KDDI代表取締役社長 小野寺正氏

既報のように、KDDIは2007年度連結中間決算(2007年4月-9月)を発表した。昨年10月から開始されたMNP(携帯電話番号ポータビリティ)によるユーザー争奪合戦もあいまって、同社、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルの競合は熾烈を極めているが、KDDIはMNPによるユーザー獲得では強さを示しており、好調を持続している。携帯電話事業では、今期中にシェア30%、契約数3,000万の達成を掲げているが、今年度の折り返し点を過ぎ、順調に歩を進めている。

同社の今年度通期の業績予想は、売上高が対前年同期比4.9%増の3兆5,000億円、営業利益が同13.1%増の3,900億円、経常利益は同11.1%増の3,900億円、当期純利益は同17.8%増の2,200億円だが、これらに対する進捗率は、売上高が49.6%、営業利益は64%、経常利益は64.7%、当期純利益は66.2%で、特に営業利益の進捗率が高いことが目立つ。同社代表取締役社長の小野寺正氏は「上期は利益面で順調」と話す。

こうした好調さを支えているのは、やはりau携帯電話サービスの威力だ。同社の携帯電話事業にはいまのところツーカーが含まれているが、ツーカーは2008年3月末のサービス終了に向けて円滑にauへの移行が進んでいるため、今中間期では同事業売上高の99.4%はauで占められている。同社全体での営業利益率は今回14.4%で前年同期と比べほぼ横ばいだが、移動通信事業のそれは19.8%、前年同期比で0.9ポイント伸びている。auの解約率はこの第2四半期(2007年7-9月)で1.03%で、前年同期比では0.08ポイント上昇しているが、2006年度通期実績は1.02%、今年度通期では1.04%と見込んでおり、大勢に影響はない。

携帯電話事業の営業利益率は19.8%で、全体の牽引車となっている

ARPU(Average Revenue per Unit per Month: 1契約当たりの月間平均収入)の状況は、今年度第2四半期で前年同期比300円減となる6,400円だが、内訳は、音声が430円減の4,270円に対し、データは130円増の2,130円だ。小野寺社長は「データは順調に伸びている。WINの契約数が増えれば、データも伸びる」としている。

純増数ではこのところ、ソフトバンクが5月から5カ月連続で首位に立っている。これについて小野寺社長は「MNPを分析してみると、マイナスになってはいない。ソフトバンクは2台目需要であれだけ拡大していると言われるが、そうであればauのARPUは減るのが普通だが、第1四半期、第2四半期ともフラットで、影響はあまりない」と話す。同社は、ソフトバンクが純増数を伸長させているのは「当社が見過ごしていた市場を狙っているということか」(小野寺社長)とみている。

純増数では勝っているソフトバンクも依然、MNPでの増(転入と転出の差)では、KDDIを追い抜いていない。「MNPを使うユーザーのなかでは、魅力はauの方が上」(同)と、同社は自信を示している。また小野寺社長は「数は増やしたいが、ARPUが下がっては経営は成り立たない。純増数ナンバーワン(ということだけ)に、いまどれだけ意味があるのか」と述べた。

MNPはKDDIに有利に推移している

事業者間の競争激化により、同社も価格競争に参戦し、9月からは基本料金半額を目玉とする「誰でも割」を開始した。また、端末の料金は高いものの、月々の利用料が割安になるという新料金体系「au買い方セレクト」が11月から始まり、既存の料金体系に一石を投じることになる。小野寺社長は「『誰でも割』で基本料が半額になると、音声のARPUが下がる。MOU(Monthly minutes of use: 月間利用時間)はここ1年、10分程度下がっている。通話よりメールを使うという層もあるだろう。音声を値下げすると、MOUは上がるのではとの指摘がある。だが、固定通信でも同様で、音声はある程度まで料金が下がると、トラフィックは変わらない」として「データARPUをさらに伸ばしていきたい。有料コンテンツの利用料回収代行など、通信以外の部分も増やすべき」と述べた。

au買い方セレクトでは、端末購入費は高くなるが基本料・通話料が安くなる「シンプルコース」と、ほぼ現行通りの「フルサポートコース」がある。小野寺社長は「携帯電話は最新の高機能なものより、シンプルなものを使いたいという向きには、シンプルコースが最もお得だ。今回の秋冬の新製品でも、シンプルコースに適した機種を2つ出している。このプランは、携帯電話業界が初期の頃、使っていたものだ。当初は各社とも、端末はレンタルだったが、もともと携帯電話の料金は、基本料と通話料だけだった。シンプルコースは(今後の制度改革に向けた)決定版だと考えている」と語った。

これらの料金体系改変により、端末の買換え頻度が減少するのではないかとの見方については「これまでは、高機能端末であっても、シンプルな機種あっても、一定の期間が経過すると、市場価格にはあまり差がなかった。これからは、端末によって、これまで以上に価格差がついてくる。その時点で買換え率がどうなるか、見極めなければならない。一般論としては、端末をともなう魅力的なサービスをどれだけ出せるか。端末を変えても利用したいと感じるような魅力的サービスでなければ、買換え率は上がらない」とした。