの画面を見てみると、若干レイアウトが変更されている。左下のスコープ型のボタンが新機能の位置検索で、ここをクリックすると周辺のアンテナ情報から現在位置を割り出す。これにはSkyhookの持つ無線LANホットスポットの位置情報データベースとGoogleの携帯基地局アンテナデータベースが用いられ、3点方式でおおよその位置がスコープで示される。無線LANアクセスポイントの多数ある街中ではセルの密度が低いため、より正確に位置を割り出せるが、街の外れに移動するほど誤差が大きくなり、最終的には携帯基地局で測定できる半径1キロメートル程度まで誤差の範囲が広がる。サンフランシスコ市内を徘徊してチェックしてみたところ、スコープの大きさは3~4段階ほどあることがわかった。無線LANホットスポットを位置情報に使っていても、建物の少ないエリアはそのアンテナ密度の関係で誤差が大きくなるようだ。

もうひとつの新機能がピンの打ち込みだ。画面右下の目の形をしたアイコンをクリックすると、地図がめくれてメニューが出現する。ここの「Drop Pin」を選択すると、画面の地図中央付近にピンが出現する。ピンはドラッグ操作で移動でき、好きな場所に配置できる。従来までのGoogle Mapでは住所以外の情報でユーザーが地図の特定の場所を明示することはできなかったが、このピンを使うことで直接指定できる。これにより、より柔軟にルート検索を行うことが可能になった。

右下の目の形をしたボタンをクリックすると地図がめくれてメニューが出現する。前バージョンまでの交通情報表示の有無はここで選択するようになった。ここで「Drop Pin」を選択すると、地図上にピンが打ち込まれる。ドラッグ操作で動かして、自由に目的地や起点を設定できる

現在位置を特定した状態でキーワード検索を行うと、近所の店舗一覧が表示される。友人らと集まったときにレストランを探すといった用途で便利だろう

また、先ほどの位置検索で現在位置を特定してからルート検索を行おうとすると、出発地点の部分に「Current Location」と表示され、現在位置から目的地までのルート検索が行えるようになる。そのほか、スコープが表示されている状態で検索窓にキーワードを入力すると、その周辺にあるローカル検索が可能になる。「現在位置の近くにあるタイ料理屋を探す」といった用途には最適だ。

目的地がわかればルート検索も可能。起点には「Current Location」と表示される

このように便利な新機能の数々だが、1点だけ大きな不満がある。現在位置のより正確な情報を得るためには、無線LAN機能を有効にしなければならない。だが、巷に存在する多くのホットスポットは何らかの認証を要求されるケースが多く、検索結果と地図情報の取得には無線LANが利用されるため、事前にこれら認証作業が必要になる。この作業は場所を移動する度に発生するため、登録したSSIDが多ければ多いほど億劫になる。これは携帯ネットワークのEDGEよりも無線LANの接続を優先するiPhoneの仕様が原因だが、将来のバージョンでデータ通信の優先順位を変更するオプションがほしいところだ。位置検索のために無線LAN接続を用い、通常のデータ通信には認証の必要がないEDGEを使うのである。現状での解決策は、認証の必要な無線LANへと自動的に接続しないように、設定をすべて削除するくらいしかなさそうだ。